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「ドン・キホーテ」のイメージが180度変わる書籍『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』(集英社新書)が、じわじわと注目を集めています。
著者は、全国各地の「ドン・キホーテ」を巡り歩き、さまざまなチェーンストアを研究する谷頭和希さんです。ドンペンがいる理由や過剰な外観の理由、ドンキが果たしてきた社会貢献などを紐解き、「ドン・キホーテ」から見える現代日本の都市の姿と未来について綴った一冊です。
今回はそんな話題の本書から、ドンキやスーパーでおなじみの呼び込み音について考察した「『呼び込み君』が私たちに伝えてくれているもの」を出張掲載します。
谷頭和希『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』(集英社新書)
「呼び込み君」が私たちに伝えてくれているもの
ドンキの音空間で重要な要素の一つが「呼び込み君」です。名前で聞くとわからないかもしれませんが、これは、スーパーなどで「ポポーポ ポポポ ポポーポ ポポポ ポポポポポー ポポーポポ」という軽快なメロディの呼び込み音を流す機械のことです。どこかの店で一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
インターネットサイト「デイリーポータルZ」は、この呼び込み君の制作会社にインタビューする記事を掲載しています。そのなかに次のようなくだりがあります。
ここでは、この呼び込み君の代名詞として「スーパー」「ドンキ」「(ドンキの)焼き芋の売り場」が列挙されています。呼び込み君とドンキの親和性の高さがわかるのではないかと思います。
この呼び込み君も、ドンキの混ざりゆく音空間のなかに入り込んでいます。でも、呼び込み君とドンキが持っている結びつきもまた、決して偶然のものではないと私は考えています。そのヒントが、呼び込み君の設計にあります。
それは、呼び込み君に搭載された「人感知センサー」です。呼び込み君、ずっとあの曲を流しているようにも感じますが、じつはそうではなく、人間が呼び込み君の近くを通ったときに作動するような設定にもできるのです。
これはなにを表しているでしょうか。
呼び込み君の音がずっと流れているということは、そこに人がいる、あるいはいたということなのです。つまり、私たちは呼び込み君を介して、ドンキで他人の存在を知らず知らずのうちに体感していたのです。呼び込み君は、私たちに「この空間にいるのは一人ではない」と密かに伝えているのです。呼び込み君を介して私たちは、チェーンストアという空間が、そこに訪れるさまざまな人たちによって構成されていることを無意識に感じています。そんな呼び込み君とドンキが強い関係を持っていることは、ドンキと「地域共同体」の関係が深いことを、また別の側面から表しているのではないでしょうか。