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「ごみ集積所に捨てたはずが、海ごみに…」脱ポイ捨てだけでは防げない、海洋汚染の実態

河川や海に集まるごみは、どこで、なぜ発生してしまうのか。日本財団と日本コカ・コーラが実施した「陸域から河川への廃棄物流出メカニズムの共同調査」で、社会における構造的な問題が指摘された。

海洋ごみは、どこで、なぜ発生するのか

海洋ごみの7〜8割は陸で発生したものであり、その多くが河川を伝ってくるとされている。

しかし、ごみがどこで発生し、なぜ河川に流れでてしまうのか、詳しい流出メカニズムは、明らかになっていない。

そこで2019年4月、日本財団と日本コカ・コーラが共同して、河川流域の実態調査を開始した。

調査対象となったのは、東京都および神奈川県、富山県、福岡県、岡山県の4エリア。河川の本流だけでなく、人々の生活により関係の深い支流や用水路なども含めた水域全体を調査した。

きちんと捨てたはずが、海洋ごみに…

約1ヶ月半におよぶ調査の結果、ごみの発生起源は大きく2つに分けられることがわかった。

一つは「投棄やポイ捨て」、もう一つはごみ集積所などからの「漏洩(ろうえい)」だ。

日本財団海洋事業部の塩入同シニアオフィサーは、漏洩の実態について、次のような事例を紹介した。

「ごみ集積所は、(住宅から離れた)川沿いに設定されることが多い。なぜなら誰もが自宅の近くにごみを置きたくないから。袋詰めしたごみ袋を正しく集積所に置いても、なんらかの弾みでごみが川に落ちてしまうことがある」

「ごみの収集時間というのは厳密に決まっているが、どうしてもその時間と合わない生活を送る人もいる。時間外にごみ出しせざるを得ず、収集されるまでにカラスなどに突かれて、ごみが散乱してしまう」

その他にも、農業に使われる液体肥料カプセルのプラスチックや、土嚢(どのう)に使われたプラスチックが、経年劣化して河川に漏洩している事例が挙げられた。

日本コカ・コーラの柴田充 QSE 環境サステイナビリティ部長も、「河川では、ラベルもキャップも外されたペットボトルのごみを多く見かけた。あれはポイ捨てしたものではないと推測される」と意見を述べた。

ルールに則ってごみを処理したはずが、結果として河川に溢れ出してしまう。こういった漏洩の問題は、個人の努力で解決できるものではない。自治体や企業、河川流域のステークホルダーの連携が不可欠だ。

「ポイ捨て」はモラルの問題だけじゃない

ポイ捨ての行為自体にも、個々人のモラルとは別の問題点が指摘された。ポイ捨てを促してしまう、社会における構造上の問題が今回の調査で明らかになったのだ。

例えば、トラック運転手が停留場所にごみをポイ捨てすることが多いことについて、現行の廃棄物処理法が影響していることが示唆された。

問題とされたのは、同法の次の規定だ。

第三条 事業者は、その事業活動に伴つて生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。

事業で生じた廃棄物は、廃棄物を生じさせた本人が処理しなけばならず、その他の事業者は取り扱うことができない。

日本財団の海野光行常任理事は、次のように説明する。

「現状の規定だと、(事業用自動車である)トラックの中で発生したごみは工場で引き取ることができない。そのため運転手は『工場に着く前に捨ててしまいたい』と思いポイ捨てしてしまう」

日本財団は、今後自治体や関係ステークホルダーと連携し、廃棄物に関する現行制度の改定を目指すと述べた。

一方、日本コカ・コーラの柴田氏は、自動販売機周辺にペットボトルを始めとした多くのごみが散乱している現状について言及した。

「町田駅周辺の100台の自販機を調べたところ、対象期間内に一度でもごみが漏洩した自販機は全体の56%に上った。散乱したごみは、河川や水路が近いと海ごみとなってしまう」

ごみであふれる原因としては、そもそも回収ボックスが設置されていなかったり、ボックスの容量が小さすぎたりすることが挙げられる。他にも、ペットボトルや缶ではない一般ごみが投入されてしまうことで、投入口がふさがれる、容量がすぐにいっぱいになることも多い。

柴田氏は、「日本コカ・コーラとしては、まず自販機横のごみの対処から始めたい」とし、「ごみ箱の形状から見直す必要があるだろう。また、ペットボトルに限らず、一般ごみの扱いを含めて考えていかなければならない」とコメントした。