「山﨑賢人、高橋一生と共演する女性議員のドラマを!」 斬新すぎる高校生のアイデアが目指すもの

    男女格差の実感があまりない世代だからこそ、みんなに伝えたい。

    あまり聞き慣れない「ジェンダー・ギャップ」という言葉。男女格差のことだ。女子高校生たちに聞くと「知らなかった」「不利益は感じたことがない」という。

    だが、2016年に世界経済フォーラムの報告書で発表されたジェンダー・ギャップ指数で、日本の順位は144カ国中111位と低かった。

    本当に男女格差ってあるの? あるとしたら現状を変えられるの? 立教女学院高校(東京都)の1〜3年生の有志45人が、10代の視点でゼロから考えた。

    高校生は9チームに分かれ、6月末から夏休み期間中、チームごとに集まったりLINEで連絡を取り合ったりして、男女格差の現状を調べ、課題を分析。8月29日に資生堂汐留本社であった選考会で、解決策を提案した。日本企業として初めてUN Womenと契約を締結し、ジェンダー平等の推進リーダーとなった資生堂のプロジェクトの一環だ。

    高校生の提案は、SNSを活用したり法改正に斬りこんだりと、従来の常識を覆すレベル。男女共同参画や女性活躍に詳しい審査員たちをうならせた。

    斬新なアイデアの一部を紹介する。

    「自宅、オフィス、保育園が一体のニュータウン」

    男女の役割分担意識が根強くあることに注目したグループ。

    1)男性も女性と同じように育児や家事に参加すること。2)移動や保育園の送迎ストレスを軽減すること。3)社会の「当たり前」を変えること。この3点を目指すため、大規模なニュータウン計画を打ち出した。

    その名も「ミナチカ計画」。皆が近いという意味だ。過疎地域にある廃校などを利用して、自宅、オフィス、保育園がある複合施設をつくる。通勤や送迎にかかる時間を短縮でき、在宅勤務をしなくてもプライベートスペースのあるオフィスで集中して仕事ができる。

    「私たち学生が、家で勉強するより近所の塾の学習室や図書館を利用したほうが効率がいいのと同じです」

    「働きやすい職場を探せるアプリ」

    働く女性の約6割が第一子の出産を機に退職するというデータを見つけ、「職場でのジェンダー・ギャップについて、これまで考えたこともありませんでした」と率直に語ったグループ。

    「女性が働きやすい企業をつくろうという意識を流行らせたい」として、アプリの開発を提案。就職や転職を考えている女性を対象に、全国の中小企業の職場環境を情報提供するものだ。一部の大企業に比べ、多くの中小企業で制度が整っていないことがわかったからだ。

    育児休業の取得状況、事業所内託児所の有無、女性社員の割合、女性管理職割合などを点数化し、顔マークの数で表す。従業員は自社の情報のみアプリを購入しなくても閲覧でき、情報に誤りがあれば通報できる仕組みにする。

    「企業を評価する立場なので広告収入でのアプリ運営はしません。300円程度なら学生にも使いやすい利用料のはず」

    「女性政治家が活躍するドラマ」

    日本でジェンダー・ギャップ指数の順位が低い要因の一つに、政治に関わる女性の少なさがある。

    将来なりたい職業に「公務員」を挙げる高校生は多いのに、政治家になりたい人がほとんどいないことに気づいたグループ。ドラマ「コード・ブルー」を観て医師に憧れたという身近な例を挙げ、ドラマが職業観に影響すると指摘。政治家が主役のドラマを提案した。

    あらすじ案もある。新人女性議員が「女性が輝ける社会」を目指して奮闘する。共演する男性議員役には山﨑賢人、高橋一生、真剣佑ら。国民のために尽くすカッコいい政治家たちを描くという。

    「政治に興味を持つようになると、若い世代の投票率が上がる。女性国会議員も増えるでしょう」

    このほか「育児休業を男女交代制にすることを義務化」「働き過ぎの日本人の労働時間を一律5.5時間に」など、法制度に斬りこむアイデアもあった。

    「白馬の王子様を待たない」

    女性自身が無意識に男性に守られる立場に甘んじ、向上心がない状態にいるのでは、と指摘したグループは、高校生が企業でインターンをすることを提案。男性上司、女性上司の両方と接することによって、性別にとらわれる先入観をなくせるのでは、という。

    「彼氏とデートなう」と同じような自撮り手法で「インターンなう」をSNSで発信し、自分たちの意識が変わっていく様子を同世代に拡散したい、と意気込んだ。

    「白馬の王子様なんていない。守ってくれる男性を待ったり探したりするのではなく、女性が能力を発揮する楽しさを伝えたい」

    高校生の今、できること

    各グループは「今、自分たちにできること」も発表。「常にジェンダーの問題にアンテナをはる」「SNSなどでジェンダー・ギャップのある現状を発信する」「男の子だから、女の子だから、と言わない」「将来、活躍するために教養を身につける」などが挙げられた。

    発表内容は、課題の認識レベルや解決策の実現可能性など40点満点で、資生堂サステナビリティ戦略部の担当者らが審査した。

    最も高得点だったのは、セクシュアルマイノリティについてわかりやすく説明するハンドブックを作り、高校生が小学生にジェンダーの授業をする提案をしたグループ。「自分たちに何ができるのかが明確で、実現可能性まで見据えていた」(審査員)として評価された。

    このグループは10月14日、東京・渋谷区の国連大学であるUN Womenと資生堂の共催イベントで、解決策を提言する。立教女学院高校のほか高校4校と、名古屋大学、お茶の水女子大学、中央大学からも選抜されたグループが発表する。

    BuzzFeed JapanNews