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有名セレブたちが続々と告発。ハリウッドの大物プロデューサー、性的暴行の疑い

ワインスタイン氏が性的暴行を加えていたことは、"公然の秘密"——世間では"セレブゴシップ"のネタ——として扱われてきていた。

現在、ハリウッド界で長年沈黙を強いられてきた性的暴行問題が、徐々に明らかになってきている。

ハリウッドの有名プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタイン氏が20年以上にわたってセクシャルハラスメントや性的暴行をし、示談に応じていたことに関して、ニューヨーク・タイムズの記事をきっかけに次々と被害証言が出てきている。

映画界で多大なる影響力を持っていたワインスタイン氏。1979年に映画会社「ミラマックス」を弟と共同設立、2005年にはワインスタイン・カンパニーを立ち上げ、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』『パルプ・フィクション』『恋におちたシェイクスピア』『シカゴ』など大ヒット映画を手がけてきた。

300以上の作品がアカデミー賞でノミネートされ、実力もあるワインスタイン氏だが、脅しや脅迫を駆使した交渉スタイルでビジネスを成功させていたことでも知られている。

そして、映画業界での活躍を志す女性たちにワインスタイン氏が性的暴行を加えていたことも、"公然の秘密"——世間では"セレブゴシップ"のネタ——として扱われてきた。

アンジェリーナ・ジョリーやグウィネス・パルトロウを含む映画業界で働いてきた20人以上もの女性が被害証言をし、ワインスタイン氏がセクシャルハラスメントやレイプを強制していたことが発覚している。

しかし、公言するなと命じられていたケースもあることから、実際被害に遭った人数はさらに多いのではないかと予測されている。

20年以上もの沈黙を破り、ハリウッド帝国の大御所の圧力に対抗して発せられた証言とは。

「恐怖で身動きが取れなかった」

ニューヨーク・タイムズの記事では、ワインスタイン氏が女性たちをホテルの部屋に呼び込んでセクシャルハラスメントをしたという証言が紹介されている。

女優グウィネス・パルトロウが被害に遭ったのは22歳の時だった。

『エマ』の主役に抜擢されたパルトロウは、撮影が始まる前にワインスタイン氏に仕事のミーティングを名目にホテルのスイートに呼び出された。

ワインスタイン氏はパルトロウに触れたり、ベッドルームでマッサージを要求したりした。パルトロウは女優からスターになれるチャンスを失うのが怖かったという。

「まだ子どもで。契約を結んでいたし、恐怖で身動きが取れなかった」

断ったパルトロウは、当時の交際相手だったブラッド・ピットに打ち明けた。激怒したピットは、彼女を二度と触らないよう、ワインスタイン氏に注意した。

これを受けて、ワインスタイン氏はパルトロウに怒鳴り、誰にも言わないよう警告した。

のちにワインスタイン氏がプロデューサーを務めた『恋におちたシェイクスピア』でアカデミー主演女優賞を受賞した時も、ワインスタイン氏の接近について知っている人は少なかったという。

アンジェリーナ・ジョリーも、ワインスタイン氏との「悪い経験」についてメールで証言している。

「若い頃、ハーヴェイ・ワインスタインと悪い経験があったこともあり、結果として二度と一緒に仕事をしないことを決めた。彼と仕事をする周りの人たちに警告もしていた」

「彼がとった行動は、すべての国のどの業界にいる女性に対しても許されないことだ」と非難している。

「当時の文化だった」

ニューヨーク・タイムズの告発に対して、多くは「明らかに虚偽」だと否定しているワインスタイン氏。また、5日には声明文でこう説明している。

「大人になった60、70年代は、行動や仕事場のルールが違っていた。当時の文化だった」

「過去に同僚に対して行ったことが多大な痛みを起こしてしまったことは理解している。心よりお詫びいたします」

弁護士のチャールズ・ハーダー氏は、ワインスタイン氏がニューヨーク・タイムズを名誉毀損で訴える準備をしていることを明かした。

ニューヨーク・ポストの取材に対し、ワインスタイン氏は「自分の行動には責任を負う」と話しながらも、ニューヨーク・タイムズが確認を取らなかったことに不服を示している。

「向こうは6ヶ月の調査をかけてから記事を出したのに対し、私たちは回答するのにたったの24時間しか与えられなかった」

また、「ニューヨーク・タイムズは私を打倒することに集中している」と考えを述べ、自分への"報復"だと話している。

新たな証言

ニューヨーク・タイムズの報道を受けて、8日、共同会長を務めていたワインスタイン・カンパニーに解雇されたワインスタイン氏。

疑惑はセクシャルハラスメントで止まっていたが、後日の雑誌ニューヨーカーの続報で、被害の深刻さがさらに浮き彫りになった。

新たに出てきた、ワインスタイン氏によるレイプの証言だ。

イタリアの女優、映画監督のアーシア・アルジェントは、21歳だった1997年、映画『Bモンキー』でワインスタイン氏と仕事をしていたときにレイプされたと証言している。

パーティーという名目でホテルの部屋に呼び込まれたアルジェントは、マッサージとオーラルセックスを強要された。

ワインスタイン氏に「潰される」のを恐れ、証言できずにいたという。「これまで多くの人を潰してきたことを知っている」とも話している。

ワインスタイン氏からの性的行為の強要を拒否したミラ・ソルヴィノとロザンナ・アークエットは、ワインスタイン氏の仕返しによってその後の仕事に影響があったという。

女優の卵だったルシア・エバンスは、2004年にオーラルセックスを強要された。ワインスタイン氏の同僚は、匿名でレイプの証言をしている。

ワインスタイン氏は広報担当者を通じて出した声明で、不合意のセックスの疑惑を否定した。

その後、ワインスタイン・カンパニーは「ハーヴェイ・ワインスタインによる極度な性的行為と性的暴行疑惑に、愕然しショックを受けている」と声明文を出した。

ファッションデザイナーの妻、ジョージナ・チャップマンは、10日にピープル誌で離婚を突きつけたことを明かした

政治界でも影響力を持つ人物

ワインスタイン氏は、政治界でも民主党の最大寄付者として影響力を持っていた。

2016年の大統領選でも、ヒラリー・クリントンとハリウッド界をつなげる大きな役目を果たしていた。

また、プライベートでも家をワインスタイン氏の隣に借りるなど、親しい関係にあったという。

ヒラリー・クリントンは数日間沈黙していたが、のちに「ハーヴェイ・ワインスタインについての発覚にひどくショックを受けた」と声明を発表。

「名乗り出てきた女性たちが述べた彼の行動は、許容できない。このような行動を止めるには、彼女たちの勇気と人々のサポートが重要だ」

CNNによると、クリントンは過去に受け取っていた寄付金の額をチャリティに渡すという。

また、オバマ前大統領の長女マリア・オバマは、ワインスタイン・カンパニーでインターンをした経験をもつ。

オバマ前大統領は声明で「妻のミシェルと私は、ハーヴェイ・ワインスタインに関する報道に嫌悪を抱いている。女性を貶め傷つけるような行為は、富や地位など関係なく非難されて当然で、責任を負うべきだ」と非難している。

ハリウッド界での爆発的な告発・スキャンダルに、ジェニファー・ローレンスや二コール・キッドマン、(後に自身によるセクハラを認め、謝罪しているが)ベン・アフレック、マット・デイモンなどワインスタイン氏と仕事をしてきた人々、また政界からの非難も相次いでいる。

アカデミー賞認定を行う団体・映画芸術科学協会は、ワインスタイン氏の疑惑は「不快」で「忌まわしい」と批判。14日にワインスタイン氏に対して令状を発行するかどうか話し合いが行われるという。

英国映画テレビ芸術アカデミーは、ワインスタイン氏の会員資格の取り消しを発表した。