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トランプ52枚を指で引きちぎる…!?「刃牙」花山薫の握力を科学的に解明したらさすがにヤバすぎた

空想科学読本」シリーズから出張掲載!

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マンガやアニメ、ゲームの世界で描かれる現象を科学的に解明する「空想科学読本」シリーズ(KADOKAWA)の最新作が、6月24日に発売されました。

新作では、「ドラゴンボール」に登場するフリーザの戦闘力の強さを科学的に解明したり、「鬼滅の刃」の煉獄さんの凄さを描いた場面の分析など、計21本の原稿を収録。

今回はその中から、「『刃牙』シリーズの花山薫は、トランプ52枚を指で引きちぎった!どれほどの握力⁉」の一部を出張掲載します!

※煉獄の「煉」のつくりは「東」が正式表記です


柳田理科雄『空想科学読本 Ⅰ』(KADOKAWA)

『刃牙』シリーズの花山薫は、トランプ52枚を指で引きちぎった!どれほどの握力⁉

 計算できる例を挙げると、たとえばスペックという脱獄囚を殴り飛ばしたときのパンチ力は17.6t! 相手の体重を120kg、飛ばした距離を「水平に10m、高さ4m」と仮定し、薫のパンチが当たってから5cm動いた時点でスペックが飛んでいったと考えると、前述のような数値が出る。現実の世界のヘビー級ボクサーのパンチ力が300kgとも600kgともいわれるが、薫のパンチは、その30倍とか60倍とかの威力があるのだ。

 薫の最大の武器は「握力」である。その常軌を逸した握力が生んだ事件は数々あるが、ここでは「トランプを指で引きちぎった」というエピソードを考えてみたい。

 え? 紙のトランプをちぎるくらい、誰でもできそう? 確かにそうなのだが、このとき彼が引きちぎったトランプは、おそらく52枚を重ねたもの。しかもこれ、薫が15歳のときのエピソードなのだ。そして何より「紙を引きちぎる」とは、実はかなり大変な行為なのである。

紙を破るのに必要な力は?

 そのできごとは、こんな状況で起こった。

 15歳の薫は、あるケンカでヘビー級のプロボクサーと戦うことになった。直前、相手の親玉が「花山 勝負運 占ったろか 一枚引いてみィ クク……」と言って、薫にトランプ一組を差し出した。ケンカの前にトランプ占いをしてやろうという、若い薫を見下した態度である。

 薫は表情を変えることなく、トランプを丸ごと奪い、薄く笑うと、親玉の顔面を蹴っ飛ばした。そして、トランプの束を左手で握り直し、右手の親指と人差し指でつまんで引っ張る。と、「ピッ」と音がして、重ねたすべてのトランプが指の形にえぐり抜かれた。つまり薫は、トランプ52枚を一気にちぎり取ったのだ……!

 この行為のすごさを考えるには、トランプの材質である「紙」について知る必要がある。そもそも紙とは何だろうか?紙は、セルロースという植物繊維を糊(のり)で固めたものだ。セルロースは植物の強度の源で、「木の小枝」が同じ太さの「草花の茎」よりも頑丈なのは、小枝のほうにセルロースが多いから。紙を破るには、セルロースの繊維を引きちぎらなければならない。

 そこで、筆者は実験してみた。

 もちろんトランプ52枚をえぐる握力はないので、使用したのは厚さ0.1mmのコピー用紙。それを角材に巻きつけ、イラストのようにバネばかりで引っ張ってみたのだ。紙の端が破れたのは、バネばかりが3.5kgを示した瞬間であった[図1]


※本書では、実際には多くの固有名詞などに注釈がついています。また、難しい漢字にはふりがなが振られています。初めて読む方でも理解しやすいように丁寧に解説されています。

『空想科学読本 Ⅰ』は、全国の書店やAmazonなどで発売中です。本書では、まだまだ数多くのマンガやアニメの「なぜ?」を科学的に解明します!