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主婦に休日を! 週末の「家庭内長時間労働」をなくすには

これを読んで「俺は家事をやっている」と怒る男性にこそ期待します。

興味深い調査がある。東京大学社会科学研究所准教授の鈴木富美子さんが論文で、休日に夫婦の間で「休み格差」があることを明らかにしたのだ。

調査によると、夫婦の就労の有無にかかわらず休日は、妻は夫よりも5時間近く「総労働時間」が長く、夫は妻よりも3~4時間ほど「自由時間」が長い。「休日くらいゆっくりしたい」とゴロゴロする夫の横で、料理や掃除に明け暮れる妻の姿が目に浮かぶようだ。

夫が1時間でも家事・育児をすれば、そのぶん妻の労働時間が減って自由時間が増え、夫婦間の休みバランスが取れるはずなのだが、そうはならない。なぜ?

これは「家庭外長時間労働」の陰にある、「家庭内長時間労働」のお話ーー。

週末の家事は「プレイ」

会社員の女性(37)は、銀行員の夫(38)が土曜日に発する「昼ごはん何にする?」の一言に、殺意を覚える。

共働きで、2歳の息子がいる。女性はフルタイム勤務だ。平日は保育園の迎え時間に滑りこむため、スーパーに寄る余裕すらない。週末に作り置きしていたおかずや毎週月曜に届く宅配食材は、金曜日には底をつく。

つまり土曜午前は、冷蔵庫の食料が1週間でもっとも枯渇しているのだ。

夫の「何にする?」は、字面では主体的に作ってくれるようにも、外食を勧めているようにもとれる。だが実際は「君は僕に何を作ってくれるつもりなの?」というニュアンスだ。調理におけるクリエイティブ能力が試されている、と女性は捉えている。

「そう言われると、私も仕事の習性からか期待に応えなきゃと思ってしまって。冷蔵庫を漁ったり慌てて買い物に行ったりと『土曜ランチプロジェクト』に必死になってしまいます。その間、夫はゆっくり新聞を読んでいてムカつきますね」

材料がないから作れない、と投げ出すこともできる。作ってよ、と丸投げしたっていい。でも計画性や応用性がないと思われるのは嫌だ。平日の夜は子どものために夕食を作っているのに、帰りが遅い夫はその頑張りを見ていない。夫に見せるための「家事プレイ」に意地になってしまう。

「あえて夫がいるときに掃除機をかけて大変さをアピールする、というママ友もいます。夫に家事をしてほしい、と言いたいだけなのに、逆効果になってしまっているかもしれません」

夫を意識して家事をする妻と、そんな妻の努力に任せきりの夫。週末に、妻のほうが夫より5時間も長く家事や育児をしているのは、たまった家事を片付ける物理的な時間だけでなく、こうした意識も関係しているのかもしれない。

その結果が「家庭内長時間労働」という現実だ。BuzzFeed Newsは、明治大学教授(社会学)の藤田結子さんとともに「家庭内長時間労働」がなぜ改善されないのかを考えた。

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藤田さんは、根本的な問題は「家庭外長時間労働」のほうだ、という。共働きが増え、「夫は仕事、妻は家庭」という夫婦ばかりではなくなったとはいえ、労働者としての男性の労働時間は、女性より長い。「平日めいっぱい働いているんだから休日くらいは休ませてくれ」という意識は、多くの男性に根強くあるという。

「男性は『家庭=リラックスの場』という感覚で、家事や育児も労働であるという意識がないのでしょう。妻が休日に休めていないことについては、考えが及ばないでしょうね」

休みではなく「待機」

実際、家事や育児は「無償労働」として愛という名のもとにおこなわれている。愛妻弁当を美化したり、おむつのCMでワンオペ育児を賞賛したりするのがその例だ。

2016年に話題になったドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」で、主人公は家事代行として給料をもらいながら男性と生活。タダで家事労働をすることは「愛情の搾取」だと言った。

「仕事として料理や保育をすれば賃金が支払われるのに、同じ労働を家庭内でしたら支払われません。無償労働は価値がないから無償なのではなく、賃労働でないから価値がないとみなされるのです。問題は、賃労働、つまり家庭外労働のほうを評価する価値観そのものです」

専業主婦は「3食昼寝付き」などと揶揄され、育児休業は「育児休暇」と呼ばれて仕事をサボって遊んでいるように見られることがある。

「自宅にいるからといって休んでいるわけではないですよね。家事に終わりはなく、気が抜けない。子どもが泣いたら24時間いつでもすぐに駆けつけなければならない。休みではなく、労働の『待機』といえます」

藤田さんは著書『ワンオペ育児』の中で「父親たちは育児を『しない』のか『できない』のか」と問いかけている。イクメンという言葉が浸透したが、男性の家事・育児時間は1990年代から実はあまり増えていない。

2011年の総務省「社会生活基本調査」によると、6歳未満の子どもがいる共働き夫婦で、夫の8割は家事を日常的にしておらず、7割は育児を日常的にしていない。

子どもと「遊ぶ」けど「世話」はしない。父親が家事や育児を、自分がすべき労働だととらえていないから、オイシイところ以外は妻に任せきり。家庭外の長時間労働だけが原因で「できない」というわけではなさそうだ。

ここまで読んで「自分は違う」「ちゃんと世話をしている」という男性は、ぜひ怒らずに読み進めてほしい。決してあなたを責めているわけではありません。家事や育児を主体的にする立場として、パートナーにこんな対応をとられたらどう感じるか、なぜ多くの家庭でそうなってしまうのか、ともに考えてほしいのです。

洗車しかしない戦略

藤田さんはアメリカの研究をもとに、家事や育児を避けようとする男性が取りがちな”戦略”をまとめている。

本音とは違う理由を口にする......本音「家事は妻がやるべきだ」、建前「仕事がきつい」「疲れていてできない」

特定の家事フェチになる......犬の世話や洗車など一つ二つの家事にこだわり、それを理由に他に無数にある家事を分担しない

家事の削減を言い張る......「外食でいい」「シャツがシワシワでも平気」と言って分担が自分にふりかかるのを避ける

一家の大黒柱としてふるまう......大黒柱の地位とプライドを保つため、あえて家事や育児をしない

もしも夫にこうした戦略をとられたら、妻は八方塞がりになってしまう。

藤田さんは、夫婦の間での「ミクロな交渉」には限界がある、とも話す。社会システムや価値観の壁が立ちはだかっているからだ。

男女の賃金格差は大きく、夫の長時間労働は改善されない。配偶者控除の制度は女性の働く意欲をそぐとも指摘されている。

公的な育児サービスといえば保育園だが、待機児童が解消されず、利用するまでのハードルが高い。ベビーシッターや家事代行サービスは、料金が安くはないのと同時に「他人に頼むなんて」といった社会規範との葛藤がある。

結局のところ、妻が家事や育児を担ったほうが「合理的」なシステムになっている。意識が先か、制度が先か、のニワトリ卵の状態のまま、休めないで疲弊していく女性たち。

どうすればいいのか。

「つらい、しんどい、と声をあげて助けを求めましょう」と藤田さんは言う。

「ワンオペ育児という言葉が広まったのは、当事者がつらいんだと声をあげることができるようになったから。休めないのはおかしい、と遠慮せずに表明していきましょう。周りはその声を受けとめ、広げましょう」

家事・育児はどのくらい負担が大きな労働なのか、具体的に伝えていく。ささやかな抵抗かもしれないが、わかってもらえないと諦めてひとりで抱え、体も心も休まらないまま悶々と「休日」を過ごすよりはずっといい。家事や育児を主体的にしている男性も、ともに声をあげてほしい。

冒頭の調査を、もう一度。

休日は、妻は夫よりも5時間近く「総労働時間」が長く、夫は妻よりも3~4時間ほど「自由時間」が長い。夫が1時間でも家事・育児をすれば、そのぶん妻の労働時間が減って自由時間が増え、夫婦間の休みバランスが取れるはずだ。


「働き方」を考えるときに大事なのが「休み方」。政府は今年度、「働き方改革」に続いて「休み方改革」を進め、一部企業では週休3日制を導入するなど、休むためのさまざまな取り組みが広がっています。休むことは、私たちの生活の質の向上や健康につながります。

BuzzFeed Japanでは7月20日〜26日の1週間、私たちがより休暇をとり、楽しむことを奨励するコンテンツを集中的に配信します。

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