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がんの治療に500万円。健康保険が使えず治療できない人がいる… 救える命を救うため、支援団体が募金を開始

在留資格のない外国人は生活に困窮していることが多く、保険が適用されないために全額実費負担となる高額な医療費を支払うことは不可能だ。支援団体は募金を呼びかけている。

卵巣がん、尿管結石、糖尿病…

早めの治療が望ましいにも関わらず、在留資格がないために命の危機に瀕する人々がいる。

在留資格のない外国人は生活に困窮していることが多く、健康保険が適用されないために全額実費負担となる高額な医療費を支払うことは不可能だ。

支援団体は6月4日、厚労省で記者会見を開き、支援を呼びかけると同時に現場の窮状を訴えた。

「外国人はお断り状態が目立ってきている」

ある女性はがんの確定診断を得ることにすら苦労した。

10箇所以上の医療機関に相談し、ようやく受診することのできた病院で卵巣がんの確定診断を受けた。

がんが進行し、腹腔内にも転移している。治療費は500万円に達する見込みだ。

ある男性は入管収容中に体調を崩し、黒い尿が出るようになった。2019年12月25日に膵炎と診断された。無料低額診療を実施している病院で治療を受けたものの、体内に胆石が残っているため引き続き治療が必要だ。

手術費用は200万円ほどかかると言われている。

別の男性は糖尿病が悪化し、現在入院している。治療には3ヶ月以上を要すると見られており、治療費は300万円から500万円程度とされている。

在留資格がないため働くことはできない。

国は生活に困窮する人々が医療にアクセスできるよう「無料低額診療制度」を整備しているが、コロナ禍で生活に困窮する人が増え、「外国人はお断り状態が目立ってきている」と北関東医療相談会の長澤正隆さんは指摘する。

北関東医療相談会では、これまでも必要な場合には医療費の支援を行ってきた。しかし、今回1000万円以上の資金が必要となったため記者会見で現場を発信し、寄付を募ることを決めたと明かした。

すでに犠牲も…これ以上増やさないために

同会の支援に携わる大澤優真さんは「困窮する仮放免者の人の話をすると、大袈裟なことを言うなと言われたり、結局はどうにかなるんでしょう?と言われる。でも、どうにもならない」と窮状を訴えた。

「仮放免者は働くことを認められていません。かといって、公的な支援もない。働けないし、支援もない。これでは生きていけません」

反貧困ネットワークなど支援団体らが5月の連休に開催した「大人食堂」には、多くの外国人が列をなした。

大澤さんは、会場を訪れた外国人が口を揃えて「お金がなくて食べるものがない」「お金がなくて治療費が払えない」「お金がなくて家賃を滞納している」と語っていたとコメント。

今年1月に末期がんの状態でホームレス生活を送っていたカメルーン人女性が亡くなったことに言及し、日本の入管制度による「犠牲者をこれ以上出してはいけない」と呼びかけた。

「在留資格があろうがなかろうが、治療を受けられない理由にはなりません」

3月には、スリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさんが名古屋の入管施設に収容されている中で亡くなった。

弁護士の髙橋済さんはウィシュマさんだけでなく、「入管施設の内外で多くの在留資格を持たない人々が十分な医療を受けられていない」と問題提起する。

「在留資格のない方々は、同じ社会で暮らしているにもかからわず、十分な医療を受けられず、保険に入れず、病院で治療を受けようとすると100%どころか200%の金額を請求されるケースも存在します」

報道陣からはがんを患っている女性や尿管結石を患っている男性がなぜ入管施設へ収容されたのか、理由を問う質問も上がった。

髙橋さんは、こうした質問に「犯罪をやっていないかなど、こうした記者会見では前提を聞かれることが多い」と述べた上で、「仮に犯罪に関わっていたとしても、命の重さに影響するのか。私としてはそうした考え方に与したくはない」とし、収容理由について答えることはなかった。

医療の問題は命に関わる。こうした問題について、犯罪歴や在留資格は関係ないと強調した。

「在留資格があろうがなかろうが、治療を受けられない理由にはなりません。今日はそれを一番伝えたい」

支援団体は以下の口座で募金を募っている。

ゆうちょ銀行 当座預金:アミーゴ・北関東医療相談会
記号:00150-9-374623
(通信欄には「仮放免者への寄付」と記入)