お笑いグループ「ダチョウ倶楽部」のメンバーで、タレントの上島竜兵さんが亡くなった。
自殺と見られ、一部メディアでは詳細な方法も報じられている。メディア各局が取り上げるだけでなく、Twitterでもトレンド上位は関連ワードで埋まった。
「自殺報道は、SNS上で拡散させるだけで、自殺リスクを高めることに繋がる可能性があります」
自殺対策の専門家は、SNSで拡散を控えること、心がざわつく時、しんどい時は情報から距離を置いて相談することを呼びかけている。
「模倣自殺」を起こさないために
厚生労働大臣の指定を受けて自殺対策に取り組む「いのち支える自殺対策推進センター」は、過去にも複数回、同じ内容を注意喚起している。
リアリティーショー出演者の自殺報道が過熱した2020年5月、厚生労働省記者クラブに加盟している報道機関などに対して、WHOの「自殺報道ガイドライン」を踏まえた報道を徹底するよう書面で要請した。
(1)自殺リスクの高い人はメディアの自殺報道の後に「模倣自殺」を起こしてしまう危険性がある
(2)有名人や自らと重ね合わせやすい人の自殺はその危険性が極めて高くなる
ーーと指摘し、「有名人の自殺に関する報道は、子どもや若者の自殺を誘引する危険性があるため、慎重に行う必要がある」とガイドラインを守った報道の徹底を要請している。
厚生労働省も5月6日、ある俳優の訃報を受けて「各報道機関に対し、WHO 自殺報道ガイドラインに準じた報道を実施するよう要請」したとアナウンスしたばかりだった。
2020年の要請とほぼ同じ内容を再度掲載している。
「自分自身と重ね、引っ張られかねない」
同センター代表理事で、NPO法人ライフリンク代表の清水康之さんは2020年、BuzzFeed Newsの取材にこう話していた。
「一つは自殺に関する『手段』を報じているメディアが一部あること、また、自殺という亡くなり方を強調した報道があることが、非常に大きな問題だと思っています」
「こうした報道があると、亡くなられた故人に共感を覚えていた人、あるいは同じような状況や立場に置かれているほど、自分自身と重ねてしまいます」
「その結末が自殺で、さらに手段についても詳細に書かれていれば、故人と同じようにそちらに引っ張られてしまいかねません」
やるべきではないこと・やるべきこと
WHOのガイドラインは、同センターによる日本語訳が厚労省のホームページに掲載されている。そこではメディアがやるべきではないこと、やるべきこととして、それぞれ大きく6つのことが書かれている。
やるべきではないこと
・自殺の報道記事を目立つように配置しないこと。また報道を過度に繰り返さないこと
・自殺をセンセーショナルに表現する言葉、よくある普通のこととみなす言葉を使わないこと、自殺を前向きな問題解決策の一つであるかのように紹介しないこと
・自殺に用いた手段について明確に表現しないこと
・自殺が発生した現場や場所の詳細を伝えないこと
・センセーショナルな見出しを使わないこと
・写真、ビデオ映像、デジタルメディアへのリンクなどは用いないこと
やるべきこと
・どこに支援を求めるかについて正しい情報を提供すること
・自殺と自殺対策についての正しい情報を、自殺についての迷信を拡散しないようにしながら、人々への啓発を行うこと
・日常生活のストレス要因または自殺念慮への対処法や支援を受ける方法について報道すること
・有名人の自殺を報道する際には、特に注意すること
・自殺により遺された家族や友人にインタビューをする時は、慎重を期すること
・メディア関係者自身が、自殺による影響を受ける可能性があることを認識すること
相談先窓口はこちら
「いのち支える自殺対策推進センター」が掲載している全国の相談先窓口リストはこちら。
厚労省のホームページにも、電話相談やSNS相談の窓口一覧が掲載されている。