
窓のない小さなクルーズ船の一室に、両親とともに2週間閉じ込められるのは、夢の休暇とは言えないかもしれない。
新型コロナウイルスの影響で、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」号に隔離されたある一家は、この状況を最大限に活用している。
「ヘッドホン1つと音楽があれば十分だし、これで準備万端です」と、ザンダー・ソーさん(19)はBuzzFeed Newsに語った。

ジェフ・ソーさんとアン・ナ・タンさん夫婦、息子のザンダーさん、娘のケイトリンさんの4人は、横浜港に停泊しているクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」号の中にいる。
船内で身動きがとれなくなっているのは、およそ3700人。そのうちの1000人ほどが、クルーズ船のスタッフだ。
コロナウイルスの検査で、現在のところ136人に陽性反応が出ている。患者は船を降りて病院で治療を受けている。
「時間の感覚が全くないですが、幸いなことに友人とチャットできるソーシャルメディアがあるので、冷静に正気を保っていらます」とケイトリンさんは語った。
乗客は、常に客室内にいなければならない。食事や飲み物は、スタッフが客室のドアの外に置いておくことになっている。
他の乗客の中には、隔離中の食事の写真に肯定的なコメントを添えてツイートする人もいた。
Princess stepping up its game with food service on #DiamondPrincess. Don't believe the honeymooners who would rather be in an American hospital. You might have to drag me off the ship when the quarantine ends.
「アメリカの病院にいたほうがマシだったなんて言う新婚カップルは信じないで。隔離が終わったら、きっと僕を船から無理やり引き剥がさないといけないかも」
2月7日の午後、新鮮な空気が吸えるよう、1時間程度交代で甲板に出る許可が出た。
ソー一家にとって、約16平方メートルの客室から出たのは3日ぶりだった。

母親のアン・ナ・タンさん(43)によると、新型コロナウイルスによる隔離は、彼らにとって大きなショックだった。とりわけ2月19日まで船から出られないと知った後はそうだった。
幸運なことに、ソー一家は誰もウイルスの兆候を示してはいない(定期的に体温を測定するため、スタッフからは体温計が渡されていた)。
「子どもたちの学校、それとダンスと音楽の先生にメールを送るのに、少々時間が必要でした。その時間で、私たちは徐々に落ち着くことができました」とタンさんは語った。
本来ならば、一家はオーストラリアのメルボルンにある自宅に既にいるはずだった(飛行機の予約を2度キャンセルした)。
そしてこの隔離により、ケイトリンさんは学校で行われるミュージカル劇のダンサー役の最終オーディションを逃すことになってしまう。
さらに一家は、アダム・ランバートがボーカルを務めるクイーンのコンサートも見逃すことになる。「とても楽しみにしていたのに!」とタンさんは語った。

今回は、家族で一緒に行く3度目の船旅だ。バルコニーの付いていない、内側の部屋を選んだのは初めてだそうだ。
こんな経験をしてもなお、皆で再び船旅をするだろう、とタンさんは確信している。
「私たちは協調性を持って、とてもうまくいっています。ジョークも言い合うくらいです。子どもたちが一人になりたければ、2段ベッドに行き、ヘッドホンを付けます」とタンさんは語った。
毎日、クルーズ船のキッズクラブのメンバーが立ち寄り、ケイトリンさんの様子を確認するそうだ。ゲームや、塗り絵の本、ぬいぐるみの入ったケアバッグさえ残していってくれる。
2人のきょうだいはダンス好きだが、基本的なストレッチをするにも、狭すぎて制約がある。

その代わり、彼らは読書をしたり、動画を観たり、携帯電話で遊んだりして楽しんでいる。
「BuzzFeedやKポップのニュースをネットで見て、退屈をまぎらわせています」とケイトリンさんは語った(ケイトリンさん、ありがとう)。
金融機関で働く父親のジェフさんは、客室の小さな机で遠隔業務を行っている。
今回の隔離が終了したあとのことを、タンさんは心配している。
「最大の心配事は、当面『私たちはもっと長く隔離されてしまうのか』ということです」
「全体の順序の中で、私たちが今どの位置にいるのかもよくわかりません。やっっと帰宅して日常生活に戻る前にしなければならないことが何なのかも、分からないのです」
「しかし、ここで過ごしているのは珍しい経験だと考えて、すぐ立ち直りました」と、タンさんはBuzzFeed Newsに語った。
「私たちは安全で、一緒にいられて、快適です。スタッフに世話もしてもらっています。皆前向きなので、大丈夫です」
この記事は英語から翻訳・編集しました。