おいしいスイーツが手頃な価格で楽しめることで大人気のシャトレーゼ。
お財布がさみしいときでも、いつも私たちの味方をしてくれますが…なんと2021年の12月、多くの高級店が立ち並ぶことで有名な西麻布にお店をオープンしたんです!
シャトレーゼは郊外に大型店舗を構えているイメージが強かったので、新店舗に都会のど真ん中を選ぶなんて意外すぎて驚き…!
今まで郊外中心の戦略をとってきた中、なぜ今回、新規出店場所に西麻布を選んだのでしょうか。
また、新業態である高級路線の「YATSUDOKI」ではなく、あえて高コスパがウリの「シャトレーゼ」で勝負しようと思ったねらいとは。
営業担当役員の中澤欧二さんにお話を伺いました。
あえて「おいしいのに安い」で差別化をねらう
ーー今回、なぜ西麻布に出店しようと考えたのでしょうか?
西麻布は、駅近というわけでも、人の通りが活発というわけでもありませんが、周りにスイーツの有名店や高級なお菓子屋さんが数多く並んでいるエリアです。
そのため、一度お客さま方に支持をいただければ、シャトレーゼにとってものすごい強みになると思ったんです。
ーー2019年に新業態として登場し、今や全国に25店舗を展開するプレミアムラインの「YATSUDOKI」も人気ですよね。なぜ高級住宅地の西麻布で、あえて高コスパがウリのシャトレーゼを選んだのでしょうか?
シャトレーゼは今まで、郊外中心の戦略をとってきて、店舗も駐車場付きの大型店が中心でした。
そのため、都市部へ参入していくとなると今までのモデルを変える必要があり、その一つとして開始したのがプレミアムラインの「YATSUDOKI」です。
西麻布のエリアでどのようなお店ならば差別化できるだろうかと考えたところ、「YATSUDOKI」のようにプレミアムさをウリにしているようなお店はすでに多いので、埋もれてしまうのではないかと。
逆に、「シャトレーゼ」のように気軽に買えるお手頃価格のお菓子屋さんって、あのエリアでは意外とないのではないかと分析しました。
郊外の大型店のようには場所が取れないので、「ミニシャトレーゼ」というコンセプトでお店づくりをすることに決めたんです。
ーー高級店が多いからこそ、お手頃価格のスイーツで差別化を狙ったんですね。
あともう一つ、シャトレーゼの強みとして「品揃えが多い」というのもポイントです。
洋菓子や和菓子だけでなく、アイスクリームやワイン、冷凍食品と、400種類以上の商品があるため、お客さまの反応を見ながらお店のラインナップを変えたりと、飽きさせない売場づくりができるんです。
「YATSUDOKI」の場合は商品数に限りがあるため、なかなかそうはできませんから。
西麻布店に関しては大々的なリリースはしていなかったのですが、SNSなどで情報を見たお客様たちが来てくださって、オープン後からとても反応がいいんです。
来店されるお客様としては40代くらいのお子様連れの主婦の方、あとは仕事帰りと見られる男性が多い傾向です。
ーー勝手なイメージですが、 西麻布付近に住むような所得の高い方々って、食べ物も高いものを好むものだと思っていました。
そのようなお客様たちにも「素材にこだわった良い商品を、お手頃な価格で」というシャトレーゼのコンセプトが受け入れられているのではないかと考えています。
ーーただ、いままでシャトレーゼが出店してこなかったようなエリアだから、オープンまではプレッシャーもあったのでは。
社風というか、会長である齊藤寛のの考え方として「失敗を恐れてチャレンジしないことのほうがよくないこと」というのがあるんです。
もし今回が上手くいかなかったとしても、それはそれで次に活かせばいいので。
だから「絶対に成功しなければならない」というプレッシャーはありませんでした。
「つくりたて」をアピールし、購買意欲をそそる
ーー西麻布店ならではのポイントを教えて下さい。
大きめの工房を構えているので、アップルパイやクッキー、フィナンシェなど「焼きたて工房」シリーズのお菓子を焼いている様子を外からも眺められることですね。
「焼きたて工房」シリーズは、どの店舗でもお店で焼きたてのものを提供しているんですが、外を歩いている方にも見えるように構えている工房は、西麻布店のポイントです。
そのため西麻布店は他の店舗よりもアップルパイの売上が3倍ほど多いんですよ。
ーー3倍も。他に西麻布店でよく売れている商品はありますか?
あとは和菓子がとても人気ですね。
当初の狙い通り、周りに高級な和菓子店はあるものの、お家で手軽に食べるようなものが買える場所が意外になかったのが理由ではないかと考えています。
ーー売り場づくりにおいての狙いを教えて下さい。
お客さまにシャトレーゼのブランドが浸透するまでは、比較的SNSなどでも話題になるような人気商品を並べています。
「チョコバッキー」や「北海道産バターどらやき」、「ダブルシュークリーム」など、定番のスイーツなどがそうです。
逆に最初の期間は、デコレーションケーキや季節商品、ギフトなどの高額な商品はあまり売れない傾向にあるため、ラインナップを絞っています。
西麻布店の認知度が高まってきたら、ホールケーキなどのバリエーションも増やす予定です。
また、シャトレーゼのデコレーションケーキは工場から届いたものをそのまま出すのではなく、お店で仕上げて売り場に並べるものが多くあります。
工房を活用して、仕上げの様子をお見せすることで、お客様に満足していただけるのではないかと考えています。
業績が右肩上がりになったコロナ禍。数々の失敗と、今後の挑戦
ーーコロナ禍の「お家時間」需要により、2020年度の「YATSUDOKI」も含めた全店舗の売上は前年度に比べて160億円も伸ばしたそうですが、2021年度はいかがでしたか?
売上進捗はさらに伸びまして、昨年より2割以上は増える見込みです。
また、新店舗の数もかなり増え、2021年度では80のお店をオープンさせました。
ーーその中で新たな気付きなどはありましたか?
今や全国レベルに展開している「YATSUDOKI」ですが、一番最初に店舗を構えた銀座、表参道ではあまりうまくいかなかったんです。
その後、住宅地に近いところに出店をしたら、持ち帰りに利用してくださる固定のお客様がついて、軌道に乗り始めました。
そのため、銀座や表参道などの純粋な商業地ではなく、住宅地の周りや、商業地と住宅地が一緒になったようなエリアだと相性がいい傾向にあるという学びを得ましたね。
ーー今年はどんなことにチャレンジしていくのでしょうか。
もうすでにオープンしているんですが、山梨県・甲府に新しくできた「シャトレーゼマルシェ 」はシャトレーゼのまた新たな業態としてスタートしました。
このお店では今までのシャトレーゼではあまりなかった、「つくりたてをお店で食べる」というスタイルを楽しめるんです。
大人気のアップルパイはもちろん、お客様の目の前で蒸して焼いたみたらし団子やどら焼きなど、できたての美味しさをお客様にご提供しています。
ここではシャトレーゼの全商品に加え、グループ会社の和菓子店「亀屋万年堂」や運営しているホテルで出しているカレーなどを取り扱っていて、お店の名前の通り、いろんな商品が集まった「マルシェ」がコンセプトになっています。
こうした、お店で買ったものを店内で食べられる「カフェスタイル」や、他の業態のお店の商品が集まった「マルシェスタイル」は今後発展させていきたいと考えていますので、楽しみにしていただければと思っています。