「おむつないですか」
朝6時。東京都目黒区で子ども3人を育てる会社員女性(39)は、近所のコンビニをハシゴしていた。4軒目。「置いてないです」。会社に遅刻するのを覚悟して、ドラッグストアの開店を待たなければならないのかーー。
5軒目でやっと見つけた
次女(1)のおむつのストックが切れていると気づいたのは前日の晩。3人の子どもを連れて買いに出るのは大変で、残業中の夫に頼んだ。なのに夫は、ドラッグストア閉店後に手ぶらで帰宅。それで早朝、家族が寝静まっているうちにコンビニに駆けつけたのだ。
5軒目のファミリーマートでようやく、少量パックのおむつを見つけた。
「いざという時のためにコンビニでも扱ってもらえると助かるのですが」
コンビニ用の少量パック
おむつを置いているコンビニが少ないことは、以前から子育てエッセイ漫画などで話題になっていた。最近またTwitterで議論が再燃している。
乳幼児にとって「トイレ」であるおむつは、使用頻度も緊急性も高い。外出先でおむつがパンパンになったり漏れたりしたときに持ち合わせがあればよいが、赤ちゃんを連れてドラッグストアまで行ったり、大きな袋のおむつを買って持ち歩いたりするのは大変だ。
コンビニの生活用品コーナーには、生理用ナプキンやコンタクトレンズ洗浄液、下着、コンドームなど、急に外泊しても困らない程度の商品がそろっている。
おむつはどうなのだろう。BuzzFeed Newsはメーカーや大手コンビニチェーンに聞いた。
紙おむつ「メリーズ」の製造元である花王の商品広報センターによると、「メリーズパンツLサイズ4枚入り」という少量パックの規格があり、主にコンビニで販売されているという。
サイズ、タイプ、メーカーが多様
ローソン広報室は「おむつを置いていない店舗もあるのが実情です」と話す。
ローソンの場合、本部が各店舗に陳列を指定する商品と、各店舗のオーナーが陳列するかどうかを判断する商品がある。おむつは後者で、それぞれの店舗のオーナーが立地やニーズ、時期や売れ筋に応じて、発注するかどうかを判断しているという。
「おむつは新生児から3歳児くらいまでサイズが多様で、テープタイプとパンツタイプの違いもあります。また、メーカーにこだわりのある方も多く、限られた棚のスペースでは導入しづらいのが現状です」(ローソン広報室)
子ども連れが多く集まる地域の店舗のほか、医薬品や日用雑貨を充実させたヘルスケアローソンや、病院内の売店であるホスピタルローソンでは比較的、取り扱いが多いといい、「今後もできるだけニーズには応えていきたい」という。
セブン- イレブンも、少量パックのおむつを本部からの「推奨商品」としてリストに入れている。発注の判断は店舗のオーナーに委ねているという。
あるコンビニチェーンのオーナー男性は、「ロードサイドの観光地など、急におむつが必要になる可能性が高い立地であれば別ですが、うちはニーズがないので置いていません」と話す。
コンビニはおむつを置いていないわけではないが、地域や店舗によって差があるようだ。
おむつ1枚100円
では、子どもが多く集まる場所ではどうだろう。休日になると子連れでにぎわう東京都渋谷区の代官山。駅周辺にあるコンビニ3店(ローソン、セブン-イレブン、ファミリーマート)を回ったが、いずれもおむつは置いていなかった。ペットフードやペット用トイレシーツがある店もあり、それぞれの店の客層やニーズが垣間見えた。
近くのドラッグストアでは、陳列棚一面に大手メーカー7社のおむつがびっしり並んでいた。新生児、S、M、L、ビッグのすべてのサイズが取り揃えてあり、テープタイプもパンツタイプもあったが、いずれも大容量のパックだった。
子ども服や雑貨のテナントが集まる商業施設「ラ・フェンテ代官山」には、トイレに隣接する授乳室に、おむつの自動販売機があった。
サイズはMとLで、それぞれ1枚100円。大容量パックだと1枚あたり10〜20円台であることを考えると、割高ではある。
江東区のららぽーと豊洲、武蔵野市のコピス吉祥寺なども、おむつ自販機を導入している。
ニーズを吸い上げづらい
外出先でおむつがなくなってしまった!というピンチの救世主となる、コンビニのおむつ販売や、おむつ自販機。
一方、指先ひとつでポチッとすれば、大容量パックのおむつをすぐに宅配してもらえる時代でもある。割高なおむつを買わざるをえない機会が、頻繁にあるわけではない。
子育て世代の間では、コンビニにはおむつを置いていないだろう、という暗黙の了解がすでにあり、店舗に直接、問い合わせないのかもしれない。また、おむつが必要な期間はわずか2〜3年程度で、それを過ぎると、外出先で困ることはなくなる。
「コンビニにおむつを置いてほしい」、つまり「外出先でパパッとおむつが買えたらいいのに」というニーズは、立地や客層によるだけではなく、あったとしても吸い上げられづらいものなのだろう。世代交代し、ときどき話題になりながらも、子育ての「些細な不便」として、続いていくのだろう。