デビュー作で15万部突破!文芸が売れない中「文体模写」がヒットした意外な理由

    第2弾は、松本人志やみうらじゅんも登場!

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    「カップ焼きそばの作り方」を文豪たちの文体で説明する謎の本が、15万部突破という大ヒットを記録しています。

    100人の文体でカップ焼きそばの作り方を書いた『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』です。

    もしも村上春樹がカップ焼きそばの容器にある「作り方」を書いたら。

    著者の菊池良さんがTwitterに「村上春樹の文体でカップ焼きそばの作り方」を投稿したところ、話題になり書籍化されました。

    相田みつを『カップやきそばだもの』

    松尾芭蕉『麺の細道』

    発売から半年、本日早くも第2弾が発売されました。

    今回は、ノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロや、流行語大賞にノミネートされたブルゾンちえみなど、話題の人物を含む120もの文体が掲載されています。

    カズオ・イシグロ『かやくを離さないで』

    EXILE HIRO『ユギリ』

    炎上CM『私らしく働ける場所 [放送中止] 』

    漫画家の田中圭一さんのユニークなイラストも多数掲載されています。

    この半年で生活はどう変わったのか、著者の2人に話を聞いてきました。

    ―― それにしてもデビュー作で15万部突破って凄まじいですよね。

    神田:正直、こんなに売れるとは思わなかったです。本を出せただけでいいと思っていたので。

    菊池:発売当日に増刷決定になったみたいです。書店員さんが気に入ってくださって、目立つところに置いてくれたのが大きいのかもしれないです。

    なのでAmazonとかよりも実店舗で売れたって聞いています。一番買ってくれた層は40〜50代の女性で、ネットとは関係ないようです。

    ―― もしかして、村上春樹さんから反応あったりしましたか。

    神田:残念ながらまだないです。登場人物では、やまもといちろうさんからのみ反応がありました。ブログで書評を書いてくださって。

    テレビに出てるので有名だとは思いますが、主な購買層の人たちに、やまもといちろうさんの文体が伝わっているのかどうか…。

    2作目は「欲を出した」

    ―― 第二弾も同じく「焼きそばの作り方」という切り口ですが。

    神田:当初はまったく別のものを考えていたんですけど、しっくりこなくて。最終的に焼きそばが一番書きやすいってことになりました。

    例えばカップラーメンだと工程が簡単すぎるし、いまいちフックがない。湯切りとか工程を一個かますのが焼きそばにはあるので書きやすいんです。

    菊池:いいところまでいった案が「鍋奉行」でした。それで5人分くらい書いたんですど取っ散らかっちゃって。鍋奉行だと決まった工程がないし、あまりにもフリースタイルすぎる。

    登場人物もいろいろ出てきてわけわかんなくなっちゃって、振り出しに戻って焼きそばになりました。

    ―― 今回はカズオイシグロさんやブルゾンちえみさんなど、タイムリーな人たちも入ってますね。やけに商業的な面を出してきたなと。

    神田:だいぶ話題に便乗しました。編集者からメールが来て「カズオイシグロは入れたほうがいい」って営業判断が出たみたいで、急遽入れました。

    変に欲を出したから第一弾のようには売れないんじゃないかって思ってます。

    ―― 書いてて大変だったのは?

    神田:誰だろう…大変ってのはあまりないんですけど、知り合いのを書くのは怖いですね。

    菊池:僕はWeb系の人がちょっと怖かったですね。デイリーポータルZの林雄司さんとか…。出版社が本人たちに送っちゃうんですよ。でも一番書きやすいのはやっぱり村上春樹さんです。

    神田:めちゃくちゃ語弊があるかもしれないんですけど一番やりやすいです。決め台詞も何個もあるし。よくわからず書いてるとだんだん村上春樹が乗り移ってきちゃうくらいです。

    「今後はヒカキンを目指します。マジです」

    ―― 今後の目標とかありますか。

    菊池:映画化ですね。主演は焼きそばで、いろんな監督が5分ずつ撮るとか。スピルバーグ、ジョージルーカス、タランティーノ。俳優は菅田将暉、広瀬すず、ベネディクト・カンバーバッチあたりがいいですね。

    神田:そういう提案は全然歓迎です。

    ―― 菊池さんといえば、ドラマ化もされた「即戦力の男」として有名ですよね。今はその活動は。

    菊池:常に進化し続けるつもりでやってるんで、次を見据えています。「即戦力の男」の前は「二代目水嶋ヒロ」を勝手に襲名してたんですけど、水嶋ヒロを捨てて即戦力になり、いまはカップ焼きそば。

    ―― 15万部売れて、戦力あるところを見せつけられたのでは。

    菊池:本来の実力を発揮できたかなと思いますが、あまり1つのことにこだわりなくやってます。

    今後ですが、僕はヒカキンになろうと思います。ヒカキン的な存在にずっとなりたかったんですけど、どっかで自分の願望に蓋をしていました。それをちょっとでも……今年で30なので年齢的にチャレンジする最後のチャンスなのかなと。新しい分野のヒーローになりたいです。

    神田:マジで?

    菊池:マジです。来年が最後のチャンスかな。30代に突入したんで。本の執筆は観光客の気分でやってます。出版業界を見学してるって感覚です。

    やっぱり僕はヒカキンとか、あとソニーのウォークマンとかに憧れてるんで。

    文芸が売れないなか、文体模写がヒットした意外な理由

    ―― 神田さんは……何になる予定でしょうか。

    神田:もう2冊で220人分の文体模写をしたので、そろそろ自分の文体をどうにかしなきゃいけないって段階に入っています。僕は普段、取材記事もやって、小説の話もきていて、もうわけわかんないことになっています。

    文体模写が一番やりやすいんですけど、そこに逃げちゃダメだなって。

    ―― 文学作品があまり売れない中、文体模写が売れるのはなぜでしょうね。

    神田:文学を読んでる前提で買わなきゃいけない本が売れてるってのは、なんなんでしょうね。文芸書のジャンルに一応入ってるんですけど、けっこう書店でランキングされてて、面白い現象です。

    菊池:ソーシャルゲームのおかげもあるんじゃないですかね。「文豪とアルケミスト」というゲームとか。あとは漫画の「文豪ストレイドッグス」も。文豪をキャラ化したコンテンツが出てたので、それに乗ったのかもしれません。

    神田:あとはガチで文豪だけじゃなくて、「迷惑メール」とか「利用者の声」みたいなのも挟んだのがよかったんでしょうね。最初からそういうネタも挟むつもりでした。あまりガチすぎないのが良かったかもしれないです。

    迷惑メール『件名:突然ですが、カップ焼きそばを相続しませんか?』

    ―― 第1弾を発売して約5ヶ月経ちました。生活は潤いましたか。

    神田:印税パワーで引っ越しました。ほぼ新築で家賃が3万円くらい上がり、自分を追い詰めた形になっちゃったんですけど。働かなきゃ。敷金礼金はゼロでした。

    菊池:ぼくは印税パワーでカップ焼きそばを50種類、50個買いました。神田さんはカップ焼きそば一切食べないんですけど、僕は執筆のためにひたすら食べてます。

    ―― 50種類も……一番美味しかったのは何ですか。

    菊池:間違えて買った油そばです。

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