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リベラル・辻元氏が前原氏の決断に理解を示す理由 現実的であるということ

「現実的なリベラル」と「寛容な保守」。会見で語った真意について、BuzzFeedのインタビューに答えた。

民進党リベラルの代表格として知られる辻元清美氏が10月3日、新党「立憲民主党」への参加を明らかにした。

ただ、袂をわかって希望の党に合流する前原誠司氏の判断にも理解を示す。

その理由や「リベラル」が意味するものについて、BuzzFeed Newsに語った。

単独インタビューは10月1日。その後、新党立ち上げなど状況の変化を受けて追加取材をした。

辻元氏は立憲民主党の設立が決まる前の9月30日の段階で、「希望の党には加わらない」と明言していた。その際、次のように説明した。

「小池氏は『寛容な保守』の立場、私は『現実的なリベラル』の立場で、安倍晋三政権を右と左から挟み撃ちにし、倒せば良いのではないか」

辻元氏の考える「寛容な保守」、「現実的なリベラル」とは何なのか。

キーワードは「対話」

「寛容な保守という言葉を聞いた時に私が思い浮かべたのは、1996年、私が社会党から初当選した時の自社さ政権でした」

「自民党幹事長は自民リベラルの宏池会・加藤紘一さん、ベテラン政治家の野中広務さんや、古賀誠さん、山崎拓さん、いろんな方に学びました」

「この自社さ政権こそ、寛容な保守と現実的なリベラルの融合だったんじゃないかと思います」

異なる理念を持つ政治家同士でも、「対話」を通じて社会をよりよくしていく。それが「寛容な保守」と「現実的なリベラル」なのだという。

「それが安倍政権にはないんです。対話をせず、社会の分断を深めている」と辻元氏は訴える。

そして、それこそが希望の党への合流を打ち出した前原氏の判断に「理解はできる」という理由だという。

「対話をせず、対立を煽るような風潮が社会に広がり、政治がその一端を担っている。この流れを止めるために、苦しい状況の中で前原さんが決断したことは理解はできる。私は理念が異なるから一緒にいくことはできませんが」

前原氏と辻元氏は、民主党政権時代に国土交通大臣と副大臣を務めた仲だ。

「保守寄りの前原さんとリベラル寄りの私は、ちょうどよく混ざり合ったドレッシングだった。右と左に別れても美味しい味は出せる」

「現実的なリベラル」とは

立憲民主党が掲げる政策は、基本的には民進党と同じものだ。その理念を辻元氏は「現実的なリベラル」と表現する。

「リベラルというと、日本のネットの世界では平和ボケとか、お花畑とか嘲笑され、バカにされます。でも、決してそんな空想的な考えで、たんに理想を語っている訳ではありません」

例にあげるのが、国交副大臣時代に取り組んだ海上警備だ。

当時、大型巡視船は1隻。海上保安庁の警備能力の不足が指摘されていた。そこで、新たな大型巡視船『あきつしま』の導入を訴えたのが辻元氏だった。

「北朝鮮の問題があり、中国は海上に進出してくる。いきなり自衛隊を出したら、相手も引っ込みがつかなくて武力衝突になりかねない。だから、海上保安庁の警備力をあげる。それが現実的な対応です」

では、「リベラル」と「現実的なリベラル」は何が違うのだろうか。ここで辻元氏がキーワードにあげるのは「理念を形にすること」だ。

リベラル派に対して、よくある批判は「理念先行」「意見の異なる相手を否定しがち」「多様性を重視するわりに、自分の意見を押し通そうとする」などだ。

辻元氏は、そういった批判があることにも理解を示す。

「例えば原発について、ゼロにしようと言っても、すぐにできる訳ではない。だけど、私たちを支持する方からも『なんですぐにゼロにできないんだ』とすごく責められることもある」

「自民党政治は利害の調整だから、あまりそういう風にならない。全体としては党を支えつつ、各自の利益を最大化していく」

「目的を達成するためには、辛抱も必要。それがリベラルとは違う現実的なリベラルであり、理念を形にしていくことだと思います」

憲法「変えるべきところは変えたらいい」

インタビューの最後に、意外な言葉を聞いた。憲法についてだ。

リベラルや保守という政治的な理念は、もともと欧米で生まれ、発展してきた。

個人を尊重するリベラリズムは、個人としての自分だけでなく、個人としての他者も尊重する理念となり、少数者の権利や多様性の擁護に繋がっていった。

保守という理念も、リベラル的な価値観を完全に否定するものではない。歴史や伝統を大切にしつつ、少しずつ社会が変化していくことを受け入れていった。

だからこそ、奴隷制は廃止され、女性の社会進出は進み、同性婚を合法化する国が増えるなど、世界中で変化は起き続けている。

もちろん、両派で今も大きく意見が別れる政策もある。

税制や社会福祉など、誰が負担し、誰が利益を享受するのか。これは、リベラルと保守という理念の根元に関わる。国家と個人の関係に直結する問題だ。

一方で、リベラルも保守も、本来は憲法とは関係のない概念のはずだ。その部分を辻元氏に質問すると、こんな答えが返ってきた。

「憲法が最大の対立軸になっているのは、日本の政治の不幸だと思います」

「日本には『押しつけ憲法論』がある。自民党は占領時代に押し付けられた憲法を変えるのは党是だという。そこが革新か保守かの対立の軸になってきた」

「変えるべきところは変えればいいんです。例えば、LGBTに絡んで、結婚について『両性の合意』とあるところを『両者の合意』とするだけで、同性婚を憲法で保証できるようになる」

憲法を改正しなくても、同性婚の合法化は可能とも言われる。でも、たった一文字変えるだけでも、そのハードルに変化が生まれる。

「本来は経済政策を中心に議論したらいい」という辻元氏は、欧州で台頭したリベラルの旗手たちの名をあげる。人々の生活の再建を訴えるスペインの政党「ポデモス」やイギリスのジェレミー・コービンだ。

それは民進党、そして立憲民主党の訴えにも重なる。

立憲民主党に入る理由

「ただし」と譲らない部分もある。9条だ。「憲法9条は戦争をさせないためにある。歯止めだ」という言葉を何度も強調した。

辻元氏が政界に入ったきっかけは、社会党の土井たか子氏だ。

「『憲法9条が危ない。守りたい。一緒にやって』と泣きながら訴えられた。1996年の10月1日。ちょうど21年前の今日です。あの時の土井さんの顔が今、思い出されるんです」

知名度と経験を生かして無所属で出た方が良いのではないかと言う支持者もいた。だが、立憲民主党に加わると決めたのは、あの時の土井さんの思いを引き継ぎたいという思いがあるからだという。

「社会党がボロボロになったあの選挙で、私は土井さんに引っ張られて政界に入ることができた。今度は私が力になって、一人でも多くの新人を当選させないといけないと思うんです」