女子高生探偵=「黒髪、ニーハイ、ミニスカ」? 翻訳小説の表紙はどう決まる

    原書と日本語版でイメージが違うもの、結構ありますよね。

    “女子高生探偵”から連想するイメージは「黒髪、ニーハイ、ミニスカ」?

    翻訳推理小説「女子高生探偵 シャーロット・ホームズの冒険」(竹書房)の表紙イラストが議論を呼んでいる。

    インバネスコートと鹿撃ち帽を身に着けた黒髪の少女が、同作の主人公。シャーロック・ホームズから5代目となる探偵シャーロット・ホームズだ。

    米国で発売したティーン向け小説の翻訳版として、8月31日に上下巻で発売した同書。

    日本語版の表紙では、女子高生探偵の肩書きを表すべく、黒髪のロングヘアにミニスカート、ニーハイソックスを着用している。このイラストに「原作のイメージを損ないかねない」という批判が上がった。


    批判の大きな理由の1つがその容姿だ。

    作中では、シャーロットは意図的にスカートではなくパンツの制服を選んでいる描写がある。「ミニスカ、ニーハイ」の造形は原作者の意図と異なる表現になっているのでは? という指摘だ。

    確かに、原書“A STUDY IN CHARLOTTE”のトレーラー映像を見ると、シャーロットは通常の女子学生の制服ではなく、パンツスタイルで登場しているのが分かる。

    原書の表紙ではシャーロット自身でなく、作中に出てくるモチーフがシルエットで描かれている。

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    原作者の反応は

    作者のブリタニー・カヴァッラーロさんは9月2日、自身のTwitterで日本版の発売にあたって、表紙を収めた写真をポジティブな文面で投稿。

    You guys. Look at this A STUDY IN CHARLOTTE edition. The robe! the suspenders!

    ファンとのやりとりの中でも「シャーロットがアニメになったら、と夢見ています」などと発言しており、投稿を見る限りでは、苦言を呈したり、抵抗を示したりする様子は感じられない。


    9月18日、日本の読者のあいだで騒動になっていることを知ったカヴァッラーロさんは、あらためて以下のようにコメントした

    「議論の細かいニュアンスを汲み取るのは難しいが、翻訳者の友人の協力を得てトライしている」

    「はっきりしておきたいのは、私はフェミニストであり、この作品をフェミニスト小説として書いたこと。米国でも日本でも変わらず、フェミニストたちを絶対的に支持する」

    「日本で発売してくれた出版社には感謝しているし、この議論が広がった敬意を理解しようとしているところ」

    I do want to make one thing clear though: I'm a feminist, and I intended A SUDY IN CHARLOTTE in all its iterations to be a feminist novel.

    出版社側の意図は

    表紙イラストを手がけているのはドラマ化もされた漫画「ラーメン大好き小泉さん」の鳴見なるさん。

    メインとなる若い世代の読者に向け、手にとってもらいやすいよう親しみやすいイラストを使っていると考えられる。

    竹書房はBuzzFeed Newsの取材に対し、個別の作品についてはノーコメントとしつつ、以下のように答えた。

    「この作品に限ったわけではなく、作品の世界観を表すのに最もふさわしいと考えるイラストや写真、デザインを使って装丁を行っています。なるべく多くの皆様に手にとってもらえるよう心がけています」

    「もちろん、できあがったものについて皆様がさまざまな意見・ご感想をお持ちになることは当然のこと。反響をいただけることは大変有り難く、常に今後の編集の参考にさせていただいております」

    小説自体は「売り上げは好調で、重版を印刷中」という。

    原作者チェックはどこまで?

    海外作品の場合、個々の作品の契約内容により、原作者や権利者に翻訳版のイラストや装丁を事前に見せるかどうかは異なる。承諾を得ないケースも決して珍しいことではない。

    本文についても「大幅な改変なく原作になるべく忠実に」という契約になることが多いようだ。

    作者が日本アニメのファンだと……

    SFジャンルでは、原書の重厚な雰囲気の装丁が、アニメや漫画風に変わることはしばしばあり、時たま話題になっている。

    例えば、米国のSF作家ウェン・スペンサーの小説「ようこそ女たちの王国へ」。日本語版の表紙では、女性キャラクターが複数描かれている。

    この作品の原題は、“A Brother's Price”(男兄弟の価値)。タイトルだけでも受けるイメージがまったく違う。

    表紙も、男性のヒーロー性を訴えるようなビジュアルだ。

    こちらの場合は、作者が日本アニメのファンを公言していたという経緯があり、本人は大喜びだったようだ。

    当時(2007年)のブログを見ると、その興奮の様子が垣間見れる。