障害がある我が子へ 「あなたが生まれてきてくれてよかった」

    あなたがいるから、いまの私がいる。

    「障害者なんて、いなくなればいい」。神奈川県相模原市の大量殺人事件で逮捕された植松聖容疑者(26)の言葉に、障害がある人やその家族は衝撃を受けた。そして、暗く破滅的なその言葉を打ち消すメッセージを発信している。

    RKB毎日放送の東京報道部長、神戸金史さん(49)は事件から3日後の29日、Facebookに障害がある子の父としての思いを書き込んだ。

    私は、思うのです。
    
長男が、もし障害をもっていなければ。

    あなたはもっと、普通の生活を送れていたかもしれないと。

    私は、考えてしまうのです。
    
長男が、もし障害をもっていなければ。

    私たちはもっと楽に暮らしていけたかもしれないと。

    何度も夢を見ました。

    「お父さん、朝だよ、起きてよ」

    長男が私を揺り起こしに来るのです。

    「ほら、障害なんてなかったろ。心配しすぎなんだよ」

    夢の中で、私は妻に話しかけます。

    そして目が覚めると、
    
いつもの通りの朝なのです。
    
言葉のしゃべれない長男が、騒いでいます。
    
何と言っているのか、私には分かりません。

    ああ。
    
またこんな夢を見てしまった。

    ああ。
    
ごめんね。

    自閉症の長男(17)への謝罪から始まるメッセージ。神戸さんはこうBuzzFeed Newsに語った。

    「容疑者の言葉を知って、心の傷が大きくてすぐには何も書けなかった。でも、何かを書かずにいられなかった」

    メッセージは、続く。

    幼い次男は、「お兄ちゃんはしゃべれないんだよ」と言います。
    
いずれ「お前の兄ちゃんは馬鹿だ」と言われ、泣くんだろう。
    
想像すると、
私は朝食が喉を通らなくなります。

    そんな朝を何度も過ごして、
突然気が付いたのです。

    弟よ、お前は人にいじめられるかもしれないが、

    人をいじめる人にはならないだろう。

    生まれた時から、障害のある兄ちゃんがいた。
    
お前の人格は、
この兄ちゃんがいた環境で形作られたのだ。
    
お前は優しい、いい男に育つだろう。

    それから、私ははたと気付いたのです。

    あなたが生まれたことで、
    
私たち夫婦は悩み考え、
    
それまでとは違う人生を生きてきた。

    親である私たちでさえ、
    
あなたが生まれなかったら、

    今の私たちではないのだね。

    ああ、息子よ。

    誰もが、健常で生きることはできない。
    
誰かが、障害を持って生きていかなければならない。

    なぜ、今まで気づかなかったのだろう。

    私の周りにだって、
    
生まれる前に息絶えた子が、いたはずだ。
    
生まれた時から重い障害のある子が、いたはずだ。

    交通事故に遭って、車いすで暮らす小学生が、
    
雷に遭って、寝たきりになった中学生が、
    
おかしなワクチン注射を受け、普通に暮らせなくなった高校生が、
    
嘱望されていたのに突然の病に倒れた大人が、

    実は私の周りには、いたはずだ。

    私は、運よく生きてきただけだった。
    
それは、誰かが背負ってくれたからだったのだ。

    息子よ。
    
君は、弟の代わりに、
    
同級生の代わりに、
    
私の代わりに、
    
障害を持って生まれてきた。

    老いて寝たきりになる人は、たくさんいる。
    
事故で、唐突に人生を終わる人もいる。
    
人生の最後は誰も動けなくなる。

    誰もが、次第に障害を負いながら
    
生きていくのだね。

    息子よ。
    
あなたが指し示していたのは、
    
私自身のことだった。

    息子よ。
    
そのままで、いい。
    
それで、うちの子。
    
それが、うちの子。

    あなたが生まれてきてくれてよかった。

    私はそう思っている。

    父より

    「ちょっとした、想像力と優しさだと思うんです」と神戸さんは語る。

    交通事故で障害が残ったり、障害のある子供が生まれたり。それだけではない、いずれ年をとれば、誰もが体が不自由になっていく。

    「植松容疑者は、障害者は自分と違うと考えています。でも、それは違う。誰もが障害を負う可能性があるし、次第に障害を負いながら生きていく。私自身が親として障害について考え、年をとっていく中で、そのことに気づきました」

    地下鉄に乗っていて、長男がパニックを起こすと、周りから冷たい視線を感じるという。「障害者か」「親は何をしているんだ」

    「多くの人にとって、障害は他人事なんです。私もそうでした」

    「でも、息子と暮らすことによって、私は多くのことを学ぶことができた。想像力が欠けていた私を変えてくれたのは、障害のある息子です」