2月14日はバレンタインデー。甘いチョコレートですが、その向こう側には、原料を生産する農業労働者の貧困や児童労働、環境破壊といった「甘くない現実」も横たわっています。
こうした問題に対して、消費者ができることの一つが、生産に関わる人々の人権や環境に配慮してつくられたチョコレートを選ぶことです。
最近では、身近なコンビニにもこうした商品が増えてきていること、ご存じですか?
“チョコレートの闇”とは
世界有数のチョコレート消費国・日本。輸入するカカオの8割は西アフリカのガーナでつくられています。そこでは、77万人の子どもがカカオ農園で児童労働に従事していると言われています。
背景にあるのは貧困です。カカオ生産は手間がかかる作業が多く生産性が低いわりに、農家が得られる収入はごくわずか。そのため、大人の労働者を雇えない農家では、子どもたちが労働に駆り出されているのです。
カカオの収穫は、大きくて鋭い刃物を使ったり、重たいものを持ったりと、危険と隣り合わせです。また、仕事に時間を取られると、学校に通って十分な教育を受けることができなくなります。そうなると大人になっても低賃金の仕事しか得られず、貧困がその次世代に連鎖するという現状もあります。
さらに、カカオ生産をめぐっては深刻な環境破壊も起こっています。環境団体マイティ・アースによると、2019年1月からの3年間で、カカオの2大生産国であるコートジボワールとガーナで、カカオ農場の拡大のため、合計5万8918ヘクタールの森林が失われました。これは東京23区の面積に匹敵する大きさです。
1個35円のブラックサンダーも「児童労働フリー」
一方、こうした課題を解決しようと、人権や環境に配慮したカカオの調達に乗り出すメーカーも増えてきています。消費者はこうした商品を購入することで、持続可能なチョコレートの普及を後押しすることができます。
なかには、近所のコンビニで買うことのできる商品も。その一部を紹介します。
■明治・ザ・チョコレート(明治)
カカオの持続可能な生産を目指して、現地のカカオ農家を支援する「メイジ・カカオ・サポート」という取り組みをしています。
たとえば、営農支援。多くの中小規模のカカオ農家が、適切な知識や技術なく生産を続けているために、十分な収穫量を得られず、貧困に陥っている現状があります。こうした状況を改善するため、栽培方法や病害虫の管理方法に関する勉強会を開催したり、カカオ豆の発酵法などの技術指導を行ったりしているそうです。
このメイジ・カカオ・サポートを通して生産されたカカオを使用したのが、「明治・ザ・チョコレート」。現在、ブラジルやペルーなど産地別の4種類が販売されています。
■ブラックサンダー(有楽製菓)
1個35円ほどの「ブラックサンダー」。2022年9月、使用するカカオの全てを、児童労働ゼロなどに取り組んでいる「ココアホライズン認証カカオ」に切り替えました。
「ココアホライズン」は、スイスの大手チョコレートメーカー、バリー・カレボーが設立した非営利団体で、生産者の労働環境や貧困問題の改善、自然保護などに取り組んでいます。
さらに、ブラックサンダーの売り上げの一部は、日本のNGO「ACE」がガーナで取り組む児童労働から子どもを守る「スマイル・ガーナ プロジェクト」にも寄付されています。
■小枝(森永製菓)
1971年から発売されているロングセラー商品「小枝」も、2020年9月からココアホライズン認証カカオを100%使用しています。
また、森永製菓はチョコレート商品の売り上げの一部を、前述の「スマイルガーナ プロジェクト」などを通して、カカオ生産地の子どもたちの教育やカカオ農家の自立支援などに寄付する「1チョコ for 1スマイル」キャンペーンも実施しています。
対象商品は、小枝のほか、「ダース」や「森永ミルクチョコレート」、「ミルクココア」など28商品。
コンビニのプライベートブランドも
製菓メーカーだけではなく、コンビニ各社のプライベートブランドでも、持続可能なチョコレート商品が充実してきています。
セブン-イレブンは、国際フェアトレード認証マークのついた「カカオ73% 40g」を販売しています。フェアトレードとは、発展途上国の産品を公正な価格で取引することを意味します。
ローソンとファミリーマートも、ココアホライズン認証カカオを使用した商品を販売しています。
■ローソン
「パリッとなめらか カカオ70%チョコレート 25g」
「ピーナッツぎっしりカカオ70%チョコレート42g」
「ミルクプロテイン入りカカオ70%アーモンドチョコレート38g」(2023年2月14日発売)
■ファミリーマート
「コク深い味わいマカダミアナッツチョコレート」
「濃厚な味わいピスタチオチョコレート」
「香ばしい味わいくるみチョコレート」
持続可能なチョコレートは、市場全体で見れば、まだほんの一部といえるでしょう。
しかし、メーカーや商社などは、自社が調達するカカオなどの原材料が「いつ、どこで、だれによって作られたのか」をより厳密に把握することなどを通して、児童労働や環境破壊をなくす取り組みを加速しています。
私たちが手にするチョコレートが全て、持続可能なものになる日は、決して遠くはないかもしれません。