仕事も家族も失った乙武さんが手記公開して再出発 「五体不満足」からの変わらぬ思い

    大学生でベストセラー作家となり、「障害者の代表」から一転、信頼も仕事も家族も失った。海外移住も考えた乙武さんが日本で再出発する理由。

    乙武洋匡さんが12月25日夜、ネットに手記「私がnoteを始める切実な理由。」を公開した。今後、このサイトから情報発信をしていくという。


    1998年に出版したデビュー作「五体不満足」がベストセラーになり、「"障害者の代表"のように扱われてきた」と語る乙武さん。3年前に女性関係を報じられ、一時期は表舞台から去った。

    その後、テレビなどメディアへの登場も少しづつ増えてきたが、以前と同じではいられない。今、乙武さんは何を語ろうとしているのか。

    noteには報道後、批判に晒され、仕事も家族も失い、逃げるように海外を旅したことが書かれている。

    今後は日本でどんな活動をしたところで、「いまさら何を言ってるんだ」「おまえが言っても説得力がない」と相手にもしてもらえない。ならば、自分自身が望ましいと思える社会に移り住んでしまったほうがラクなのではないかと思ったんです。

    世界で最も住みやすい都市ランキング1位に輝くオーストラリア第二の都市メルボルンでは、実際に移住の選択肢も頭をよぎった。それでも帰国を選んだのは、デビュー作を書いた頃から抱き続ける思いを実現したいからだという。

    日本を多様性ある社会にしたい。

    どんな境遇の人でも、できるかぎり平等にチャンスや選択肢が与えられる社会を実現したい。

    帰国後、テレビなどメディアには出演するようになった。しかし、以前のような積極的な発信は減っていた。今なぜ、こういう思いをネットで公開していこうと思うようになったのか。

    BuzzFeed Newsはその真意を改めて聞いた。乙武さんはこう語った。

    「騒動までの私は、どこかで“万人受け”することを目指していたように思います。みなさんの期待に応えて“いい子ちゃん”でいなければというプレッシャーを感じていたように思います」

    「でも、もうそんなことをしてもムダ。ああした騒動があっても、それでも私の理念に共鳴してくれるという方に対して、まっすぐにメッセージを発信していきたいと思うようになりました」

    報道がでる直前には政治家としての立候補も取りざたされていた。そのことにも自ら触れて、こう続けた。

    「騒動前も、騒動後も『多様性ある社会の実現』という私の思いに変わりはありません。以前はそれを政治という手段で実現できたらという思いもありましたが、自分自身の至らなさによってその道をみずから塞いでしまいました」

    「いまもなお八方塞がりの状況ではありますが、noteを通じての発信など、いまの私にできることに力を尽くし、少しずつ、少しずつ、前進していきたいと思います」