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「給食の牛乳」めぐり小学生が区長に直談判。背中押した担任の言葉とは

「このままでは未来が危ない」。小学生が学校給食の紙パック牛乳のストローをなくすことを求めた署名に3万人の賛同が集まりました。

「練馬区のすべての小学校でプラスチックストローをなくしたい」

練馬区の小学校3年生、堀越えりかさん(9)が2月9日、学校給食の紙パック牛乳のストロー廃止を求めて、オンラインで集めた約3万人分の署名を練馬区長と区教育長に提出した。

東京都では、一部の地域で学校給食にストローを使わない紙パック牛乳が導入されているものの、練馬区など多くの区市町村では今もストロー付きの紙パックが使用されている。

前川燿男練馬区長(左)、堀越えりかさん(右手前)、同級生のみなもさん(真ん中)、母の堀越カローラさん

堀越さんがプラスチック問題に関心を寄せるようになったきっかけは、2年生のときに読んだ絵本「プラスチックのうみ」だ。

海に流れ出たビニール袋を飲み込んで、海の生き物たちが死んでいること。2050年には海の漂うプラスチックゴミの重さが、海に住む魚の重さより重くなってしまうこと──こうした事実を知り、「動物の命を守りたい」「このままでは未来が危ない」と思うようになった。

プラスチックを減らすために自分に何ができるか。身の回りを見渡したとき、気になったのが給食の紙パック牛乳のストローだった。

「毎日の給食のストローを無くせば、一人でコツコツ頑張るより、ずっと沢山のプラスチックを一気に減らせる」と感じたという。

担任の先生に相談し、学級会の議題に上げることにした。

すると、話し合いで出てきたのが、紙パック牛乳を自宅から持参したカップに移し替えて飲むというアイデア。

2022年9月、「マイコップ週間」と銘打ち、実際に期間限定で取り組みを実施してみることになった。3年生の有志が参加し、3週間で約1500本ものストローを削減に成功した。

ただ、学校の水道代の負担などの課題もあり、取り組みを継続的に続けるのは難しい。

そこで、堀越さんは2022年9月下旬、母・カローラさんのサポートを受けながら、署名サイト「Change.org」で「給食用牛乳のプラスチックストローをなくしたい」というキャンペーンを立ち上げた。

キャンペーンには、2月8日までに3万1000人を超える賛同者からの署名が集まった。「知っただけで済まさず、行動を起こしたことにエールを送ります」「大人の私も勇気をもらいました」などの多くの応援メッセージも寄せられた。

堀越さんは「みんなが応援してくれて嬉しかった」と話す。

教育長「プラストロー撤廃、そう遠くない時期に」

堀越さんは、カローラさん、同級生のみなもさんと一緒に練馬区役所を訪問。前川燿男区長に署名を手渡した。

前川区長は「練馬区も、プラスチックをなくそうと、まずは庁舎内で取り組みを始めた。皆さんが学校で取り組んでくれたように、一緒に力を合わせてやっていけば、大きく前に進む。大変心強く思っている」と話した。

学校給食の牛乳は、独自に納入業者を決めている区市町村を除き、都道府県がメーカーを決める。

東京都は、区市町村を15区域に分け、区域ごとに納入業者を選んでいる。納入業者は全部で8社。うち5区域に納入する3社は、ストローなしの紙パックに切り替えた。だが、練馬区を含む、残りの10区域に納入する5社は依然としてストロー付きを使用している。

堀和夫教育長は「私たちも、東京都を通じて、またメーカーに直接、何とかしてくださいとお願いはしている。そんなに遠くない時期に、プラスチックストローはなくなる方向になると思う」と述べた。

「誰にだって社会を変える力がある」

今回の一連のアクションの中で、堀越さんはある言葉に背中を押されてきたという。

それは担任の先生がよくクラスで話してくれる「誰にだって社会を変える力がある」という言葉だ。

堀越さんは、自身のアクションを通して、同世代の子どもたちに「子どもでも何かを変えられる。子どもが大人たちに対して教えてあげられることもある」と伝えたいという。

今後は、環境だけではなく貧困の問題にも取り組んでいきたいと話す。

「環境のためにも、未来の子どもたちに嫌な思いをさせないためにも、何を変えられるかをもっと考えて、どんどん行動を起こしていきたい」