わたしの「ふつう」とあなたの「ふつう」は違う――人権問題を漫画で表現、込めた思いは

    その「ふつう」、誰が決めたの?

    “わたしの「ふつう」と、あなたの「ふつう」はちがう。それを、わたしたちの「ふつう」にしよう。”

    愛知県の人権啓発ポスターが「いい言葉」「内容も具体的でわかりやすい」とネットで話題を集めています。

    高齢者や障害者、性的少数者などの立場の人権問題を漫画で表現。大橋裕之さんの絵も好評です。

    ポスターに込めたメッセージは? BuzzFeed Newsは、制作者に話を聞きました。

    当たり前のことを当たり前に

    ポスターは、12月の人権週間に合わせ、愛知県の人権推進室が制作したもの。毎年7種類のポスターを作成しており、今年もコンペ形式でアイデアを募りました。

    漫画でさまざまな課題をわかりやすく表現していること、キャッチコピーが印象的でメッセージ性があることから、今回の案に決まったそうです。

    「気をつけたのは、押し付けず、身近に感じてもらうこと。あくまで啓発であることを念頭に、当たり前のことを当たり前に、シンプルに伝えたいと考えました」

    ポスターを制作した中日アド企画の岩田真実さんはコンセプトをそう話します。

    例えば「女性の人権問題」のテーマは「固定概念」。

    「家事をするのはお母さん」という価値観に「誰が決めたの?」と子どもが問うことで家族が変わります。

    「お父さんだけが悪いわけではなく、お母さん自身もなんとなく“そういうもの”と思い込んでいるのがポイント。自分の中にある固定概念に気付いて、疑問を持つことから解決できるものがあるんじゃないかという思いを込めました」

    「性的少数者の人権問題」は、女の子の「告白」に対し、同性愛者であることを「告白」するストーリーになっています。

    一橋大学の学生が同性愛を暴露されて自殺した事件も念頭にあり、受け入れる側の視点を描きたいと考えたそうです。

    「すべてに共通しているのは、具体的な例から、受け取り方や考え方の一つの可能性を提案していること。『こんなきれいごとあるわけない』ではなく身近に感じてほしい」

    人権問題は日常の中に

    漫画で表現することを提案したのは、デザイン担当のTHISIS(NOT)MAGAZINEの武部敬俊さん。イラストは「シティライツ」などで知られる漫画家・大橋裕之さんが描いている。

    「『えっ、それも人権問題になるんだ』と気づいてほしい、日常に埋もれた人権問題を表現したいというオーダーをもらった時、大橋さんの絵が思い浮かびました」

    シリアスすぎず、少しゆるいテイストの絵で親しみやすい。

    「駅貼りポスターを立ち止まって読み込んでくださっている方もいるようで……広告やポスターでなかなかそんなこと、ないですよね」

    県外からも問い合わせが

    人権週間に先駆け22日から金山駅で掲示を始め、ネットでも大きな反響を呼んでいます。

    県の担当者は「話題になっていることは24日に知った。転載したい、掲示したいという問い合わせも複数きている」と反響の大きさを話します。

    ポスターは、12月5〜11日に愛知県内のJRや名鉄の駅に掲示する予定です。

    ポスターは全7種類