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社内で女性の意見は通らない? 朝日新聞を女性企画で埋め尽くす、常識破りの5つの方法

3月8日の国際女性デーに、朝日新聞が「まるっと」女性向けに変わる。このプロジェクトは、過去に挫折も経験した女性記者たちの「妄想」からはじまった。

朝日新聞でこんなプロジェクトがはじまっている。

国際女性デー(3月8日)は、1900年代はじめに女性が参政権を求めて抗議活動をしたことがきっかけで生まれた、女性の社会的な地位向上を訴える日だ。日本でもさまざまなイベントが企画され、BuzzFeed Japanもキャンペーンを展開している。

朝日新聞では8日、特設ページをつくるだけでなく、1面や政治面、スポーツ面、社会面などでも女性にまつわる記事を掲載する。すでに2月末から特設サイトでは、小池百合子東京都知事、ぺこさん、ジェーン・スーさん、西原理恵子さんなど著名人のインタビューを毎日、掲載している。

このプロジェクトは、有志の記者によるボトムアップではじまった。女性向けの記事が載りやすいとはいいがたい新聞紙上で、1〜2月に6回連載「『女子力』って?」を掲載。SNSでも活発に発信している。

111位ショック!

2016年10月末、朝日新聞社の中で小さな波が起きていた。

世界経済フォーラムの報告書で、男女格差を示すジェンダー・ギャップが発表された。144カ国中、日本は111位で、前年より大きく順位を下げた。

この111位ショックについて記事を書いた地域報道部の三島あずささんの席に、科学医療部の錦光山雅子さんが駆けつけた。

「これは何か(企画を)やらないと、まずいんじゃない?」

関心がありそうな記者はいるものの、部署が異なり、それぞれ日常業務を抱えている。

こんな場面は、他の職場でも結構ある。部署が違う社員が、正規の業務フローではない企画をどうやって通すのか。上司の説得方法は? そのプロセスで挫折し、企画が頓挫してしまうことも多々ある。

記者たちはこうやって動いた。

1)とにかく話す

時間がないため、まずはランチをしながら話そうということになり、4人の女性記者が集まった。育児休業中の記者も赤ちゃんを連れてやってきた。

そこで出てきたのは、とりとめのない「怒り」だった。

中学校の制服代の調査で貧困ジャーナリズム大賞2016を受賞した錦光山さんは、こう話す。

「記者として『111位の風景』は、日々感じています。例えば子どもの貧困でも、女性が置かれた立場が背景にあることが透けて見えるのに、その問題が置き去りにされていることがストレスでした」

5歳の娘がいる三島さんは、「女子は赤、男子は青」といった悪気のない区別があることに違和感をもっていた。

「今は万能感に溢れている娘も、女だからといって鼻をへし折られる日が来るかもしれない。人として限界を知るのならいいけど、性別を理由に挫折してほしくない」

3月8日に合わせて紙面で取り上げたい企画はたくさんあった。1面から社会面まで黄色で彩ったらどうか、などと「妄想」は膨らんだ。

だが、実現が難しいことは記者たちにもわかっていた。

2)課題を共有する

「これまで、女性の問題を正面から取り上げようとしても載せられなかったり、載せても広がらなかったりした」

錦光山さんは、男性デスクと喧嘩をする女性記者を何度も見てきた。男女雇用機会均等法(1986年)の第一世代、まだ女性記者が少なかった頃の先輩たちだ。

企画の発端は怒りだが、怒りだけでは伝わらないし、そもそも企画が通らない。

ならば、正面からぶつからないやり方ができないか。

3)具体的な提案をする

これまでと違うのは、インターネットやSNSで、共感が可視化されることだ。読者と双方向のコミュニケーションによって、「記者がこう思っている」のではなく、「読者の多くがこう思っている」と社内を説得できる、と踏んだ。

まずは「女子力」という言葉に注目し、連載をすることが決まった。昨年末から読者に「女子力」についてのアンケートをとると、集まった1621人のうち3分の1が10代20代だった。「女子力」という言葉のイメージにあまりいい印象を抱いていない人が過半数だった。

国際女性デーのプロジェクトも、あえて「Dear Girls」と掲げ、「女の子」を意識した表現を使うことにした。

「これは女性の問題だというと、男性にとっては他人事になるし、耳に蓋をしてしまう女性もいる。多くの人に共感されそうなのは、女の子。女の子を応援するというメッセージです」

4)味方をつくる

関心がありそうな記者がいたら、地方総局からもオブザーバーとして参加してもらった。15人前後がゆるく参加し、中には男性もいる。

女性の上司を通して編集局長に企画を上げてもらい、ゴーが出た。

サイトのデザインは、プロジェクトに共感したデザイナーが作ってくれた。他部署も巻き込み、3月8日の紙面では、特設ページに限らず通常のページにも「女性」の要素が盛り込まれる予定だ。

「私たちだけでワイワイやっていたら、妄想のまま終わっていたかもしれません。通常の業務をこなしつつ、とにかく個別に声をかけて、輪を広げていきました」

5)先のことはわからない

いったん手を挙げたらずっとやり続けなければならない、というプレッシャーは、会社で動きづらい要因になる。が、記者たちは「単発でもいい」と割り切る。また別の機会に何かできたらいいよね、と。

「女子力」=「宴会でのサラダ取り分け」という一つの解釈は、記者たちの想像以上に拡散された。アンケートの回答により、若い世代ほど「女子力」という言葉をポジティブに使っていることもわかった。

投げたボールがどこに飛んでいくかは、記者たちにもわからない。ただ、ふだん新聞を読んでいる人たちではない層に広がっているのは、確かだ。

新聞社も変わる

長時間労働や全国転勤など、記者自身の働き方を変えることも課題だ。

朝日新聞では4月1日付の人事異動で、社内結婚した子育て中の夫婦が同じ地方総局に赴任する例が、全国で2組ある。

「充実した記者活動と人生を送ってもらうためには、個々人の事情へのきめ細かな対応が必要で、ワークライフバランスに配慮した取り組みは以前から進めています。『夫婦で子育てを分担しながら記者活動を続けたい』という声は少なくなく、地方でそのような働き方を可能にしていければと考えています」(広報部)

また、毎日新聞の東京本社では4月1日付で、政治部、社会部、科学環境部、生活報道部の4部門で、女性の部長が着任する。新聞社の政治部や社会部で女性がトップになるのは極めて珍しい。

新聞社も変わってきている。会社は変わる。女性たちの意見は、決して通らないわけではない。


この企画は終了しました。ご協力ありがとうございました。

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