アイスホッケー女子の南北合同チーム オリンピック会場外の人々の思い

    平昌オリンピックでの初勝利がかかっていた、日本と南北合同チーム。

    平昌オリンピックで注目され続けてきた、女子アイスホッケーの韓国と北朝鮮の合同チーム。

    強豪相手との予選リーグで点を一度も入れることができず、迎えた2月14日の日本との試合。両チームとも初勝利がかかっていた試合でも1-4で破れ、5〜8位決定戦に回ることが決まった。

    合同チームの試合を、韓国の人々はどう見ていたのか。

    日本との対戦が行われていたアイスホッケー会場から約12分離れた場所にある、江陵駅。仁川空港やソウル駅からオリンピック会場まで繋がっている高速鉄道(KTX)の終着駅だ。

    人の出入りは激しいが、駅構内に設置されているテレビで試合の映像が流れると、人々は足を止め観戦していた。

    「勝ち負けはあまり関係ない」

    立ち止まる人々に合同チームについての感想を聞くと、韓国チームと北朝鮮チームが一緒に準備する期間があまりにも短かった、と多くが口を揃えて批判した。

    「"合同"と呼べるまでもっと時間が必要だった」とコン・ヘスクさん(53)。

    一方、短期間でも韓国に良い影響を与えていると考える人もいる。

    「合同した期間は短かったけど、チームとしての結束力はその間、よくなってきた」

    ハン・ギュリさん(26)はそう話す。

    「合同チームは北朝鮮との平和を築く方向に導いてくれているから、ポジティブに見ている」

    「韓国と北朝鮮のチームが合同したこと自体が大きな成果と機会。勝ち負けはあまり関係ないと思う」

    2人の息子と見ていた45歳の男性ソ・ビョンヌンさんは、BuzzFeed Newsに「南北関係の緊張が合同アイスホッケーで少し緩んだ」と感想を述べる。

    「過去と比べてよりポジティブに北朝鮮のことについて考える、という選択肢を与えてくれた」

    ノ・チャンビンさん(65)も、合同チームを見てきて、統一に対する思いが強くなったと笑顔を見せた。

    「もし仮にまた合同チームと似たようなことが起きるとしたら、練習を増やすとより良い結果を出せると思う」

    合同チームは「スポーツイベントの一部」

    平昌オリンピックが開催されてから、北朝鮮に対する融和ムードが謳われていたが、政治的な目的でアイスホッケーのチームが利用されていると考える若者は少なくはない。

    友人と試合の後半から見ていた女性リ・ダインさん(27)は、合同チームを「スポーツイベントの一部」だと見ている。

    「合同チームは、『韓国と北朝鮮は仲良くなれる』という見せびらかしだったけど、実際に南北関係が改善するとは思わない」

    「いつかは統一しないといけないけど、いま現在は、北朝鮮を脅威としか思えない」

    リ・ウンジさん(29)は、合同チームが1点を入れてからずっとテレビに食いついていたが、合同チーム自体には反対の立場だ。

    「北朝鮮は常に韓国にとって脅威だったから、自分にとって、合同チームは何も意味しない」

    そう言いつつも、若い世代の子どもたちには期待しているという。

    「私みたいな30近くの世代は、北朝鮮が韓国の敵と授業で教えられてきた。でも、いま学校で学んでいる子どもたちにとって、この合同チームは良い影響」

    「子どもたちは北朝鮮に対してもっと友好的な視点でいることができると思う」

    韓国メディアはどう報じたか

    14日の試合を、多くの韓国大手メディアは試合結果と合同チームのサラ・マリー監督の試合後のコメントを紹介。

    「五輪で最高のパフォーマンスができた。最後まであきらめずにプレーしたのは誇りに思っている」

    国民日報は、「合同チームの存在そのものが、真の勝者」と賞賛。しかし、チームの「理不尽なプロモーション」が、世論を分裂させたとも批判している。

    「合同チームの結成は、若い世代が重視する、公正性に反するものだった」

    中央日報は高麗大学のリュ・テホ教授の分析を報じている。

    敗戦後、韓国と北朝鮮の選手たちが笑顔で励ましあう姿を好意的に捉えた一方

    「この合同チームという"象徴"が本物になるためには、韓国と北朝鮮の間でさらに会談や対話が必要になってくる」と指摘している。

    この記事はハン・ミンソクさんの協力を得て作成しました。