今年の漢字は「北」だけど……海外が選んだ今年の言葉は?

    今年の海外情勢を象徴する言葉とは。

    「今年の漢字」が12月12日に発表された。2017年の世相を表すのは、「北」となった。

    日本漢字能力検定協会は「北」が選ばれた理由について、北朝鮮による脅威や九州北部豪雨の災害による被害、北海道日本ハムファイターズ大谷翔平選手のアメリカ大リーグへの移籍などを挙げている。

    海外では、どのような言葉が今年の象徴として選ばれたのか。一部紹介する。

    【feminism】フェミニズム

    メリアム・ウェブスター辞典によると、「フェミニズム」という言葉は、前年と比べて70%多く検索された。

    2017年前半には、女性差別的な発言をしてきたドナルド・トランプ大統領に対して平等や正義を求める人々が立ち上がり「ウィメンズ・マーチ(女性の行進)」が呼びかけられた。

    トランプ大統領が就任式を開いた翌日、ワシントンDCをはじめとした全米各地や海外で500万を超える人々がウィメンズ・マーチに参加した。

    ウィメンズ・マーチはフェミニストだったのか。世界中で集まった、人種や性的指向が多様な参加者たちは、どのようなフェミニズムを訴えていたのか。

    このような報道で「フェミニズム」という言葉を見かけられるようになったのをきっかけに、検索する人々が増えた。

    また、ケリーアン・コンウェイ大統領上級顧問が「自分をフェミニストだと思っていない」と発言した時にも検索数が増えた。

    2月の保守政治行動会議に登壇したコンウェイ大統領上級顧問は、保守的なフェミニストであると述べた。

    「伝統的な意味でのフェミニズムは、反男性で、確実に中絶に賛成しているように見えるんです。私はどちらでもありません」

    アメコミ映画『ワンダーウーマン』も、主人公のワンダーウーマンがフェミニストなのかどうか賛否両論に分かれ、検索を促すきっかけとなった。

    2017年後半には、セクハラや性的暴行に立ち向かう動き「#MeToo」で検索の流入が増えたという。

    ハリウッドや政界で権力を持つ男性たちなどによるセクハラ問題の報道が相次いだ2017年。沈黙を破って告発した女性たちと男性たちは、TIME誌の「今年の人」にも選ばれている。

    メリアム・ウェブスターは、「フェミニズム」を「性別間の政治的、経済的、社会的な平等の理論」「女性の権利や利益向上のための組織的運動」と定義している。

    ちなみに、日本の辞書「広辞苑」の最新版(第六版)では、「フェミニズム」はこう定義されている

    「女性の社会的・政治的・法律的・性的な自己決定権を主張し、男性支配的な文明と社会を批判し組み替えようとする思想・運動。女性解放思想。女権拡張論」

    ハフポストによると、岩波書店は2018年1月に発売される第七版では「フェミニズム」などの説明文を改訂することを決定している。

    【complicit】共謀すること

    オンライン辞書Dictionary.comによると、「complicit」は「違法もしくは疑わしい行動に加担すること」「悪事に協力関係を持ったり、関与したりすること」を意味する。

    ネットで3回に渡って注目されたこの単語は、今年に入ってから検索数が300%増加した。

    人々が検索するようになった初のきっかけはアメリカのコメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ(Saturday Night Live)」だった。

    トランプ大統領の長女イバンカ大統領補佐官を女優スカーレット・ヨハンソン氏が演じていたことで話題になった。

    トランプ大統領の暴走を止めることなく黙認するイバンカ氏。そんな彼女が香水ブランドを展開、その名も「Complicit(共謀者)」——。といった風刺ネタだ。

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    4月5日、CBSとのインタビューでイバンカ氏がトランプ大統領の「共謀者」だと言われることについて意見を求められたところ、「共謀しているということが、どういう意味なのかわかりません」と回答。

    さらに、こう続けた。

    「もし共謀することが、世の中のためになる力やポジティブな影響を与えるのを望むことを意味するのであれば、私は共謀者です」

    イバンカ氏の発言で、再び検索数が急増した。

    また、10月24日には共和党のジェフ・フレーク議員が引退する際、「私は共謀者にはならない」と宣言し、トランプ大統領を非難した。

    Dictionary.comは、最後にこのように締めくくっている。

    「この言葉は、行動に移さない場合でも、一種の行動になることを気づかせてくれます。悪事を黙認していたことが、このような状況を招いてしまっていたのです」

    「普遍なものとして続けてはいけません。このままだと、私たち全員が共謀者になってしまうのです」

    【fake news】フェイクニュース

    フェイクニュースといえばトランプ大統領、と関連づけられるほど、2017年はこの言葉にメディアが踊らされた年だった。

    コリンズ英語辞典は、フェイクニュースを「報道を装って拡散される、しばしば扇動的で事実に反した情報」としている。

    元来はコメディ界で風刺ニュースを面白おかしく伝える時に使われていた言葉だった。

    2016年の大統領選では、候補者たちにとって有利——もしくは不利——な情報を拡散するフェイクニュースサイトが多出した。

    そして今年1月、トランプ大統領が大統領選後初の記者会見で、BuzzFeedやCNNを「フェイクニュースだ」と激しく非難した。

    コリンズ英語辞典によると、「フェイクニュース」という言葉が使われた回数は、今年に入って356%も上昇している。

    【kwaussie】オーストラリアとニュージーランドの二重国籍を保持している人。クウォージー

    オーストラリア出身者を意味するオージー(Aussie)に、ニュージーランド出身者を意味するキウイ(Kiwi)を合わせて作られた言葉。オーストラリアとニュージーランドの二重国籍者を指している。

    今年、日本では元民進党代表の蓮舫氏の二重国籍問題が注目を集めたが、オーストラリア政界でも、二重国籍を認めた政治家たちが次々と辞職した。

    オーストラリア憲法によると、二重国籍保持者が選挙で公職に就くことを禁じている。

    10月27日、高等裁判所はバーナビー・ジョイス副首相を含む議員5人の議員資格を無効だと判決を下した。その後も二重国籍問題を原因に議員が辞職するなど騒動は続いている

    オーストラリア国立辞書センターのアマンダ・ローグセン所長は、kwaussieが今年の言葉として選ばれたことについて、「ジョイス副首相を表すのに使われていた」のを理由としている。また、SNSでも話題性があったと説明する。

    (サムネイル写真:Mark Wilson/Getty Images)