「ぼーん!地球上のみなさんこんにちは!K,E,M,I,O、kemioで〜す!」
YouTuber、モデルにタレント、ポッドキャストのパーソナリティ……。さまざまな舞台に立ち、同世代から圧倒的な支持を集めるkemioさん。
SNSを主戦場に活動し、総フォロワー数は570万人超え。彼の魅力はなんと言っても、そこにいるだけで見る人を元気にさせるハッピーオーラと、強いメッセージ性にある。
そんなkemioさんが4月、2冊目の著書『ウチらメンタル衛生きちんと守ってかないと普通に土還りそう』(KADOKAWA)を出版した。
前作から3年ぶりとなる本書は、自身も「本音を書きすぎて、みんな引いてしまってないかな」と語るほど、今までファンに見せてこなかった内面をさらけ出した内容となっている。
不安を抱えながらも、kemioさんが伝えたかったメッセージとは? 「自己肯定感」という言葉に感じる違和感や、人気が増したことでの葛藤……。そんな悩みをいかに乗り越えたかについて話を聞いた。
全部が全部、美化されていなくてもいい。不安を乗り越えて本音をさらけ出した
《なんかね、自分誰? って、怖くなったときがあったの。誰かが思う「kemio」に、「kemio」を寄せにいってる気がして》
《無意識に求められる自分になろうとしすぎて、誰かの声に耳を傾けすぎて、自分がわからなくなる状態》
(『ウチらメンタル衛生きちんと守ってかないと普通に土還りそう』より引用)
ーー今回、ここまで赤裸々に話そうと思ったのはなぜなんでしょうか。
この3年間で、人間全員疲れてるなって気持ちで書きました。自分自身のセラピーみたいな感じで。
なんかもう、「元気にやってこ〜!」ってのもできないくらい、私もそうだし、みんなもマジ疲れてるんじゃないかなと。
社会で起きているいろんなこととか、我慢の多い生活とか、未来の見えない生活とか…この3年間でたくさんのことがガラッと変わったじゃないですか。
だから、全部が全部美化されていなくていいやって気持ちになったんです。
ーー3年前と今回で、kemioさんの思考に変化があった印象なんですが、自身ではどう考えていますか?
自分自身、そんなに考え方が変わったとは思っていなくて。
ただ、本を書いていくプロセスの中で、「変わったのかな、自分」と気づくことがいくつかありました。
ただ正直言うと、今回の本を出すのはけっこう不安だったんです。
ーーそれはなぜですか?
ちょっと前まで、自分が一回発言したことは、きちっと守らないといけないというプレッシャーをすごく感じていたんです。
3年前、『ウチら棺桶まで永遠のランウェイ』を出した時は20代前半だったので、勢いがあったと言うか。
「私に歯向かうやつは全員倒す」みたいな、強めの口調な部分が多かったなと、今振り返ると思うんですけど。
そこから僕も歳を重ね、今年で27歳になるんです。
20代後半にさしかかって、社会で生きていく一人の人間としていろんなことを経験したり、見たり聞いたりすることが増えてきて、その中で考え方も変わっていったのかなと思いますね。
「自分を大切にする」ことは、流行りになるものではない。無理してまでポジティブじゃなくてもいい
ーー第一章の「『自己肯定感』ってちょび呪いじゃね」というワードはすごく印象的でした。
「自己肯定感」という言葉とか、「セルフラブ」とか、自分を大切にしようってムーブメントが起きている中で、違う方向に行っちゃってるんじゃないかと思ったんですよね。
人間みんなが365日自分大好きでハッピーでポジティブでいけたらいいんですけど、そんなうまい話ってないじゃないですか。
だから「自己肯定感」という言葉を、無理にでもみんなポジティブにいなきゃ!って捉えられているのって、逆にお互いが窮屈になって苦しくなっちゃうんじゃないかと感じたんです。
人それぞれつらいこととかトラウマって、そう簡単に乗り越えられるものではないじゃないですか。
そこを無視してまで自分をポジティブに見せなきゃいけないわけでもないと思うんです。
一人一人が時間をかけて、いろんなことを乗り越えて、本当の自分を愛せる形に辿り着いた時に、「自己肯定感」という言葉の本当の意味に繋がると思います。
だから、トレンドとか流行りになって、誰かを無理やりポジティブに押し込める言葉に広がらないければいいなと……。
なんていうか…皆さんに疲れているのがバレ始めたんです。
「ハッ!」って思ったコメントがあって。「kemioを黒澤健太が演じているみたいだね」って言われたんですよ。
その言葉って超当たってるし、私がまさに悩んでいることに100当てはまるなって思って。
1冊目を出版した時期は、エゴサをめちゃくちゃしていたんです。本の感想とか、動画の感想とか、いろいろな意見を見ている中で、無意識のうちにみんなが想像するkemioに、僕が寄せていっているような感覚になっていました。
今までは「自分はこうです!」「アメリカに引っ越して好きなことをやっています! 皆さんどうぞ見てください!」って、楽しくやっていたのが、徐々に徐々に、人に嫌われないように生きなきゃと感じていた小さな頃の自分に戻ってきちゃったのかもなと。
この3年の間、「居場所」や「誰かに必要とされる自分」をどこかで追い求めていて。
それを求めて“kemio”というキャラクターで活動をし続けていたら、逆に“kemio”が大きくなりすぎて、本当の自分である“黒澤健太”が小さくなっていったんじゃないかなと。
…っていうのを占い師に言われました!(汗汗)
好きで始めたことなのに、いつの間にか窮屈さを感じていた。でも、今は“執着”がなくなって吹っ切れた
ーー「黒澤健太がkemioを演じてる」って、ご自身でも思うところはあったんでしょうか。
自分ではまったく意識していなかったんですが、友達に言われるようになったりして、「確かにそうなのかも?」と考えるようになりました。
苦しいとかではないんですけど、「人間ってめちゃむず…!」とは思いました。
自分自身、別に裏表とかは一切ないとは思うんです。ただ、そのバランスってすごく難しい。
ーー「バランス」とは?
僕は自分の叶えたいこととかやりたいことがあって、この業界で仕事をしようと思って10年くらいやってきて。気づいたら自分でも想像していなかったところに行き着いている感じなんです。
長い間応援してくださる方から、「昔の方が良かった」って声をいまだに受け取ることもあって……。
昔の自分ってすごく大切な部分。いろんなことがあったし、昔があるから今の自分がいるって考えているので。悲しいなと思う一方、難しいなとも思います。
考えすぎな部分があるんです、私。
前作の『ウチら棺桶まで永遠のランウェイ』では、「誰かに相談したりアドバイスしてもらったりするのは大事だけど、結局そのフィールドで戦うのは自分」とか、「人の意見はふりかけとかスパイス程度に受け取ることにしてる」というメッセージを書いたんですけど、逆のことを自分がしてしまっているなと気づいてしまって。
だけど、そういうのも今は吹っ切れたと言うか……執着がなくなったんですよね。
ーーそれはどうしてでしょうか。
やっぱりコロナ禍の影響は大きくて。1冊目を出版した2019年は、1年間で日本とアメリカを25回以上往復したんです。マイルも貯まりまくりで超アゲ〜!って感じで。
アメリカで英語を学びつつ、日本にも帰ってきて友達や家族に会えて、お仕事ができたりとか。自分が憧れていた生活をずっと過ごせると思っていたんですよね。
だけど2020年、ニューヨークにいた時、ロックダウンで半年くらい一人で過ごした時期に、映画とかで観る世界は、現実でも全然起こるんだなと実感して。
みんなもそうだと思うんですけど、幸せな日常って永遠に続くものではないんだなと。
だから、別にそこまで長く生きることに執着しなくてもいいやって思うようになったんです。
全然長生きしたいと思うんですが、先のことは予定通りにいかない世の中になってきたので、今をもっと今以上に生きようと思い始めました。
ーー前回の出版から3年でkemioさんの周りの環境も大きく変わりましたが、次の3年間で目標を立てるとしたら?
次の3年間で、なんですかねえ……。
でも、3年って言ったら、30歳になってるんですよ! 超アガるくないですか?
この数年、毎日のスピードがめちゃくちゃ速く感じるんです。自分のやってることもいっぱいあるし、大人になって責任も増えてきたし…。
友達と遊んだりとか、いろんな生活をしてて毎日すごく幸せなんですけど、一回スローダウンしてみるのもありかなって。
なんでも表面だけ足を踏み入れるんじゃなくて、一つひとつのことに感謝しながら生活をしていきたいですね。趣味とかも増やしてみたい。
……って、マジ発言がめっちゃ暗いんですけど…! 自分で言っててびっくりした!
ただ、それは本当に時の流れで。まだまだ忙しかったらラッキーですし。自分の好きなように、適当に生きたいなと思います!