「デブ」「ブス」「キモい」…。頭の中でつい言ってしまう自分への悪口。そんな「自分いじめ」をやめようと呼びかける、啓発動画が話題を呼んでいる。
動画を投稿したStand Up To Yourselfは、「自分いじめ」の認知を広め、対策に取り組む支援団体だ。アメリカ、イギリス、オーストラリアで活動している。
動画内で、Stand Up To Yourselfは「誰かに言ったことのある悪口を、紙に書いてください」と、参加者にお願いした。
2人1組になった参加者は、お互いに向き合って座り、紙につづられた悪口を相手に読み上げる。
Aさん:「お前は負け犬だ。今までも、これからもずっとだ」
Bさん:「誰もあなたのことは好きじゃない。(車いすだから)親切にしてくれているだけ」
Cさん:「お前は目立ちたがり。注目をずっと浴びていたいと思ってる」
このような言葉が、相手に投げかけられた。
その後も、参加者が挙げた悪口が続く。
Dさん:「娘を失望させた。あなたは悪い母親だ」
Eさん:「何で太ってるの?」
Fさん:「あなたが好きな人、全員があなたを嫌ってる」
Gさん:「あなたを見るたびに気持ち悪くなる」
Hさん:「肋骨が浮き出てるのがキモい」
悪口を言った後、言葉に詰まり涙を浮かべる人、聞き苦しそうにする相手の様子が映っている。
しかし、動画にはひねりが…。
実は、参加者たちが紙に書き出した言葉は、他人への悪口ではない。過去に参加者が、自分に対して言ってしまった悪口だ。
Stand Up To Yourselfは、参加者にこんな質問をした。
「今言った悪口を、他人に向けて言いますか?」
参加者の答えは、「いいえ」だった。
「では、なぜ自分にはそんなことを言っていいのでしょう?」
と問うと、Cさんは「いい質問だね」と答えた。
動画は、「自分いじめもいじめの一種。10月はいじめ防止月間。自分に負けないで」というメッセージで締めくくられた。
※アメリカでは、毎年10月は「いじめ防止月間」に制定されている。
動画の発案者であるモニカ・ルインスキーさんは現在、作家やプロデューサー、社会運動家として活躍している。
そんなモニカさんは、ニュース番組TODAYで、動画制作の裏側を明かした。
「この動画のコンセプトは、私の経験に基づいています」
「約10年前に参加したセミナーで、『自分への悪口を書き出して』という活動がありました。私にとっては簡単なことで、何枚も何枚も書きました」
「しかしその後、他の人に書いたことを音読してと言われたのです。音読していくと、いかに自分が自分に対して意地悪なのかを実感しました」
「絶対、そんな悪口は他人には言わないのに」
撮影に参加したのは、一般人とその人が大切にしている相手だった。
インタビューの前日に自分への悪口を書かせ、当日、相手の前で音読してと伝えたのだ。
誰もが持っているでだろう「頭の中の声」をコントロールするには、「自分(が頭の中で悪口を言っていること)に気づき、軌道修正することが大切」だとモニカさんは話す。
「どのくらいの頻度で自分に悪口を言っているかに気づくことから始まります」
「ポジティブな方向に軌道修正してもいいし、それができなかったら、まずは中立的になるところから始めてみてください」
サムネイル画像:Getty Images