#PTAやめたの私だ 「入会しません」 ひとりの主婦の静かなる抵抗

じゃんけんやくじ引きによって、半ば強制的に役職を決めるPTAが少なくない。任意加入のはずだが、やめるにも勇気が必要だ。PTAは何のためにあるのか。

来年度のPTA役員や委員を選ぶ季節がやってきた。「じゃんけん」「くじ引き」「ポイント制」「全員参加」「推薦」など、各学校ごとに独自の選出ルールがある。

役職決めの保護者会に参加しなければ「欠席裁判」になることも。子どものためのボランティア組織であるはずのPTAで、大人たちが役職を押し付け合ったり、黙りこんだりという光景は、学級会よりひどい。

改革する余裕などない


東京都内の会社員女性(40代)は、子どもの小学校のPTAを改革したくて、フルタイムで働きながらも役員になった。しかし実態は、役員に課されたタスクをこなすのに精いっぱいで、他の役員との人間関係にも悩まされた。新しいことを提案する余裕はなく、精神的に追い詰められた。


役員の任期を終えたいまは、PTAの代わりに、保護者有志による団体をつくろうと模索している。PTAに不満をもつ保護者を仲間に加えることが狙いだ。

PTAを敬遠し、抵抗をはじめる人たちがいる。

東京都内の主婦(42)は長女が中学に入学する前に「PTAには入りません」と非加入を表明した。理由はこうだ。

「面倒くさい」「やりたくない」と親がブツブツ言いながら学校に出かけていく。「どうして?」と子どもに聞かれたら「そういうことになってるの!」と答える。そんな親の背中を、子どもに見せたいだろうかーー。

女性は長女が小学生の頃、PTA副会長を務めた経験がある。子どものために役に立ちたい、と思っていた。

毎年の恒例行事として、新旧PTA役員の「歓送迎会」が年度はじめにある。500円の参加費を払ってまで土曜午後に学校に来たいとは誰も思わないのか、参加者が集まらない。前委員らに「ねぎらうので出てきてください」と声をかけるのが、最初の仕事だった。

「この歓送迎会、何のためにやるんだろう?」

まず役割が決まっていて、必要な人数を割り当てるという方法にも納得がいかなかった。例えば、祭りをやることはすでに決まっていて、決められた人数の「まつり委員」を各クラスから選出する。祭りがやりたくて委員になった人は、まずいない。消極的な人の寄せ集めで何とか開かれた祭りが前例となり、毎年繰り返される。

黙ったほうがラク

「やりたい人がいる活動だけをやろう。それがボランティアでは」。任期1年目の終わりに女性は訴えたが、役員会の中だけで封じられた。これ以上、自分にできることはない。2年目は黙って任期をやり過ごした。

そして、子どもは中学校に入学。

中学はたった3年間。ラクそうな委員を1年だけつとめてやり過ごすことだってできる。だが、女性が選んだのは、PTAに入会しないことだった。

「PTA組織の中に入って変革しようとする人もいますが、私はリーダーシップをとれるタイプではない。できるのは、PTAに入らないという選択で意思表示することでした」

PTAが入退会自由な組織であることは、あまり知られていない。任意加入であると周知しているPTAが少ないからだ。2016年3月にタレントの菊池桃子さんが「PTAは任意参加なのに、全員参加することが暗黙の了解となっているケースが多い」という趣旨の発言をしたことが話題になった。

女性の長女が入学する中学校でも、給食費や教材費と合わせてPTA会費が口座から引き落とされることになっていた。入学式に続いてPTAの委員決めの会が開かれることにもなっていた。入るか入らないかは一度も聞かれなかった。

多くの会員が積極的に賛同しなくても入会しているのですから、私も黙って入会して、必要最低限の活動をこなすことのほうが楽なのですが、自分がよいと思っていない団体の一員になることが、自分にも子どもにも恥ずかしいのです。

委員決めの会をやり過ごし、その後にPTA会長、副会長、副校長と話し合った。非加入の希望は突っぱねられるだろうと予想していたが、すんなりと認められた。

PTAに入らないとどうなるの?

女性は、花壇整備や学習ボランティアなど、PTAに限定されない子どものための活動には参加するつもりだ。保護者の懇親会でPTA会費で買ったお茶菓子が配られると知ったときは、事情を説明して受け取らないことにしてもらった。自己紹介などでは、非加入であることを積極的に打ち明けるようにしている。

「私はPTAには入っていませんが、皆さんと仲良くできたらうれしいです」

「え?どういうこと?」「PTAに入らないなんてできるの?」「入らないとどうなるの?」と質問されると、こう答える。

「PTA会費を払わなくていいし、委員もやらなくていいんですよ」

アンチPTAの姿勢は警戒を生むので、淡々と説明する。やらない選択があると知ってもらうことで、「私も苦労したんだからあなたもやるべき」「全員が平等に負担すべき」という”呪いの連鎖”を断ち切ることができるはず、と信じている。

「やらない人はずるい」という発想

たった一人で始めた、PTA非加入という抵抗。一人だからこそ、PTA会費の払い戻しなども個別に対応してもらえている。しかし、非加入者が増えると、PTAの事務作業が増えて面倒になるだろう。それも任意加入が周知されない理由の一つだ。

入退会自由という権利を行使したものの、任意加入を周知せよ、と声高には言いづらい、と女性は言う。

PTAが任意加入とわかれば、まず非加入を選ぶのは、ひとり親や貧困家庭など、経済的、時間的に余裕のない人たちだろう。ただでさえ、PTAの役職につかない人への風当たりは強いのに、非加入の人が子どもをPTA行事に参加させようとするものなら、「会費を払っていないのにずるい」「親が準備を手伝わないのになぜ」と非難の的になりかねない。

「PTAが弱者を切り捨てることになると、もともと孤立している人がますます孤立してしまいます。すべての子どものためのボランティア組織であるPTAこそ、貧困家庭をサポートできる可能性があるのに、その理念とはほど遠いのが現状です」

非加入でもイベントに参加できる

「PTA会費」は2010年度から、生活保護法の教育扶助、および、経済的理由で就学困難な家庭を支援する就学援助の対象費目に追加された。文部科学省の調査によると、2013年度は全国でおよそ2割の市町村が独自事業として、PTA会費を就学援助の対象費目にしている。

PTAに詳しい首都大学東京の木村草太教授(憲法学)はBuzzFeed Newsの取材に、「PTAに参加したい人を経済的に援助することは生活保護法のもと適切で、PTAの任意性を否定するものではない」としたうえで、こう指摘する。

「PTAは、任意加入であると同時に、加入者だけでなく学校全体のために活動する団体です。非加入を選んだ人が不利益な扱いをされたり、子どもが差別されたりするのは、あってはならないことです」

東京都小学校PTA協議会が2015年度に実施した調査では、PTA年会費の平均は3277円。役員会は月1回、平日の午前中に開いているというところが多かった。回答した都内480校のPTAのうち、副会長が10人以上いるところが26団体もあった。共働き世帯が増えたため、役員の負担を減らすための工夫とみられるという。

保護者の負担軽減はもちろん、存在意義そのものが見直しを迫られているPTA。「やりたい人がやる」「できる人がやる」という仕組みにならない限り、「みんな平等に苦労すべきだ」と負担を押しつけ合うところから抜け出せない。

「子どものための奉仕」という理想の裏で、”呪い”は連鎖し、親たちの首を絞め続けている。

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