小さな奇跡体験を描いた漫画が話題です。
漫画家兼イラストレーターの竹内絢香さん(@ayakatakeuchi56)がTwitterに作品を投稿したところ、「泣いちゃいました!」「自分自身も励まされました!」など反響が寄せられました。
注目の作品がこちらです。
「ずっと絵描きになりたかった私に起きた、小さな奇跡」
SNSが普及する前、絵描きが交流する場の一つだった投稿誌。作者の竹内さんもその中の一つ『季刊エス』が大好きで、学生時代に絵を投稿していました。
当時は「絵描きになりたい」ということが許されない環境だったという竹内さん。一人でこっそりと、楽しく絵を描いていたそうです。
そんな竹内さんの大学時代の夢は「在学中に漫画の賞をとってデビューをしてしまう」というもの。
漫画の賞をとるという夢はすぐに叶い、担当編集者がつくことになりました。
漫画への熱い思いを持った担当さんの「漫画家は売れても売れなくても辛いんですよ」という言葉を聞き、ふと不安になった竹内さんはその場で漫画家への道を諦めることにしました。
自分で選んだ道とはいえ、漫画家になるという道を選択できなかった竹内さん。「その時点で自分は漫画家になる資格がないのだ」と、目に涙を浮かべました。
その後、竹内さんは漫画の賞には応募しませんでしたが、『季刊エス』には投稿を続けました。
自分で稼げるようになったら好きなだけ漫画が描けると思い、絵とは全く関係のない職業に就きました。ところが、現実はそう甘くありませんでした。
忙しすぎて絵を描くことも、『季刊エス』に投稿することもできなくなっていました。
最終的に「漫画が描けないのならなんのために生きているのだろう」と思い、会社を辞めました。この時、初めて絵を描くために、自分のために人生を選んだのです。
その後、しばらくは芽が出ませんでしたが、描き続けること7年。ついにイラスト本を出すことが決まりました。
そして、驚くことに竹内さんの担当編集者さんは大好きな『季刊エス』の編集者でもあったのです。
担当さんは、竹内さんが最初に『季刊エス』に投稿した15年以上前の絵を覚えていたそうです。その理由は「当時から好きだったから」でした。
その言葉を聞き、諦めず絵を描き続けてきて本当に良かったと竹内さんは思ったのでした。
BuzzFeedは投稿者の竹内絢香さんに話を聞きました。
「先日、私の初めてのイラストエッセイ本『60s UK STYLE』が発売になり、漫画にも登場する『季刊エス』さんと書籍に関するコラボ企画を実施中です」
「私にとって『季刊エス』は特別な存在なので、一緒に企画が出来ることは奇跡のようだと感じていて、そのことを描き残しておきたいと思い制作しました」
なぜ、そこまで絵を描くことに夢中になれたのでしょうか?
「物心ついたころから絵を描き続けていたので、私にとっては描かないということの方が異常なことでした。描くことが生活の一部で、常に何か描いていないと気持ち悪いという感じです。大げさに聞こえるかもしれませんが、私にとって絵を描くことは、呼吸するみたいに自然で必要なことです」
漫画家の生活は「なんて楽しい毎日!」
大学時代、担当編集者さんに言われた「漫画家は売れても売れなくても辛いんですよ」という言葉。実際に漫画家になった今、どう受け止めているのでしょうか?
「本当にその通りでしたね~~(笑)。私は特に、好きに絵を描くことを日常生活の『逃げ場』にしてきたところもあったので、それが競争にさらされるというのが当初ものすごいストレスでした」
「決して『売れている』というわけではないので売れっ子さんの苦悩というのは実感がないのですが、どのフェーズにいても仕事とする上での難しさはあると思います。ただ、やっぱり好きなことなので、なんて楽しい毎日なんだ!!!と日々感じています」
「ゆるい希望」を持ち続けて
最後に、この漫画を通して伝えたいメッセージを聞きました。
「『エス』への感謝を伝えたいという気持ちと、自分の思いの整理が目的だったので、こんなに沢山ポジティブな反響をいただけて驚いています。SNSで寄せられる批判で手が止まってしまうこともしばしばだったのですが、こんなに個人的な話に暖かい反応をくださる方が沢山いたことで、なんだか人類の善意を信じたい気持ちになりました(笑)」
「今、自分の思うような選択が出来なかったとしても諦めないで手を動かし続けていればきっと目標に近づいていくことができると思います。目の前の状況が苦しい方にも、焦らず『ゆるい希望』を持ち続けてほしいなと感じています」