軽くて安くて丈夫。プラスチック製品は生活のいたるところにあふれています。
レジ袋やペットボトル、使い捨て容器など、必要がなくなるとすぐに捨ててしまえるのもプラスチックの特徴です。
ポイ捨てされたプラスチックごみは、海や山を汚したり、動物が誤って食べてしまったりするなど、環境や生態系に影響を及ぼしています。
ミュージシャンの坂本美雨さんは、5歳の娘と猫との暮らしをInstagramで発信し、動物愛護活動にも長年携わっています。日々の暮らしでどのようにプラスチックと付き合っているのか、聞いてみました。
マイバッグの秘密
7月1日からレジ袋が有料化されますが、坂本さんは以前から、買い物に行くときはマイバッグを持参しているそうです。
「外出先から買い物に出かけることが多いので、持っていくのを忘れないように、小さく丸められるエコバッグを持ち歩くようにしています」
この小さな「スイカ」が、エコバッグ
しかし、自分が買い物用バッグを持参しても、なぜだかそれほど減らないプラスチックごみ。
「スーパーに買い物に行くたびに、過剰包装された商品が多いなと感じます」
アボカドなどの柔らかい果物や野菜を、まずプラスチックのネットで包み、さらに薄いビニールなどで包んで空気を含ませてあるのを見ると、「つぶれないように配慮されているのはありがたいけれど、過剰だなとも感じます」と言います。
ビールの包装が動物の首に絡まる
「プラスチックのトレーに入った肉は、ぴっちりとラップでパックされていて汁がこぼれない状態であるにも関わらず、レジでさらに薄いビニールに入れられることもあります」
そうした日常的なサービスに対して、坂本さんが「ありがたいけれど、過剰ではないか」と考える背景には、10代のときに見たショッキングな映像があったといいます。
「10代の頃はアメリカに住んでいたんですが、ビールの6個パックをつないでいるプラスチックが、ウミガメなど海の生き物の首に引っかかって取れないという映像を見て、ショックを受けたんです。それなのに、20年以上経った今もあまり変わっていないんだなと痛感します」
繰り返し使えるラップ
こうした悲劇を繰り返さないため、坂本さんはプラスチックをポイ捨てしないことはもちろん、できるだけ使わないように心がけているといいます。
「洗剤は、レフィル(詰め替え用)があるものを選んで買っています。お店に行って継ぎ足してもらうシステムもいくつかあるので利用しています。容器を持って出かけるのを忘れちゃったりすることもあるので、気をつけたいですね」
「ラップを使いすぎないように、友人が作ってくれた『みつろうラップ』を使っています」
みつろうラップとは、コットンの布にアイロンで溶かしたみつろうを染み込ませて作るもの。市販もされています。
「容器の上に乗せて保存してもいいし、野菜が残ったら包んで冷蔵庫に入れておくこともできます。すごく便利で、普通のラップを使う量がかなり減りました」
さらに、リサイクルにも気を配っているそうです。
「例えば、コンタクトレンズのケース。ワンデーなので毎日ケースのごみが出るので、ちまちまリサイクルに回しています」
日本では、年間約900万トンのプラスチックが排出され、そのうち84%が有効利用されています。プラスチック製品に再生する「マテリアルリサイクル」、原料として再利用する「ケミカルリサイクル」のほか、燃やしたときに出る熱を回収して利用する「サーマルリサイクル」も有効利用法の一つとなっています。
「家庭でのリサイクルへの取り組みはかなり浸透してきたと思うのですが、実際にどのくらいのプラスチックごみがリサイクルされて何に再生されているのかまでを追うすべがないので、再利用の実感につながらないのかもしれませんね」
「自分の行動が地球に影響する」
坂本さんはなぜ、地道にプラスチックを減らす工夫をしているのでしょうか。
「子どもが生まれてから、未来の対するリアリティが強くなりました。娘をこのままの地球に置いていくわけにはいかないという危機感がすごく強くなったんです」
「自分が活動できるあと20年30年のうちにどうにかしなきゃいけないと考えると、時間が足りません。子どもたちの世代にもちゃんと教えていかなければならないと思っています」
新型コロナウイルスの感染拡大の影響では、衛生面から使い捨てが重視され、再利用がしづらくなったものもあるが、意識の面では別の変化があった、と坂本さんは言います。
「個人の行動が、世界や地球とつながっているということは普段は意識しづらいものですが、新型コロナウイルスに関するSNSでの発信などを通して、自分が世界とつながっていて、世界中が同じ一つの問題と戦っているということが手に取るように伝わってきました」
「自分一人の行動によって確実に世界につながることができる、地球に影響を及ぼすことができるということを私自身もより実感したし、実感のあることとして子どもたちにも伝えていけるな、と思っています」