ジャニーズファンクラブ規約は「不適切」消費者団体が改善要求 きっかけはSMAPファンの声

    具体的に「消費者の不利益」になりえる問題点と、今後の展望を聞きました。

    NPO法人「消費者被害防止ネットワーク東海」が、ジャニーズタレントのファンクラブを運営する「ジャニーズファミリークラブ(JFC)」に対し、会員規約の変更を求める申し入れを送付した。

    規約の一方的な変更、年会費の不返還など、消費者の不利益につながる可能性のある条項を指摘し、改善を求めている。

    申し入れのきっかけになったのは「会費を払っているメリットが見えない」というSMAPファンからの相談だった。

    改善を求めているのは3点

    ジャニーズファミリークラブは、SMAP、嵐、TOKIOなど、ジャニーズ事務所の所属タレントの15グループのファンクラブを運営している。

    入会金は1000円、年会費は4000円で、特典には会報の発行やコンサートチケットの優先申し込みなどがある。

    今回、消費者契約法に抵触しうるとして指摘されたのは、各ファンクラブ共通の「会員規約」だ。

    具体的には、以下の3点の修正を求めている。

    第2条

    4.JFCは、本規約を予告なく改訂することがあります。改訂された本規約については、JFCより告知されるものとし閲覧可能となった時点から効力を有するものとします。

    →「閲覧可能となった時点から」が不当。告知が必要ない場合もあるが、会員の不利益になりえる規約変更であれば、インターネットなどを通じて事前に通知すべき。

    第4条

    2.強制的な会員資格の抹消

    以下の項目に該当する場合、会員は催告無く即時に会員の地位や一切の権利・債権を自動的に失うものとします。

    (1)(2)略

    (3)会員もしくは入会申込をした者が、各条件を満たしている場合でも、会員を退会処分とする場合があります。

    3.・・・退会処分とされた会員は、損害賠償請求等の一切の権利行使ができません

    第5条

    1.「タレント」およびジャニーズ事務所は、タレントファンクラブのサービスに関し、いかなる責任も負わないものとします

    →「一切の権利・債権を自動的に失う」「損害賠償等の一切の権利行使ができません」が不当。事業者側の事情で会員を強制退会とする場合、損害賠償などを求める権利を奪ってはいけない。

    第4条

    3.会員が資格を喪失した場合、理由の如何を問わず、支払済みの入会金および年会費の返還はできません。また、退会処分とされた会員は、損害賠償請求等の一切の権利行使ができません。

    →「理由の如何を問わず」が不当。事業者側の都合でファンクラブを終了する場合などは、残期間分の年会費は返金すべき。

    きっかけはSMAPファンの声

    申し入れのきっかけになったのは、ジャニーズファンの声だった。

    今年6月、愛知県の消費生活センターにSMAPのファンから「ファンクラブの会員向けの情報が事前に報道された。会費を払っているメリットが見えない」という相談があった。それを元に、具体的な対応ができるか検討してほしいとセンターから同法人に要請があったという。

    当時はSMAPの解散疑惑が流れていた渦中(正式発表は8月)。SMAPのファンクラブ会報に書かれたファンに向けたメッセージの内容が、会員の手元に届く前に“漏洩”し、マスコミ各社が先んじて報道した一件があった。

    Twitterで当時のツイートを検索すると、実際に「消費者センターに相談した」という報告も見られる。

    会報が薄くてもまあ正直想定内だったけども、ネットニュースにして一般開示されたとなると、 4000円出して購入している私の会員としての、権利と利益を著しく侵害されたと感じるので、 この件については、消費者センターに相談させて頂く #ジャニーズ事務所 #SMAP_FC会報漏洩問題

    消費者契約法では『企業側が故意に契約違反をした場合、損害賠償の「免責条項」(「一切責任を負わない」という文)は無効になる』みたいだから、今回のは相当罪が重いことなんだね。 普通に消費者センターで相談する内容なんだな、やっぱり #SMAP_FC会報漏洩問題 #ジャニーズ事務所

    ジャニーズファミリークラブの会員規約では、以下のように定めている。

    第3条(禁止事項)

    9.JFCから会員へ告知する全ての媒体上の情報を他のあらゆる媒体に転載することや、会員以外の第三者に漏洩すること。

    条項を見る限り、事業者自らが規約に反した行動をしたと捉えることもできる。該当の規約が事前に変更されていればこの限りではないが、その場合は「消費者保護の観点で不利益にあたる」ため、事前の通告が望ましい。

    相談者の声を元に、規約の一方的な変更を防ぐことを中心に指摘をまとめ、10月18日付でジャニーズファミリークラブに申入書を送付した。

    「十分検討された規約ではない」

    「消費者被害防止ネットワーク東海」は今年3月に宝塚歌劇団のファンクラブ「宝塚友の会」に会員規約の改善を申し入れ、数カ月後に改訂に至った実績がある

    これまでさまざまな利用規約や会員規約を精査してきた立場から見て、ジャニーズファミリークラブの会員規約はどう見えるのか

    BuzzFeed Newsの取材に、野澤厚美事務局長はこう話す。

    「何と比較するかは難しいですが、一見して十分検討された規約ではないと感じました」

    「少なくとも、消費者契約法を遵守すべく、照らし合わせて作られたものではないように思います」

    合わせて、「不動産やイベント運営などの業種と異なり、業界全体で統一されたポリシーや指針を用意していないようだ」と、エンターテインメントやファンクラブ運営の分野では各社ばらばらの対応になっていることも指摘する。

    今後の対応は

    期限として定めていた11月18日にジャニーズファミリークラブからFAXで届いた回答書は「期限を猶予してほしい」という内容で、改善要請に対する直接の返答はなかった。野澤事務局長は「1カ月をめどに追加の回答を待つ」という。

    今後は、追って送られるはずの内容を見て、やりとりを続ける。これまでの実績では、協議に必要な時間は平均して1年程度。長い場合は2〜3年を要することもあるそうだ。

    「消費者被害防止ネットワーク東海」は、政府が定める適格消費者団体のひとつだ。不当な契約や商取引に対し、差止請求訴訟をできる権利を持つ。

    申し入れした企業が修正・変更を拒否した場合などは、訴訟に至る可能性もある。2007年から2013年までの6年間で、全国で30件が法廷で争われている。

    今回の件に関しては、現段階では書面でのやりとりで改善を目指す。経過は、都度Webサイト上で報告していく。

    追記(2016年12月16日)

    12月9日付けでジャニーズファミリークラブ側から回答書が届いたことを、同団体が公式サイトで公表した。「現在、内容を精査中。申し入れを継続するか終了するかを含め、今後の対応は追って報告する」という。