Perfumeの3人が主演するスペシャルドラマ「パンセ」(テレビ東京系)が3月31日、4月1日の2夜連続で放送されます。
普段はアーティストとして活動するPerfumeが3人そろって女優デビューとあって、ファンのあいだのみならず話題に。憧れの洋館に一緒に住むことになった、小学校の頃からの仲良し3人組を演じます。
脚本はTVドラマ「すいか」「野ブタ。をプロデュース」などを手がけてきた木皿泉さん。Perfumeの出演が決まってから、彼女たち3人の個性を踏まえて、ドラマを作り上げました。
「甘すぎるのも違うし、リアル過ぎるのも違うし、夢みたいだけど実感があるというか。Perfumeにしかできないものをと思って書きました」(木皿さん)
このスペシャルな企画が生まれるまで、そして“奇跡のキャスティング”の裏側を阿部真士プロデューサーに聞きました。
誰か一人ではなく、3人が主役
――「パンセ」、予告映像だけでとっても楽しみです! この豪華な企画、どのように生まれたのでしょうか。
共同テレビの後藤さん(監督&プロデューサー)と、時々会っては企画の話をしていたのですが、台湾映画「あの頃、君を追いかけた」(2011年公開)を2人とも気に入って「ああいうテイストの青春ドラマはどうだろう」という話になりました。
と同時に、これまた2人して大好きな木皿さんに脚本を書いてもらったらどうだろう、と。
企画って、その時々で自分の興味のベクトルも変わりますし、編成的に通りやすいもの、視聴者的にウケるもの、などなど刻一刻と状況は変化していきます。それでも「この人の描く世界観が好き」というのは変わりようがありません。
木皿さんに青春の傷跡を感じさせられるような女の子3人の話を書いてもらおうと、「スカート(仮)」というタイトルの企画書を携え、木皿さんのお住まいの神戸におうかがいして……振り返ると、もう2年半以上前ですね。
「今の視聴者は“仲の良さ”に敏感です」
――何より驚きは「主演・Perfume」です。彼女たちをキャスティングした理由は?
女の子3人の話ですから「主演を一人決めるのではなく、最初から3人組のグループでいいんじゃないか」と思い浮かんだからですね。
今の視聴者は画面を通して溢れ出てくる“仲の良さ”に敏感です。Perfumeさんのライブを見ればわかりますが、本当に仲が良く、息もピッタリ。誰か一人ではなく、3人が主役。それがPerfumeさんです。
このアイデアを思いついた時に、「この企画は行ける!」と思って、すぐに後藤さんにLINEしました(笑)。後藤さんもビックリしていました。
――なるほど。あの、実は、阿部プロデューサーがPerfumeのファンだったのかしら、と思っていました。
……それもあります、ファンでなければ思いつかないでしょう、このキャスティングは!(笑)
ただ、昔からそうなのですが、俳優さんでもタレントさんでもアーティストさんでも、誰かに惚れ込んでハマってしまうということが僕はできないのです。大好きだけど、一歩引いている。だからPerfumeさんもキャスティングできたのかもしれません。
大好きすぎたり、愛しすぎたりすると、それを壊したくないという心理が働きますよね。そんな冒険しないで! という気持ちになると思いますが、僕の場合は、もっと新しい側面を見せてほしい、絶対見せられるはずだから! という気持ちになります。
「ここ数年で一番」の口説き落とし
――メンバーのコメントを見ると、かなり時間をかけて「口説き落とした」ようですが、どんなお気持ちで打診されていたのでしょうか。
若いころレッスンを受けていたと言っても、演技を急にやるなんてその道のプロの方に申し訳ないし、自信ないし…1年にもわたる口説き落としでした(笑)。 粘り強い!!阿部さんと後藤さんに感謝です。(あ〜ちゃんのコメントより)
企画には絶対の自信があったので、「絶対に面白いものになります!」という本気をぶつけました。ここ数年で一番、一生懸命話しましたね(笑)。ケーキを持参して。
――撮影現場で見たPerfumeの意外な一面はありますか?
3人とも本当に礼儀正しい! 撮影が終わって帰るときには「お疲れ様でした!」とお辞儀をして車に乗り込み、さらに車の中から一生懸命に手を振ってくれます(笑)。
リアルな女性像、脚本との“化学反応”
――木皿泉さんの脚本の魅力は? 惚れ込んだポイントを教えてください。
今のドラマって、いろいろ説明しがちなんです。だから、誰が見ても感じ方がほぼ一緒。
本来であれば同じ物語を見ても、見る人の経験値や性別・年齢なんかで感想も変われば、刺さる台詞や感動するポイントなんかは違うはずなんですよね。
木皿さんの脚本には余白があります。見ている人が想像を膨らませる余白。台詞と台詞の間に込められた機微に想いを馳せることができるんです。
多少わかりにくくても、ひとつの台詞について、ずっと考える。自分の中の理解が深まるまで沈殿させておく。ある瞬間に「ああ、あの台詞の意味はこういうことだったのか!」と気づく。
そういう体験をさせてくれるのが、木皿さんのシナリオです。大好きな山田太一さんにも通じる魅力です。
――ドラマの見どころは? あらすじだけではどんな話なのかいい意味で想像がつかず、わくわくしています。
一般的に、27~28歳頃の女性は人生に迷いがちな難しい時期だと思います。
仕事でも恋愛でもそれなりに経験を積んできて、そろそろ結婚や、その先にある出産について考えないといけない。でも、なかなか踏み出せない。まだ青春の延長線上にいたい。30歳目前だけど、30歳ではないというプライドを持っている。
そんな女性3人が、漠然と生きていた日常から一歩踏み出して冒険したときに、いったい何が起こるのか。
何も起こらないかもしれないし、起こるかもしれない。一歩踏み出すと、傷つくかもしれないけど、その勇気を持たないと何も変わらない……そんなことを、3人の姿を通して感じていただければと思っています。
――「まずはひっそりと、テレビ東京だけで放送しますが」の言葉が気になります。「女優・Perfume」の今後の展開はあるのでしょうか…?
当初はテレビ東京だけの放送予定でしたが、お陰様で系列局での放送もほぼ決まっています。なので、すでに「ひっそり」ではありません!
ただ、僕の気持ちの中ではこれだけで終わらせたくない。 プロデューサーとしては、まだまだやってほしいと思っています……とだけ言っておきます!