セブンのチルド麺がしれっとリニューアルしてた

なぜ液体に?

ーースープがゼラチンから液体に変わった理由を教えてください。
若井さん(以下、若井):お蕎麦のつゆなどにゼラチンを加えると、風味が損なわれる原因となっていたんです。
また、今まではスープと麺が接した状態でパッケージングされていました。
それだとレンジで温める際も、液状になったスープの中で麺が再度茹でられてしまうため、食感が損なわれてしまっていました。
おそばやラーメンなどのメニューに関してはお客様から『麺のコシがない』とのご意見が多くあったんです。
ーーそんな背景が。
若井:ほうとうのように、煮込んだほうが美味しいものは別ですが、スープはゼラチン状にせず、そのままの状態で提供しようと考えました。
ですがこのやり方だと、今までのようにスープと麺を一緒にはできません。なので容器から変える必要がありました。
ーースープだけかと思っていましたが、そもそも容器が変わっていたんですね。
若井:スープと麺を分けるため、中皿を使用した容器を開発しました。
液体スープが入った容器を中皿でフタをし、その上に麺と具材を乗せたんです。

若井:新容器により、スープの風味を損ねてしまう課題、そして麺が余計な水分を吸ってしまう課題も解決できました。
しかし開発段階で、当初は予定していなかった、さらに良い効果があることに気がついたんです。
ーー良い効果?
若井:麺の美味しさをアップさせてくれるんです。
この新容器は従来の容器に比べ、より高い熱で麺を温められることが明らかになりました。
高い熱が麺に伝わることで、麺の中の眠ってしまったグルテンが復活するんです。
すると麺のコシが蘇り、茹でたてに近いような仕上がりになります。
ーーすごい、棚からぼたもちですね。
若井:スープと麺、どちらの品質も追い求めるには開発が数年がかりになると予想していたんですが、この容器のおかげで早い段階での実現が可能になりました。
難しいメニューも実現可能に

若井:新しい容器のおかげで提供できるメニューの幅も広がりました。
大きな変化として、美味しい「二八そば」がチルド麺でも作れるようになったんです。
ーーコンビニで二八そばを出すのは難しいんでしょうか。
若井:かなりハードルが高いです。
というのもそば粉はグルテンが弱く、茹でたまま置いておくとどうしてもコシが弱くなってしまうんです。
ブツブツ切れてしまったり、食感がボソボソしてしまったり。
今までもチャレンジしては失敗して…を繰り返していました。
ですが新容器だと、先ほど言った通り高い熱で麺を温められるので、グルテンが復活しそばのコシや食感が蘇るんです。

ーー容器ひとつででそんなにも変わるんですね。
若井:2020年の秋に、定番商品だった『かき揚げそば』を二八そばへリニューアルしたんです。
前年よりも売り上げが高く、『美味しくなった』との声も多くいただきました。
若井:また、品質以外の点でも良い効果がありました。
スープが液体になったことにより温まるスピードが早くなって、レンジの時間短縮になったんです。
今までは長いものだと業務用レンジで2分30秒、家庭用レンジだと7分以上かかってしまっていました。
それが新容器になって、業務用で約15〜20秒、家庭用で約1分ほど短くできました。
ーー新容器の恩恵がすごいですね。
若井:しかしながら、課題はたくさんあります。
美味しくなったけれども、まだまだ。最終目標はお店で食べるもの、出来立てと同等品質なので。
麺はより茹でたてに近づけないといけないし、スープもだし感だったり深みを出すにはどうしたらいいのか、見直しを繰り返しています。
あとは食べやすさもそうです。中皿があることにより、お客様には食べるまでに手間がかかってしまう。これをさらに簡単にできないか…。
もっともっと品質を上げるため、日々の工夫をしていきたいですね。