「カメラを止めろ!」結果が出ない野球選手たちの荒れる姿が熱い #ベイスターズ

    勝者のドキュメンタリーやインタビューに飽きたあなたに。

    「いいかげんにしろ!」

    「撮らんでもええでしょ!」

    ロッカールームで、選手がカメラマンに叫ぶ。

    2018年、プロ野球セントラルリーグを4位で終えた横浜DeNAベイスターズを、ベンチ裏で追い続けた球団公式のドキュメンタリー映画『FOR REAL 〜遠い、クライマックス。〜』が12月14日、公開された。

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    予告編

    結果が出ず苦しむ選手の姿が、次々と映し出される。スポーツドキュメンタリーにありがちな、派手な演出やBGMもなければ、選手同士が普通の若者の顔を見せ、はしゃいでるようなシーンも、ほとんどない。2時間弱。重々しい雰囲気が続いていく。

    アレックス・ラミレス監督は就任3年目。1年目に球団初のクライマックスシリーズ進出を果たす。2年目となる2017年シーズンは、3位で終えたもののクライマックスシリーズを勝ち上がり、日本シリーズに進出。ソフトバンクに日本一は阻まれたものの、飛躍の1年となった。

    優勝も期待された2018年シーズンは開幕当初からつまづく。今永翔太、濱口遥大、J.ウィーランドといった昨年、主力だった先発投手が相次いでケガで離脱。交流戦まではなんとか5割ペースで持ちこたえるが、その後は投打がかみ合わず失速し、優勝はおろか、クライマックスシリーズ進出も逃す、苦いシーズンとなった。

    2月。シーズンイン前のキャンプ中、ラミレス監督はミーティングで選手にこう告げる。

    「ポジションのない者は、奪い取れ。ポジションがあるものは、守り抜け」

    スポーツの世界は、ゼロサムゲームだ。全員が勝利することなどありえない。打つ者がいれば、そこには打たれた者がいる。抜擢されたものがいれば、そこには外された者がいる。

    この作品の主人公は、苦しむ者たちだ。

    「このまま上昇するかに思えた…」

    「歯車は、狂い始めていた…」

    ナレーションの語尾も冴えない。

    「チームのために戦いましょう」

    崩壊寸前のチームを、キャプテン・筒香嘉智がなんとか支えようと、スピーチで奮起を促す。

    光と陰で言えば、陰。結果がでなかった2018シーズンのこの映像は、静かに、そして重く、進んでいく。「栄光の軌跡」でないからこそ、この映像には価値がある。

    シーズン途中、トレードで球団を去ることになった者の姿も収められている。

    グラウンドでオリックスへの移籍を告げられた高城俊人は、涙を止められない。「寂しい」と呟きながらロッカーを片付ける高城に、土産とばかりにウイニングボールを差し出す、山崎康晃。そのやりとりは、別れの挨拶というよりかは、普段通りのリラックスしたコミュニケーションに見える。だが同時に、チームを追われる者、残る者のコントラストを描き出す、残酷なシーンは必見だ。

    シーズンを4位で終えたラミレス監督は、コーチ陣を前に、こう言った。

    「コーチの助言を聞かず、すべて自分で決めていた。すべての責任は私にある。変わらなければいけないのは、私だ」

    横浜ファンだけでなく、野球ファンだけでなく、闘うすべての人に。