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生まれつき茶髪だった私はあの日、学校の密室に閉じ込められた。

「染髪禁止」なのに「黒染めはOK」

photoAC

高校2年生の秋、ちょうど今くらいの季節だった。

私は突然、学校内にある密室に閉じ込められた。

その日は入学を希望する親子による学校見学があり、外部から見知らぬ人たちがたくさん訪れていた。

私の姿を外部の人に見せまいと、先生が私を小さな部屋に閉じ込めたのだ。

「あなたみたいな生徒がいると、うちの学校が勘違いされる」

その言葉は、先生の表情と共に今でもときどき鮮明に思い出す。

密室に閉じ込められていた1〜2時間は、気が遠くなるほど長い時間だった。

勿論スマホもないしパソコンもない。ただ白い小さな机が一つ置いてあるだけの独房のような部屋だった。

壁を一つ挟んだ廊下から、先生の甲高い声と親子の賑やかな会話が聞こえてくる。

私は話す相手もいなくて、ただひたすら壁を見つめるしかなかった。

「私が一人でここから身動きできずにいるのって、なんでだろう」

密室に閉じ込められた理由は、頭髪の色だった。私は日本の血が1%も入っていない外国人で、生まれた頃から髪色は濃い茶色だった。

しかも6歳からずっと続けている水泳のせいで、塩素の作用によりかなり明るい茶髪になっていた。

二歳の頃の写真。陽に当たると赤茶に見える色だった。

黒染めを繰り返した6年間

中学生の頃に何度か校長室にまで呼び出され、黒染めを強要されていた。

あの時の自分は、先生に従うしかなかった。

直感でおかしいと思ったことがあっても、若さ=未熟さだと思って、先生の意見の方が正しいに違いないと信じていた。

その都度指示に従って黒染めしたが、年中ほぼ毎日のようにプールに入っていたので、すぐに髪色は明るくなる。

3年間ずっとその繰り返しだった。

髪の毛が痛みすぎてしまったのか、3年生の夏にはほぼ金髪に近い状態になってしまった。手触りがキシキシで、人形のような毛だった。

中学を卒業し、私立の高校に入学した。入学時に改めて黒染めした髪も夏には茶髪になっていた。

地毛が黒髪の生徒がほとんどだったので、全体的に見ると少し目立っていたかもしれないが、私にとってはこれがナチュラルな自分の姿だった。

校則には確かに「染髪禁止」と記載されていた。

私が黒髪にしたことは「染髪」にならなかったのだろうか。

「悪いのは自分なんだ」思考回路がおかしくなっていった

高校に入学してすぐに水泳部に入部した。

それと同時に、担任の先生には、生まれつきの髪色の話も塩素でさらに色が抜けてしまっている話も伝えた。私が外国人であることは名前を見ればわかる。

それでも定期的に他の先生に呼び出されたりして、結果として黒染めを強要された。

その都度ドラッグストアに駆け込んで染髪剤を買い、自宅のお風呂で染めた。

親はいつも「先生に言われたのなら仕方ないね」と、黒く汚れたお風呂場を掃除してくれた。今よりももっと「先生の言うことは絶対!」の時代に教育を受けた親だ。

何度染めても結局はその場しのぎにしかならず、すぐに明るくなってしまう。

無意味なことをずっと繰り返しているようで虚しくなってくるし、ナチュラルな姿で生きても否定される自分の存在に次第に嫌気がさしてきた。

「悪いのは自分なんだ」。今考えると、そのような思考回路になってしまってもなんらおかしくない環境だった。

今回ニュースになった女子高生のように、一時期不登校気味にもなった。

朝家を出ても学校の方に足が向かず、逆方向の電車に乗ったり、学校に行っても昼休みに抜け出して家に帰ったりしていた。

今なら同じシチュエーションが再びやってきても笑い飛ばせるくらいの余裕はあるが、あの頃は身に起こること全てを真剣に受け止めすぎて、うまく処理しきれなくなっていた。

先生が守りたかったものは何だったのか…

そんなとき、冒頭の“事件”が起きた。

その日、私は先生と廊下で話していた。学校見学にきた親子数組がこちらへ向かってくるのを見た先生が、突然私の手を引き足早に密室に連れて行った。

そして閉じ込められたのだ。

「茶髪の生徒がいるから、この学校は茶髪OKなのか」もしくは「ちゃんと指導する先生がいないのか」と思われることを恐れていたのだろうか。

もしもそのような質問を保護者にされたら、理由を説明すればいいのに。難しい勉強をわかりやすく教えてくれる「先生」が、こんなに単純なことをその場でサッと説明するのなんて簡単なことなのに。

「この子は外国人で、さらに水泳の塩素で髪色が抜けちゃってるんです」。10秒あれば、そう説明できるのに…。

この日の出来事は、時が心を癒してくれると思っていた。

でも、日が経つごとにモヤモヤが増す。そろそろ笑い話にしたいのに、まだできない。

「若さ=未熟」じゃない。おかしいと思ったら声をあげて

今大人になってもあの頃感じた虚しさは消えず、あの時の出来事を納得できずにいる。

今回の裁判のニュースでこの件を思い出したが、まだこんなことで悩んでいる子がいるのかと驚く。

もし今同じような苦しみを抱えてる子がいたら、ありきたりな言葉だが自分のナチュラルな姿に自信を持ってほしい。

誰も肯定してくれる人がいなかったとしても、自分だけは自分を肯定すべきだと思う。悪いことをしていなければ。

そうでなければ、いざという時に自分の身を自分で守れなくなってしまう。

自分を受け入れられないと、他人を受け入れるのはもっと難しい。

「私が一人でここから身動きできずにいるのって、なんでだろう」。あの時密室で感じた「なんでだろう」は、自己肯定感の無さにほかならない。自分を苦しめていたのは、それだった。


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生まれつき茶色い髪の毛を黒く染めろ。そう教師から強要された女子高校生が裁判を起こしました。この件に限らず、教育の場には、生徒の個性や多様性、自主性を奪うルールが存在しています。

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