「ポストTwitter」とも期待される分散型SNS「Mastodon」(マストドン)。誰でもインスタンス(サーバ)を作れるのが特徴のこのサービスで、4月14日、ピクシブが「Pawoo」の運営をはじめた。
他のインスタンスはほとんど、個人の管理するもの。いち早く企業として参入し、サービスを立ち上げたピクシブの狙いは?
そもそも、マストドンって何?
「Mastodon」(マストドン)とは、ドイツの24歳のエンジニアが開発した分散型のSNS。文字数制限はTwitterよりも長い500文字で、画像や動画も投稿可能だ。
大きな特徴は、登録時にインスタンスと呼ばれるサーバを選択し、“所属”を決める必要があること。世界中で数百のインスタンスがすでに立ち上がっている。
数万人規模のユーザーを抱える日本最大のインスタンス「mstdn.jp」をはじめ、個人や有志による管理運用がほとんどだ。
文化が生まれる予感に“使命感”
「新しいムーブメントが生まれそうなのに、多くの人がその価値に気づく前に消えてしまったら……。もしそうなったらもったいない、なんとか食い止めなければ、という使命感でした」
「Pawoo」(パウー)を立ち上げたピクシブのリードエンジニア・プロダクトマネージャーの清水智雄さんは、BuzzFeed Newsの取材にそう答える。
清水さん自身も、数日前にWebの記事でこのサービスの存在を知り「衝撃を受けた」という。
「まずは、マストドンの完成度の高さ、必要な機能がしっかりと実装されていることに驚きました」
「本文を読む前にワンクッションおける『CW』(コンテンツワーニング)や、閲覧注意を促せる『NSFW』(=Not Safe For Work、職場では危ない)など公開範囲の設定機能も絶妙な落とし込みで、作者のセンスを感じます」
「何より、分散型のSNSの思想と構造に一番の魅力を感じました。インスタンスごとに文化圏のようなものが誕生する可能性もあるのでは? と、新しい価値が生まれる予感にわくわくしました」
しかし、現状では、多くのインスタンスが個人や有志によるボランティア的な運用。Mastodonの仕様と構成は「かなり富豪的」(清水さん)で運用の負荷は比較的高く、早期に終了するケースも考えられる。
このサービスの可能性や魅力が正しく伝わらないまま終わってしまうのでは……。そんな焦りから、しっかりしたインフラを用意し、企業として提供できないかを会社に提案したという。
現場の声を聞いた伊藤浩樹社長も「僕らがやらない手はない、クリエイターの創作活動とコミュニケーションを支援できる場になるかもしれない」と快諾。
プロジェクトは即座にスタートし、10時間ほどの実作業で、14日(金)夜にリリースした。
Twitterの表現規制に対抗?
ユーザーの反応では「Twitterでは性的な表現への規制が厳しく、絵師のアカウントが凍結されることも少なくない。その対抗策?」とピクシブ側の意図を推測する意見も見られた。
実際はどうなのだろうか?
「直接的にそれだけではありませんが、性的なイラストやネタバレなどの閲覧範囲を細かく設定できる意味でも、相性はよいと思います」
「インスタンスは、特定の『クラスタ』として機能するポテンシャルを持っています。近しい人が集まる場を作ることで、創作活動やそれに関するコミュニケーションをもっと活発にしたい気持ちが最も強いです」
「お絵かきクラスタ向け、作曲家向けなど、所属インスタンスごとに“文化”が生まれたら面白いですよね! Twitterとは違うコミュニケーション基盤、新しい世界になりえるのではないかと期待しています」
「この火が消えないうちに」
今後、ピクシブのように企業で運営するケースは出てくるだろうか?
「インスタンスごとのローカルタイムラインの一体感はとても面白いので、求めるユーザーも増えると思いますし、それに応えようとする企業も出てくると思います」
「どこよりも先にやりたい気持ちもありましたが、それよりも、この火が消えないうちにどうにかしたい、という思いでしたね」
14日夜に公開し、15日11時半にはユーザー数が1万人を超えた。「ある程度までスケールアウトできるようにしたので、数万人単位でまだまだ受け入れられます」。
この週末にまだまだ盛り上がりそうな、マストドン旋風。一過性のものに留まるか、新たな文化圏が生まれるのか――注目が集まる。
UPDATE
Pawoo上のPixivアカウントの18時半頃の投稿によると、現在「Pawoo.net」自体が海外の一部のインスタンスから「国交断絶」されているようだ。要因は、性的なコンテンツの多さと見られる。