片山さつき議員「自民党は3歳まで母親が育てるべきだと考えていた」。 幼児教育無償化の狙いは?

    無償化より待機児童対策を優先してほしい。そう願う保護者ら3万人超の署名を受け取った。

    「幼児教育無償化は本当に必要な人からにしてほしい。無償化より全入化を優先して」

    働く親たちで構成するグループ「希望するみんなが保育園に入れる社会をめざす会」は11月27日、Change.orgで集めた3万1327人分の署名を自民党本部に提出した。署名は、安倍晋三首相や人生100年時代戦略本部などに宛てたもの。戦略本部の副本部長をつとめる自民党の片山さつき参院議員が受け取った。

    片山議員は「子育てしやすい社会にすることが目的で、無償化はその一つ。保育の受け皿をつくることに最善の努力をするし、幼児教育の質も上げたい。どちらかを優先するということはありません」と強調した。

    自民党にあった「3歳児神話」

    片山議員は11月22日、AbemaTVの番組「AbemaPrime」に出演し、「幼児教育無償化は、まず幼稚園教育の議論から始まった」と検討の経緯を語った。

    「母親はできるだけ自分で子どもを育てるべきだという『3歳児神話』が、私が12年前に政治家になったときの自民党には根強くありました。安倍政権も第一次はそうでした」

    幼児教育無償化は、2006年から自民党の公約に掲げられていた、と片山議員。当初は、義務教育より前の幼稚園教育にいかにアクセスしやすくするかという議論だったという。

    「子どもを育てる責任は一義的に家族にあるとしつつ、党として幼児教育を無償化することを決めています。でも、できなかったのは財源がなかったから」

    自民党重点施策2006(自民党政務調査会 2005年8月)にはこうある。

    国家戦略としての幼児教育政策の展開

    子どもの視点にたち、全ての子どもが力強く生きる力を幼児期から育成するために「幼児教育重視の国家戦略」を展開します。このため、親の経済的負担を軽減し、全ての子どもが十分な幼児教育を受ける機会が実質的に保障されるよう、保育園・幼稚園の幼児教育機能の充実を図るとともに、幼児教育の無償化を目指します。子育てを通じて、親としての喜びや生きがいが実感できるよう、親としての育ちを支援します(以下略)。

    安倍首相は2013年4月の成長戦略スピーチで、「3年間抱っこし放題での職場復帰支援」を掲げた。「3歳になるまでは男女が共に子育てに専念でき、その後に、しっかりと職場に復帰できるよう保証することです」と述べ、「3年育休」を推進しようとしていた。

    ところが、働く女性はますます増え、幼稚園よりも保育園のニーズが増えてきた。待機児童問題はますます深刻になり、3年も休んではいられないと「3年育休」には批判が殺到した。

    片山議員は番組内でこう説明した。

    「このままだと日本の人口は1億人を切る。働く世代の割合が減り、国民の生活水準を維持できず、福祉も成り立たなくなる。安倍総理は超保守的だったのが、お母さんたちにも働く準備をしてもらう土台を整えるのが国の役割ではないかという議論になりました」

    「人生100年時代で必要なのは、未来への投資。私たちが次の世代にしてあげられることは、教育で付加価値をつけて生涯所得を上げていただくことです。機会があって経済的に許せば、子どもの教育の質を高めたいという人は多いのです」

    「現在は、家庭の責任を踏まえつつも社会全体で子育てをするということで、(幼児教育無償化を)消費税の使途とすることを政策の旗にあげて解散し、選挙に通ったのです」

    だから自民党は2006年から保育充実のみならず、幼児「教育」無償化を公約に掲げ、長年財源が足りなかったのを今回消費税増収分振り向けに舵を切り、選挙となったのです。専業主婦家庭の幼稚園費用、無償になりますよ! https://t.co/vcaZU5kGWI

    今回、片山議員に署名を提出したのは、ほとんどが働く親たちだ。保育園に子どもを預けるために情報収集や見学に奔走する「保活」を経験している。

    代表の天野妙さんは「幼児教育の重要性は理解しているが、その定義が曖昧です。公費を投入するのであれば、どのような幼児教育のビジョンなのかをまず明確にしてほしい」と話す。

    これに対し、片山議員は、保育園も幼児教育の現場であるという見方を示し、こう話した。

    「人生100年時代戦略本部では、まさにそこを話し合っている。これから必要とされるのは、学力というよりも非認知能力(忍耐力や社交性、自尊心など、IQでは測れない幅広い能力)です。AI(人工知能)と争っていかないといけない子どもたちは、私たちよりもっと大変になる。決していい加減に考えているわけではありません」

    日本では、幼稚園は文部科学省、保育園は厚生労働省が所管し、認定こども園や企業主導型保育の事業を進める子ども・子育て支援制度は内閣府が担当している。天野さんは、こうした縦割り行政の一元化も求めた。

    幼稚園と保育園は別なの?

    政府は、幼児教育無償化を含む「全世代型社会保障」に向けた年間2兆円規模の政策パッケージを年内にまとめる予定だ。

    安倍首相はこの日の衆議院予算委員会で、無償化の対象範囲について有識者会議などを設置して検討し、来年の夏までに結論を出す方針を表明した。

    3〜5歳児では、幼稚園、認可保育園、認可外保育施設など、預け先の施設の種別による対象範囲と金額が注目されている。0〜2歳児については所得制限がもうけられる見通しだ。

    署名を提出したグループの保護者の一人は、「少しでもいいから働きたいと思っている母親たちのニーズに合う預け先がない」と指摘。待機児童が多い現状では、保育園にはフルタイム就労の人しか預けることができず、ベビーシッターに預けると料金がかさむ。子どもが幼稚園に入る年齢になるまで働くことができない人がたくさんいる、と話した。

    片山議員は、幼稚園でも預かり保育や延長保育を利用して、通常より長い時間子どもを預けている人が16万人いることを踏まえ、「個人的には、幼稚園での預かり保育についても、親の事情に関係なく保育園と同様に助成の対象にしたほうがいいのではないかと考えている。保育、教育、仕事の三位一体で考えていきたい」とも話した。

    BuzzFeed Newsは幼児教育無償化について、幼児教育無償化がもはやカオスに。本当に子どものためになる政策なの?という記事も配信しています。

    BuzzFeed JapanNews