CMはときに人を勇気づける 熊本出身の広告制作者を動かした、ある子供の言葉

    テレビを見て泣く被災地の子の声が、大人たちを動かした。

    被災地の熊本と大分でだけ放送されているCMがある

    Twitterで「くまモン」を描いて被災者を励ます「 #くまモン頑張れ絵 」に参加した5人の漫画家のイラストが、5種類のCMになった。

    イラストは「ふるさと」の音楽とともに映し出され、その中のメッセージが画面いっぱいに広がる。

    「負けないモン!」

    「いつもの笑顔が熊本に戻ることを心から願っております!!」

    「まだ大変だけど、がんばって!!どうか無事で!!」

    「自分が辛かった時には必死に戦う漫画の主人公を思い浮かべ、耐えしのいでいたことを思い出し、この絵を描かせていただきました」

    広告を製作したのは電通九州。担当したクリエーティブディレクターの和久田昌裕さんに話を聞いた。和久田さんは熊本県出身だ。

    今回の企画が生まれたきっかけは、なんだったのか。

    「弊社内で被災した人たちが、情報共有のために作ったFacebookメッセンジャーのグループです。『3歳の息子がテレビを消してと言う』という書き込みがありました」

    東日本大震災のときと同じように、テレビは今回も特別体制で、地震の様子や、崩壊した家、避難所の様子を繰り返し報じ続けた。子供達にとっては、辛い映像が多い。CMも、自粛によって、ACジャパンのものへほぼ差し替えられていた。

    「広告会社の人間として、何かできないかと思っていたところに、『 #くまモン頑張れ絵 』の運動が起こっているのを目の当たりにし、『これだ』と思いました」

    翌日にはACジャパンの事務局に遠隔でプレゼンをし、企画が採用されたという。

    スピード優先の作業で協力の輪は広がった

    これだけの人気漫画家の協力を、どうやって短時間で得たのだろう。

    「運動の発起人であるちばてつやさんと仕事をしたことがあるスタッフが弊社内にいたので、その経由でまずは確認をとりました。そこから森川ジョージさんにつながり、森川さんにはTwitterで連絡を取ってくれと言われたので、直接メッセージを送り、快諾いただきました」

    「九州つながりで佐賀出身の原先生、大分出身の諫山先生へも協力をお願いしました。さくらももこ先生はご長寿アニメで子供への認知も高いだろうと協力をあおぎました。全ての先生が快く協力いただき、企画が実現しました」

    「各出版社さまにも作家の皆様経由で確認を取り、必要に応じてライツ事業部とも連絡を取り合い、ご理解を得ることができました。何よりもスピード優先の作業で、関係各所の皆様が迅速にご対応いただけて、感謝のことばもありません」

    「広告の作り手として、最大限できることを」

    CMに、どういう思いを込めたのだろう。

    「私の生まれ故郷は玉名という比較的被害の少ない地域ながら、少なからず精神的なショックを受けました。被害の大きかった地域の皆様のご心境は想像を絶します」

    「熊本県民にとっての心のシンボルである熊本城や水前寺公園などが、大きな被害を受けました。まだまだ余震も続いています。本当の意味で復興する未来がまだまだ見えない人が多いと思います」

    「本来ならばすぐにでも仕事を止めて、被災地に行ってなんらかのお手伝いをしたい。でも、現場では行政や自衛隊の方々、ボランティアのみなさんが頑張っておられます」

    「もしかしたら意味は無いかもしれない。でも、弊社スタッフの息子さんみたいな子供を一人でも多く減らしたい。そんな思いで広告の作り手として最大限できることを考えて実行しました」

    「一日でも早い復興が実現できるよう、これからもできることを考えて実行します。

    熊本のみなさん、大分のみなさん、九州のみなさん、頑張りましょう。頑張ります」

    広告は、ときに人を勇気づける

    今回の地震があってから、ネットで再度注目を浴びたCMがある。2011年、東日本大震災の直前に公開された九州新幹線全線開通のCMだ。九州がひとつになり、笑顔で声援を送る姿は、震災で傷ついた人たちの癒しにもなった。

    YouTubeでこの動画を見る

    JR九州 / Via youtube.com

    広告は、ときに人を勇気づけ、明日への力となる。