キラキラ主婦「VERY妻」は、配偶者控除の廃止で幸せになれるのか

    サロネーゼは損をする


    いま、日本の主婦たちに圧倒的な人気を誇る女性ファッション誌「VERY」(光文社)。発行部数は約29万8000部(2016年4〜6月、ABC調べ)。ずっしりと重いこの雑誌の愛読者は「VERY妻」と呼ばれている。



    10月号からは、表紙モデルが女優の井川遙さんから、滝沢眞規子さん(通称・タキマキ)に。


    専業主婦だった滝沢さんは、家族で買い物しているところをスカウトされ、読者モデルになった。シンデレラの階段を駆け上がった3児の母だ。



    「基盤のある女性は、強く、優しく、美しい。」


    そんなキャッチコピーに象徴されるように、妻として母として女性として、人生をポジティブに楽しむ「VERY妻」は、いわゆる「勝ち組」の代名詞ともいえる。 その生活基盤が比較的高い夫の収入に支えられていることは、雑誌に掲載されている広告のブランドなどからも、うかがえる。

    「VERY」の創刊は1995年。東京・港区の白金に住む専業主婦を「シロガネーゼ」、趣味のフラワーアレンジメントなどの教室を自宅で開く主婦を「サロネーゼ」と呼ぶなど、主婦たちにアイデンティティーを与え続けてきた。


    その「VERY」が2013年、ついに「働くママの、幸せな時間」という特集を組む。


    あくまで「家族が一番、仕事が二番」ではありながらも、「働く主婦」という新路線を打ち出した。VERY編集部が実施した読者アンケートでは、過半数が働いており、その勤務形態は正社員が半数だった。

    「VERY妻」に人気の街、東京・世田谷区では、認可保育園の入園希望者がここ5年間で1.4倍になるなど、もはやVERY妻とて、消費ばかりしているわけにはいかなくなったようだ。


    そして浮上したのが、「配偶者控除」の廃止だ。


    自民党の茂木敏充政調会長は9月14日のインタビューで、「配偶者控除」を見直し、代わりに早ければ2018年1月にも「夫婦控除」の導入を検討していると明らかにした。

    現在の「配偶者控除」は、妻の年収が103万円以下なら、夫の課税所得から38万円を差し引くことで減税ができるというもの。専業主婦世帯が優遇されるため、パート・アルバイトの主婦は年収を抑えるために働き方を調整することもあった。


    「夫婦控除」は、女性の働く意欲を促すため、妻の年収にかかわらず一定額の税額控除をするというもので、共働き世帯が優遇される新しい制度。


    ただ、配偶者控除にはない世帯主の年収制限が設けられる予定だ。ボーダーラインは「800万〜1000万円」の範囲で検討されている。


    「VERY妻」は大丈夫なのか?



    BuzzFeed Newsはファイナンシャルプランナーの氏家祥美さんの監修のもと、夫婦控除が導入されると「VERY妻」が今よりも損するか得するのかをシミュレーションした。(夫婦控除は税額控除として検討されるが、ここでは仮に、配偶者控除と同じ所得控除額38万円として比べることにする)


    結果は……


    夫が高収入の場合、妻の働き方が】

    ・専業主婦 → 

    ・サロネーゼ(103万円以下)→ 

    ・アルバイト(103万円以下)→ 

    ・フルタイム(103万円超)→ 同じ

    夫が低収入の場合、妻の働き方が】

    ・フルタイム(103万円超)→ 

    (※夫が高収入とは、所得制限にかかる場合のこと)


    例えば、夫が1000万円稼ぎ、妻が優雅にサロンを開いているような家庭は、新たに設けられる所得制限のために控除がなくなる。

    一方、最近のVERY読者層の主流である「働く妻」にとっては、これまでなかった控除が適用される可能性がある。夫だけで1000万円稼ぐと所得制限にかかるため、「夫600万円・妻400万円」など、妻もキャリアを追求する働き方をしたほうが節税になる。

    夫婦ともに稼ぎ、家事や育児を分担することで、VERYが提唱する「イケダン」(家事や育児に理解があるイケてる夫)がますます増えるに違いない。


    ただし今のところ、独身者や離婚者は「夫婦控除」の恩恵は受けられない見通しだ。

    氏家さんは、「多様な家族形態がある中で、せっかく配偶者控除を見直すタイミングなのに、夫婦しか恩恵を受けられない夫婦控除にすることそのものが時代遅れでイケてない」と指摘する。

    「夫婦控除」が目指すべき社会は、きらびやかな「VERY」の誌上世界だけでは、語れないはずだ。