アメリカ在住のクリス・チョーさんは、TikTokで韓国料理のレシピを公開している人気ユーザーです。
クリスさんは最近、キッチンでの撮影中に起きた偶然のできごとをSNSに投稿し、話題を呼びました。
この日は、1月17日月曜日、キング牧師記念日というアメリカの祝日でした。
1950〜60年代、アフリカ系アメリカ人の公民権運動を率いたマーティン・ルーサー・キング牧師の誕生日です。
クリスさんが、義理の妹の家で親戚と談笑していたところ、甥っ子のデヴォンくんが質問します。
「キング牧師って誰?」
そこで、クリスさんは甥との会話を撮影することにしました。
動画では、クリスさんが4歳児のデヴォンくんにもに分かるように「人種差別」について説明しています。
クリスさんは、さらに続けます。
「でも、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア(キング牧師)はそれに立ち向かったんだ」
「キング牧師は『不公平だ。アフリカ系アメリカ人にも、バスの前のほうに座る権利はある。同じトイレを使う権利もある』と言ったんだ」
「だから、デヴォンがもし昔、アフリカ系アメリカ人で生きていたとしたら、同じ冷水機は使えなかった」
「白人は白人の冷水機、黒人は黒人の冷水機、と決められたんだ。これって、不公平だと思わないか?」
デヴォンくんはうなずきます。
クリスさんは、「だから、キング牧師は『不公平だ、私たちは不公平をなくすために闘うんだ』と訴えたんだ」と説明しました。
動画の最後には、デヴォンくんとお母さんのやりとりも撮影されていました。
デヴォンくんのお母さんが、カメラ越しで尋ねます。
「デヴォン、キング牧師はいい人だと思う?」
デヴォンくんは「イエス!」と即答しました。
BuzzFeedはクリスさんに話を聞きました。
クリスさんは、動画にした経緯をこう話します。
まず、クリスさんはデヴォンくんに尋ねました。
「ウォータークーラー(冷水機)使ったことある?」
「友達が今まさに使っていた冷水機、デヴォンが使わせてもらえなかったら、どう思う?」
すると、デヴォンくんは「いやだ」と言ったそうです。
クリスさんは、デヴォンくんが「平等とはなにか」を理解している気がしたので、話をそのまま続けたといいます。
分かりやすい言葉で「平等とはなにか」を説明したクリスさんの動画には、たくさんのコメントが寄せられました。
クリスさんが、ここまで「差別」の話を取り上げるのには、ある理由が関係していました。
というのも、幼少期に「人種差別」を経験していたからです。
クリスさんも、デヴォンくんの年頃に、キング牧師について知り、公民権運動が与えた影響を知ったといいます。
クリスさんは、当時を次のように思い出します。
「小さい頃は、なぜ一部の人が暴力を振るわれ、バス、トイレ、冷水機まで同じものを使えないのか、まったく理解できませんでした」
「私は、99%が自民族で構成されている韓国に生まれ、人種差別が身近じゃなかったのです」
その後、クリスさんは韓国からアメリカ・ペンシルベニア州フィラデルフィアに転校します。そこで、初めて人種差別を経験しました。
「韓国人生徒は、僕も含めて3〜4人しか学校にいませんでした。そこで人種差別に遭い、『中国人』と呼ばれたり、散々なあだ名をつけられたりしました」
クリスさんは、キング牧師の偉大さについて話します。
クリスさんは、現代の人種差別問題についても意見を述べています。
「(僕の投稿を見て)『ありがとう』ってコメントしてくれた人がいます。白人、黒人、アジア人…人種に関係なく様々なフォロワーから連絡をもらいました」
「『これこそ家庭で教えるべきこと』とか『みんなを代表して言ってくれてありがとう』というポジティブなメッセージばかりでした」
「アフリカ系アメリカ人がBlack Lives Matter(BLM)運動で立ち上がったように、アジア人として、アジア人差別に声を上げることは大事だと思っています」
「それよりもっと大事なのが、白人、黒人、アジア人、人種に関係なく、人種差別の撤廃を訴えていくことです」
「人権について考え、自由と平等を求めて立ち上がる、それがいちばん大切だと思います」
最後に、クリスさんはなぜSNSで発信し続けるのか教えてくれました。
この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:髙島海人