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東京都の「とちょう保育園」は朝食つき 午後10時までの「オーバー保育」で大丈夫?

残業は午後8時までのはずでは?

東京都庁の中に保育園がオープン


東京都は10月1日、事業所内保育所「とちょう保育園」を開園する。場所は、都議会議事堂の1階。定員は、0〜2歳児の計48人。待機児童対策の一環として、うち半数を地域に開放するといい、新宿区民を含む34人の入園が決まっている(9月28日現在)。

本日、とちょう保育園の開所式・内覧会を都議会議事堂1階にて開催しました。小池都知事から式辞、川井都議会議長から祝辞を頂いた後、園の内覧を行いました。待機児童解消のためのシンボル的事業として、子育て環境の充実に寄与していきたいと考え… https://t.co/m7Anfr7CzD


注目されるのが、その特色ある保育内容だ。

東京都は「働く保護者を強力に支援」するとして、次のような保育内容を掲げている。

・朝7時からの開所、夜10時までの延長保育

・モーニングカフェ(早朝登園する親子に朝食を提供)

・手ぶらで登園(紙オムツ提供、衣服洗濯などのサービス)

・登園後の体調不良への対応

・誰でも利用可能な一時保育


保育園で子どもと朝食をとることができるので自宅で作らなくて済み、遅くまでの残業も可能。通勤バッグと一緒に着替えをたくさん持ち歩かなくていいし、洗濯したり紙オムツ1枚ずつに名前を書いたりする手間も省けそうだ。

仕事中に「発熱したので迎えに来てください」と呼び戻されることも少ないかもしれない。働く親の負担は軽減されそうだが、「保育園がそこまでする必要があるのか」という声もある。

ところで、東京都の小池百合子知事は9月14日、都庁本庁の職員に対し、午後8時以降の残業を禁止すると宣言したばかり。



小池知事は、仕事よりも育児や介護などを大切にするという意味で、「ライフが先にきて、その後にワーク」とする「ライフ・ワーク・バランス」を掲げている。「残業禁止」もその一環で、10月中旬からは午後8時に全庁を一斉に消灯し、それ以降にやむを得ず残業する場合は申請制にする。

全庁が午後8時に消灯するのに、都庁内にある「とちょう保育園」だけは午後10時までこうこうと明かりが灯り、子どもたちが親の迎えを待つのだろうか。

とちょう保育園の「従業員枠」の24人は、都職員と近隣企業が半々となっている。

BuzzFeed Newsは、とちょう保育園の開設と残業禁止の両方を担当する、都総務局人事部職員支援課に取材した。


東京都では、職員に午後8時までに退庁するよう呼びかけていますが、「とちょう保育園」の延長保育は午後10時まで。なぜですか。

「とちょう保育園に子どもを預ける親は、都職員だけでなく近隣の契約企業の従業員も含まれています。その中には、働き方の多様化に伴って遅くまで仕事をする人もいると思われ、さまざまなニーズに応えるためのシンボル事業として、先進的な取り組みをしようと考えました」

「延長保育は0歳児から受け入れ、事前の申し込みのほか、空きがあれば当日の申し込みも受け付けます。子どもによっては、朝昼晩の3食を保育園でとる可能性もあります。開園してから様子を見つつ、ニーズを把握していきます」

「午後10時まで延長保育が可能だからといって、長時間労働を積極的に進めたいというわけではありません。ただ、都庁でも突発的な残業は必ず発生します。いざという時に子どもを預けるところがあると安心してもらうことで、子育てのために仕事を諦めるような人を減らしたいと思いました」


都庁舎が午後8時に消灯しても、「とちょう保育園」だけは稼働するのでしょうか。

「午後8時に全庁消灯といっても、災害対応や緊急対応など、必ずどこかに稼働する部署は出てくるのではと思っています」


午後8時でも、ほとんどの保育園には間に合わない

ちなみに、延長保育の時間は保育園によってまちまちだが、午後7時台までとしているところが多い。つまり、午後8時以降の残業を禁止したとしても、子育てしながら働く多くの親は、午後8時に職場を出るのでは保育園の迎えに間に合わない。

結局のところ、午後8時前に保育園の迎えに行く人は、「フルに残業できない人」「同僚より早く帰る人」であるという構図は変わらない。

小池知事。本気で「ライフ・ワーク・バランス」を考えるなら、職場も保育園も「残業」(延長保育)をするのではなく、どちらも「定時」(通常保育)を目指してはどうでしょう?