「音楽一本で食べていく」と決心したバンドマン。その後に直面した音楽業界への“限界”

    「音楽で飯を食っていけるって、なんて幸せなんだろうって思ってました。でも、現実は違ったんです」

    『音楽だけで生きる』。多くのバンドマンが夢に見る目標を掲げ、着実に達成しつつあるバンドがいる。

    Tempalay

    新世代バンドとして、今注目されている『Tempalay』だ。

    「フジロックに出る」ことを目指して、2014年に結成されたバンドは、わずか1年後の2015年に苗場のステージに立った。

    2016年には米テキサス州オースティンで行なわれた世界最大の音楽コンベンションSXSW2016に出演。インディーズバンドとしては異例のスピード感で急成長していく。

    鳥居洋介

    Tempalayは2018年「音楽一本で食べていく」という目標を語った。

    さまざまな音楽メディアに取り上げられ、2020年には新木場STUDIO COASTでワンマンライブを開催。同年メジャーデビューも果たすなど、順調に「売れる」ゴールへと突き進んでいるように見える。

    バンドマンが「売れる」ためには何が必要で、どんなことをすべきなのか?Tempalayの3人に話を聞いた。

    Miho Arai / BuzzFeed

    左からAAAMYYY(エイミー)、小原綾斗(おはらりょうと)、John Natsuki(ジョンナツキ)。

    ーーこの3年間で、Tempalayとして「売れる」ためにしたことを教えて下さい。

    小原綾斗(以下、小原):売れるとは直結しないんですが、『Tempalay』として揺るぎないスタイルを確立したことですね。

    正直、売れるためにはどうしたらいいのか考えたりもしたんですよ。世間的にヒットしている楽曲を研究したりして。

    だけど、そうしていく中で「確実にこれが売れる」って音楽はないってことに気がついたんです。

    法則があって、それに則ったとしても結局は一過性のものになってしまう。最終的に、人の心には残らず忘れられてしまうんですよね。

    ーー確かに、一気に火が付いたものって、1年もすればもう「時代遅れ」な雰囲気がありますよね。

    小原:「売れる、売れない」は楽曲が持つ力と、それを奏でる人たちの力がどういう時代にどういうタイミングでハマるか。それでしかないと思っています。

    この3年間は自分たちの楽曲を強固にするための期間でした。そこに対して、聴いてくれる人たちの反応がどんどん広がっていったような気がします。

    ーー「楽曲を強固にする」上でしたことは?

    小原:自分のプレイスタイルを模索し、築き上げたことですね。

    あとは、メンバーに対する理解もそうです。会話ひとつにとっても、駆け引きを意識するようにしました。

    この楽曲に対して、こういう風に言ったらこういう返しがくるだろうな、とかここは任せっきりにしたほうがいいな、とか。

    Miho Arai / BuzzFeed

    ーー楽曲制作だけでなく、メンバー間でのコミュニケーションにも転機があったんですね。 Natsukiさんはどうでしたか?

    John Natsuki(以下Natsuki):今までよりも自分の意見が言いやすい雰囲気になったと感じます。「自分の意見を貫いていいんだ」と思えるようになりました。

    前は小原がデモを送ってくれるから、忖度じゃないですけど、そこに寄り添おうという気持ちがあった。

    今は「メンバーの中では自分が一番ドラムのことを考えているし、自分の意見を通したほうがいい曲になるだろう」って気持ちになりました。

    ーーかなりの心境の変化ですね。何かきっかけがあったのでしょうか?

    Natsuki:今まではスタジオに3人でこもって曲をつくることが多かったんですが、去年は新型コロナウイルスの影響で、楽曲制作を別々に行ったんです。

    一人っきりで音楽に向き合う期間が長くなったことで、自分が作るものに自信がついたのが一番大きいですね。

    スタジオだと直接その場で言いますけど、今は文面などでやり取りするので、熟考してから意見を送れるのも良かったと思います。

    Miho Arai / BuzzFeed

    ーーAAAMYYYさんはいかがでしょうか?

    AAAMYYY:私は2018年に正式加入したんですが、それ以前もサポートメンバーとしてTempalayとは関わってきました。

    ただ、サポート時代からすごく迷走していて。自分が何だかもわからずに、とりあえずガムシャラにやれることをやっていました。

    考えすぎたり、何でもオーバーにやりすぎたりしてしまって。

    必死だったんですよね。自分が思い描いた「Tempalay像」に縛られてしまっていました。

    ーー当時考えていた「Tempalay像」とは?

    AAAMYYY:なんか…ヤバい奴ら、みたいな?「これがカッコいいと思われるだろう」っていうイメージに囚われていたんです。

    だけど、私も去年コロナの影響で忙しさが全部なくなり、自分自身を見つめ直す時間があって。

    いいパフォーマンスをできてる時ってどんな時だろうって考えた時に、「どうでもいいや」って。やりたいように演奏している時が良い音を出せてるなって気づいたんです。

    イメージの自分ではなく、自身から出てくるありのままが大事なんだと思えるようになりましたね。

    Miho Arai / BuzzFeed

    ーー『フジロックに出る』など、具体的な目標を掲げ、確実に達成してきた印象があります。次に目標とすることはなんでしょうか?

    小原:本格的に海外進出をしていって、土俵を広げていきたいと考えています。

    現在の日本国内における音楽の価値って、限界があると思うんですよね。移り変わりが激しいし、今は売れていてもいつまで続くかわからないし。

    一番は「カッコいい音楽をつくること」なのに、音楽を続けていくにはどこか魂を売らないといけないような風潮を感じていて。

    ーーそのような「限界」は音楽を始めた当初から感じていたんでしょうか?

    小原:そんなことないですよ。

    フジロック出たら売れると思ってたし、メジャーデビューだってもっとすごいことだと思ってた。

    音楽で飯を食っていけるって、なんて幸せなんだろうって。

    実際今は音楽一本で生活している状態ではあるものの、売れているかと聞かれたら、そうとは言えない。いつまでこの状態でいれるかも不透明です。

    そう考えると、日本の音楽市場なんて信用できないですよね。

    だから、チーム含めみんなでこの生活を終わらせないようにするにはどうしたらいいか、考え続けています。

    伊藤元気(symphonic)

    《Tempalay》

    小原綾斗(ギター・ボーカル)、John Natsuki(ドラムス)、AAAMYYY(コーラス・シンセサイザー)の3人で構成されるロックバンド。2020年12月9日、ワーナーミュージック内レーベル『unBORDE』よりメジャーデビューを果たす。3月24日には4枚目となるフルアルバム「ゴーストアルバム」をリリースする。