お風呂で亡くなる人は交通事故の5倍以上…最も危険な“冬本番”、大切な人を守るために知ってほしい10のこと

    冬場は、お風呂での死亡事故が最も起きやすい季節。安全なお風呂の入り方を紹介します。

    寒い冬に恋しくなる温かいお風呂ですが、注意しなければならないことも。

    冬場の入浴では、急激な温度差で血圧が乱高下して心臓や血管の疾患を引き起こす「ヒートショック」などにより命を落とす人がいます。

    厚労省によると、その数は約19000人(2014年)。年間の交通事故死者数の数倍です。

    自分や身近な高齢者を守るため、冬のお風呂を安全に楽しむにはどうすればいいのか。専門家に聞きました。

    入浴中に亡くなる人は年間「約2万人」

    入浴中に亡くなる人の数が、交通事故で亡くなる人の数を大きく上回っていること、知っていますか。

    交通事故で亡くなった人は2020年、3718人。一方、厚生労働省による2014年の研究では、入浴中に急死した人は約19000 人と推計されています。

    では一体、どんな人が、いつ、亡くなっているのか。

    厚生労働省の「人口動態調査(2020年)」によると、「浴槽内での溺死及び溺水」で亡くなる人の数は年齢とともに高くなっており、その約36%を65歳から79歳、約58%を80歳以上の高齢者が占めています。

    また、東京都23区における入浴中の死亡者数(2019年)によると、死亡者の約77%が11月から4月にかけての冬季に集中していることが分かります。

    つまり、冬の時期に高齢者が亡くなっているケースが非常に多いのです。

    本当に怖い「ヒートショック」って?

    一体なぜなのか。

    大きな要因の一つが、「ヒートショック」と言われています。

    温かい部屋から冷たい脱衣所に移動して衣服を脱ぐと、寒さによって血管が収縮し、血圧が急上昇します。その後、湯船につかると血圧はさらに上がっていきます。しかし、しばらくすると体が温まることで血管が広がり、今度は血圧が急激に下がります。

    こうした急激な血圧の変化が心筋梗塞や脳卒中、失神などを引き起こし、入浴中に意識を失って溺死するケースが多いとされています。

    特に高齢になると、高血圧や糖尿病、肥満などの持病を抱えている場合が多く、血圧の変動も起こりやすくなるため、ヒートショックをまねくリスクが高くなってしまうのです。

    冬場の高齢者の入浴、気をつけることは?

    それでは、冬場の高齢者の入浴では、具体的にどんなことに気をつければいいのでしょうか。

    「高齢者安全入浴10カ条」を打ち出している一般社団法人「高齢者入浴アドバイザー協会」の代表理事・鈴木知明さんに話を聞きました。


    <高齢者安全入浴10カ条>

    1. 冬は夜早めに入浴する

    「夜遅くなればなるほど気温が下がるため、できるだけ早めに入浴することで、血圧の乱高下を緩やかにすることができます」(以下、括弧内は全て鈴木さんのコメント)

    2. 食事直後、深酒直後、深夜、早朝は入浴を避ける

    「食後すぐの入浴は消化不良を起こす恐れがあります。また、飲酒をすると、直後は血圧が上がりますが、次第に下がっていきます。その状態で入浴をしてしまうと、入浴との相乗効果で血圧がさらに下がっていき、眠くなったり、意識を失ったりすることがあり、大変危険です。

    深夜・早朝の入浴では、万が一入浴中に倒れてしまった際に、発見が遅れる可能性があるため避けましょう」

    3. 冬は脱衣所、浴室の温度を上げる

    4. 一番風呂はなるべく避ける 

    「温かい部屋から冷たい脱衣所、浴室に移動した際には、血圧が上がりやすくなります。特に一番風呂は冷えている可能性が高いので、なるべく避けましょう。浴室の温度を上げるには、事前に熱いシャワーで温めたり、湯船の蓋を開けて熱気を充満させておいたりするのがおすすめです」

    5. 入浴前後に水分補給する(入浴前は軽く、入浴後はコップ1杯)

    「入浴中に汗をかいて体内の水分が奪われると、血管が詰まりやすくなります。水分補給を心がけましょう」

    6. 入浴前後は家族に声をかける

    「声をかけておくことで、万が一の時に家族に気づいてもらいやすくなります」

    7. 浴室内は滑らない工夫をする

    「滑りにくいゴム製のマットを敷いたり、手すりを設置したりしましょう」

    8. 温度は39度±1度を基本とする

    9. かけ湯(かかり湯)をしてからゆっくり入る

    10. 最初の2~3分間だけはぬる湯で半身浴→その後全身浴へ

    「(8〜10について)最初から熱いお湯に肩まで浸かってしまうことで血圧が急激に上下してしまうため、大変危険です。39度前後のぬるま湯で、かけ湯、半身浴と徐々に身体を慣らしていきましょう。熱いお湯が好きな方は、2〜3分の半身浴をしたのち、お湯炊き機能などで好みの熱さに調節して頂ければと思います」


    寒さはこれからが本番。

    鈴木さんは「『自分は大丈夫』と思わず、注意をして頂きたい。家族や周囲による高齢者への声かけも重要です」と訴えています。