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「不都合な真実が隠されたままになっている」都立高入試、このままでいいの? 教師らが問いかける理由

東京都立高校での男女別定員制の撤廃などを求める3万筆のオンライン署名が都に提出されました。

男女別定員制により、女子受験生が不利になってしまう東京都立高校の入試の現状に、反対の声があがっている。

5月末に立ち上がった、男女別定員制の撤廃などを求めるオンライン署名には、3万筆以上が集まった。

教育関係者らでつくる「東京ジェンダー平等研究会」は8月5日、署名と要望書を東京都に提出した。

賛同人の大学教授は提出後に都庁で会見し、「男女別の合格最低点が開示されておらず、“不都合な真実“が隠されたままになっている」と訴えた。

「“不都合な真実”が隠されたままになっている」とは、どういう状況なのか。

東京都立高校の全日制普通科では、男女の生徒数がほぼ同数になるような男女別定員制をとっている。

結果として、多くの学校で男子生徒より女子生徒の方が合格ラインが高くなり、女子に不利な状況が生まれている。

しかし、実際には受験生たちには男女別の合格最低点が示されていない。性別を理由に不合格になっていたとしても、本人には分からない仕組みだ。

署名サイトでは、こう指摘している。

《予備校等が発表している合格基準点をみると、男女で40点以上違う学校がある一方、男子の基準が女子より高い学校はありません》

《男子と同じ点数を取っても、女子であるというただそれだけの理由で不合格になる中学生が存在しているのです》

賛同人で東海大学教養学部国際学科教授の小貫大輔さんは、会見で次のように話した。

「誰かが自分の不利な立場を受け入れないといけない仕組みです。隠し事のようにして、なんとなく続いてきている政策というのは現代的でないと思います。“不都合な真実”なので、できれば皆に考えてほしくない、議論してほしくないという形になっています」

「(入試は)一人の個人にとっては人生の一大事なんです。自分の点数は開示されていても、自分が受けた試験で、男子生徒と女子生徒との合格最低点数にどれだけの差があったかということもわからないのです」

小貫さんは「男女別の合格最低点を開示するということは絶対に必要なことだと思います」「そうしないと、議論が始まらず、検討も始まりません」と指摘した。

小池百合子・東京都知事と教育庁都立学校教育部高等学校教育課長に宛てられた要望書では、都立高校入試において男女別定員を撤廃することを求めている。

しかし、「即時の撤廃は受験生にとって大きな影響があることが考えられる」として、撤廃に向けた段階的措置として、以下の4点を提案した。

・男女別定員を存置する根拠を示すこと

・男女枠緩和実施校数と緩和枠割合の増大

・入学者選抜の得点本人開示に、合格最低点を示すこと

・入学願書の性別欄を廃止すること

「男女枠緩和実施校」とは、都立高のうち、男女での合格点に著しい格差が出ないように緩和措置をとっている約40校を指す。

これらの緩和実施校では、受験者の9割を男女別の成績順で選んだ後、残りの1割を男女合同の成績順で合否判定している。

署名や要望書では段階的な対応として、緩和実施校を約40校から拡大し、男女合同で選ぶ割合も現状の1割からさらに広げていくことを求めている。

都立高校の教員で署名の発起人の島田庸さん(仮名)は男女別定員制の存在意義に疑問を呈する。

「男女別定員制は戦後、元々の男子校に女子の枠を増やし、元々の女子校に男子の枠を増やしていく意味で導入されました。ですが(男女比が)ほぼ半々になったところで、この制度は歴史的に意味がなくなったと思います。現在も続けている意味について、示す必要があるかと思います」

段階的な撤廃を求める理由については、「東京は女子の高校入試の選択肢が少ないから中学入試をする、という人も多い。中学入試に小学生から準備していることを考えると、6年間から9年間かけて、撤廃していくべき」と述べた。

都は今回の要望書提出に対し、回答をする予定。

署名運動を進めてきた東京ジェンダー平等研究会は、男女別定員制に関する議論を深めるため、今後もシンポジウムの開催などを計画しているという。

東京都教育委員会は6月のBuzzFeed Newsの取材に対し、男女の合格最低得点の差について次のように答えていた。

「毎年40校を見ていて、女子の方が合格最低得点が高い学校が多かったのは事実です。不公平感があるのは承知しているので、是正していくことは検討しています」

一方で、合格最低得点を非公開としている理由を「子どもの気持ちになって考えてみた時に、公開することは難しい」と説明。今後も公開する予定はないと回答していた。

(サムネイル:Getty image)