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家族旅行で学校欠席、先生はどう思ってる? ささやかな「ズル休み」のススメ

先生だって休みたいよ...

平日に学校を休ませて家族旅行に行くのってどうなの?

ネット上で賛否が繰り返されている議論だ。「授業ではできない経験ができる」「家庭の事情がある」という賛成派、「義務教育なのにズル休みだ」「迷惑」という反対派。結局、親の価値観が分かれる問題だよね、となる。

それでは、小学校の先生はどう思っているのか。BuzzFeed Newsは、東京都内の公立小学校で15年以上の経験がある男性教員のAさん(39)に聞いた。

「風邪」と嘘をつく親も

親の働き方の多様化によって、家族旅行のために平日に学校を休む子どもは少しずつ増えている、とAさん。休み方のパターンは3通りあるという。

  1. 風邪で、などと嘘をつく
  2. ちょっと家庭の事情で、と濁す
  3. 旅行する、と正直に伝える


1,2の場合でも、飛び石連休の合間の平日だったりすると、旅行かな、とピンとくる。親が口止めしていても、子どもがうっかり口を滑らせることもある。

受験直前なので欠席

家族旅行のために学校を休む子がいるとわかったとき、先生はどう感じるのか。担任によって受け止め方はさまざまだ、としたうえで、Aさんは言う。

「僕自身は、休もうと休むまいと、どちらでもいいです」

「家族との旅行じゃないと経験できないこともあります。個別の事情を聞いて、ケースバイケースで対応しますね」

学校を休まれる場合、先生が直面するのは二つの問題だという。

一つ目は、授業の遅れ。

「休んだぶんは放課後に補習をしてください、と当たり前のように言ってくる保護者もいます。放課後はすぐ教職員会議がありますから、時間をとりづらい。給食の残り時間などで対応したりもしますが、できれば家庭でみてほしいですね」

二つ目は、行事の前の急な欠席。

「運動会、音楽会、学習発表会などの準備を進めているときですね。早めにわかると対処できますが、全体リハーサル当日に主役級の子に休まれると、担任が代役をしたり組体操の下段に入ったりします」

旅行に限らず、さまざまな理由での欠席はある。中学受験の直前には、インフルエンザなど感染症にかからないようにするため1カ月ほど欠席する子もいるという。大事な時期にけがをさせないよう、体育を欠席させたいという要望もある。

「その子の将来について家庭でじっくり考えたうえでの判断でしょう。家族旅行で休んだ子に聞くと、『お父さんが急にこの日だけ休めることになったから』など、その家庭なりの事情があります。いち教師が、休んじゃダメだという権利はないと思います」

モンスター・ペアレントとみなされる?

保護者は「こんなわがままを言うとモンスター・ペアレントとみなされるかもしれない」「子どもの成績に不利になるかもしれない」と心配するがゆえ、嘘をつくこともあるようだ。

Aさんは「旅行でもなんでも予定がわかった時点で、行き先を含めて教えてもらえるとありがたい」というのが本音だ。

「何かあって連絡がとれないと心配ですし、飛行機が遅延したりして帰ってこられなくなったとき、嘘に嘘を重ねるようなことはしてほしくないんです。子どもにも嘘をつかせたくはなく、旅行で何が楽しかったか話してもらいたい。その子の経験を共有したいです」

Aさんは、保護者と積極的にコミュニケーションをとり、「担任に言いやすい空気」をつくるよう心がけている。

キッズウイーク構想の裏で...

ところで、家族旅行で子どもが学校を休むとき、少なからぬ教師は心の中でこう叫んでいるらしい。

「私だって平日に休みたいのに!」

そう。教師こそ、平日に休めない仕事なのだ。家族旅行で欠席することに難色を示す教師には、嫉妬の感情もないとはいえないのでは、とAさん。

政府は「働き方改革と表裏一体の、休み方改革」として、2018年度から「キッズウイーク」の実施を検討している。

学校の夏休みなど長期休暇の一部を別の時期に分散させ、地域ごとに大型連休を創設する。同時に企業でも有給休暇を取りやすくし、働く親も子どもと一緒に休みを取れるようにするねらいだ。

確かにキッズウイークが実現すれば、親子ともに堂々と休んで家族旅行ができる。

もちろん教師にも適用される制度だが、そもそも平日に有休をとることが難しい現状がある、とAさんは言う。

「担任が病欠の場合は、1コマごとに手が空いている別の教師がピンチヒッターで授業に入ります。同僚に迷惑をかけることがわかっているので、旅行のために有休をとるなんてとても言えません」

有休はあっても取れない

東京都の教員の場合、年次有給休暇は年間20日あり、1日単位または1時間単位で取得できる。放課後、会議がない日に早めに退勤するときなど「後1(あとイチ)」と呼んで1時間だけ「有休」にしたりするそうだ。

2014年、高校教師が勤務先の入学式を欠席し、自分の子どもの入学式に出席したことが明るみになった。来賓の県議らが「担任の自覚、教師の倫理観が欠けている」と批判。賛否両論が起きた。

それほど、教師が休むことには厳しい目が向けられる。特に小学校は教科担任制ではないため、クラス担任が休むハードルは高い。

教師の長時間労働は負担が大きいとして、静岡県吉田町は、町内の小中学校の夏休みを短縮し、16日間程度にすることを検討している。教師の休み確保には抜本的な改革が必要そうだ。

先生は、休むことができるのか

Aさんは、15年を超えるキャリアで一度だけ、ズル休みをしたことがあるという。6年生の担任をしていたときだった。

放課後、職員室で熱っぽさを訴えると、心配した同僚が翌日の授業の代理をすべて手配してくれた。翌日、体調が回復したので出勤しようか迷ったが、「ちょっと休んでみよう」。真冬の海に出かけ、ボーッとして過ごした。

代理の先生が子どもたちとトラブルになるなど、その日のクラスは大変だったらしい。翌日に出勤すると、子どもたちが我も我もと駆け寄ってきて、担任であるAさんと代理の先生のやり方の違いを口々に訴えてきた。

順番に意見に耳を傾けていると、先生のやり方の違いに適応しようとした子どもたちの成長ぶりがうかがえた。ずっと近くにいるだけでは、お互いにわからないことがあるんだな、と感じた。

「休んでよかった」

Aさんはしみじみと実感した。夏休みは毎年、7月中に事務作業を済ませて、20日分の有休をまとめて取り、国内外を旅行することにしている。リフレッシュするとまた、子どもたちに会いたくてたまらなくなるという。


「働き方」を考えるときに大事なのが「休み方」。政府は今年度、「働き方改革」に続いて「休み方改革」を進め、一部企業では週休3日制を導入するなど、休むためのさまざまな取り組みが広がっています。休むことは、私たちの生活の質の向上や健康につながります。

BuzzFeed Japanでは7月20日〜26日の1週間、私たちがより休暇をとり、楽しむことを奨励するコンテンツを集中的に配信します。