燃料価格の高騰で電気料金が値上がりする中、間もなく本格的な冬が訪れようとしています。
資源エネルギー庁によると、冬場の家庭における家電の消費電力のうち約33%と最も高い割合を占めるのがエアコンなど空調機器です。
どうしたら、エアコンの電気料金をできるだけ抑えながら、快適に冬を乗り越えられるでしょうか。
空調大手のダイキン工業の広報・高木旭(たかぎ・あさひ)さんに取材をしました。
そもそも冬の暖房器具、どれが一番「省エネ」?
エアコン、電気ストーブ、電気カーペット、こたつ──。電気で動く様々な暖房器具がありますが、どれが最も「省エネ」なのでしょうか。
高木さんによると、答えはエアコン。空気中の熱を集めて圧縮し、大きな熱エネルギーとして利用する「ヒートポンプ」という仕組みによって、同じく電気を使う電気ストーブなどと比べて、少ない電気で部屋全体を暖めることができます。
一方で、エアコンは、スイッチを入れてから部屋全体が暖まるまでに時間がかかるのが弱みです。
体を直接温めたいときやエアコンで部屋が暖まるまでの短い時間には電気ストーブなどを使い、長時間の使用にはエアコンを用いるなど、それぞれの特徴に応じて使い分けるのが賢い利用法のようです。
続いては、そんなエアコンを効率的に使うためのポイントを紹介します。
エアコンを効率的に使うための「5つのポイント」は?
1. 部屋全体に暖かい空気が行き渡るようにしよう
空気には、冷たい空気は下へ下がり、暖かい空気は上へ上がるという特性があります。そのため、床に近い場所ほど、実際のエアコンの設定温度より冷えがちです。
寒さを感じたら、設定温度を上げる前に、部屋の上の方に溜まった暖かい空気を部屋全体に循環させる工夫をしましょう。
具体的に、ダイキン工業では以下の2つ方法を推奨しています。
①エアコンの風向きを下向きに設定する
「床が暖まりやすくなるほか、床から暖かい空気が上へと徐々に上がっていくため、部屋全体が素早く効率よく暖められます」(高木さん)
②サーキュレーターや空気清浄機をエアコンの対角線上に置いて使用する
「サーキュレーターや空気清浄機が、室内の空気の対流を生じさせ、
天井付近にたまる暖かい空気と足元の冷たい空気をかきまぜてくれます」(高木さん)
なお、環境省は、冬場のエアコン使用時の室温を20度にすることを呼びかけています。設定温度を1度下げた場合、消費電力量は約10%削減されることが見込まれています。
2. こまめに「入り切り」するより「つけっぱなし」にしよう
エアコンは、外気と設定温度の差が大きい運転直後に最も多くの電気を使います。そのため、こまめにスイッチを入り切りをするより、つけっぱなしの方が省エネになる傾向があります。
ダイキン工業は、エアコンを24時間「つけっぱなし」と「30分間隔でスイッチを入り切り」で運転し、それぞれの消費電力を比較する実験を実施。その結果、全ての時間帯で「つけっぱなし」にした方が消費電力が少なく、電気代が安くなったそうです。
3. 加湿しよう
体感温度には、湿度も大きく影響します。人にも住居にも適切な湿度は40〜60%だと言われていますが、ただでさえ乾燥する冬場、エアコン使用時の屋内は屋外よりもさらに乾燥しています。エアコンの設定温度を上げる前に、まずは加湿を心がけましょう。
「加湿器がなければ、洗濯物を家の中に干すのもおすすめです。洗濯物に向けてエアコンの風を送ることで、洗濯物から蒸発する水分を部屋全体に行き渡らせることができます」(高木さん)
4. フィルターの掃除は2週間に1回が理想的
フィルターにほこりが積もって目詰まりしてしまうと、室内機が吸い込める空気の量が減り、暖める力も小さくなるため、その分、無駄な電気を消費してしまいます。
ダイキン工業の調査では、1年間フィルターを全く掃除をしなかった場合、消費電力が約25%増えることが分かっています。
エアコンを使用するシーズンは、2週間に1回の掃除を心がけましょう。
「掃除機でホコリを吸ったり、水洗いをしたりしましょう。汚れがひどい場合は、中性洗剤を溶いたぬるま湯でこすり洗うのも効果的です」(高木さん)
5. 室外機の周りに物を置かない
室外機は冬場のエアコン運転時、屋外の空気を吸い込み、その空気に含まれる熱を集めて室内に送り込むことで部屋を暖めています。
このとき、室外機周辺に物が置かれているせいで空気の流れが滞ってしまうと、室外機が熱を効率的に集められなくなり、消費電力が増えてしまいます。
室外機の周りはできるだけ風通しを良くし、室外機背面にホコリや落ち葉がたまらないよう、定期的に掃除をすることも大切、と高木さんは話しています。