築地市場のいまを伝える13枚の写真 漂うノスタルジーと揺れる移転問題

    開場して81年間、もうボロボロだ。

    移転問題で揺れる築地市場。

    移転先の豊洲に注目が集まるが、そもそも築地とはどんな場所なのか。都などの許可を経て現地を取材をしたBuzzFeed Newsが、いまを伝える。

    上から見ると、たくさんの人や車が行き交い、威勢の良い声が響く。これが、築地市場だ。

    築地市場は、1935年に開場した。日本橋にあった魚河岸が関東大震災で焼失したのがきっかけだった。以来81年間、多くの建物が当時から建て替えられることなく、使われている。

    場内には生鮮食品が、所狭しと積み上がる。約480種類の水産物が、1日あたり1676トン(2014年)取り扱われている。その規模は、世界最大級だ。

    水産物や青果物は、主にトラックで全国各地から搬入されている。桟橋に接岸して、魚を運び込む漁船は数少ない。

    かつては鉄道でも搬入されていた。1935年の市場開場と同日に、東京市場駅が開業。大きなカーブを描いた線路の上を、貨車が走った。

    大量の品物を積んだ貨車が着くと、荷下しがされて、そのまま市場の中へと運ばれていった。貨物輸送の変化で1984年に廃止され、いまは線路を見ることができない。

    場内では、生鮮食品を運ぶ「ターレー」と呼ばれる運搬車が走り回る。往来を重ねたためか、通路の床にはところどころに穴が空いた場所もある。

    開場して81年経った市場は、さすがに老朽化でボロボロだ。修復を何度も繰り返してはいるが、追いつかない。

    場内の狭さや衛生面を問題視する指摘もある。

    だから、今年11月に豊洲へ移転することが決まっていた。しかし、小池百合子知事は「最後の地下水の調査結果が出る来年1月まで待って、安全だとわかったら移転しよう」と延期を決めた。

    いま、建物と環境面の安全性をめぐり、議論は紛糾している。移転延期が決まったあと、主要な建物の下に地下ピットがあったり、そこに溜まった水から有害物質が検出されたりで大騒ぎになった。

    移転しなくても、豊洲市場の維持費は電気代や警備費など、1日約500万円かかる。築地市場の跡地には、東京五輪の選手村と競技会場を結ぶ道路を作る計画だが、間に合わない恐れもある。

    人が働き、生鮮食品を扱う以上、誰もが安全を願っている。豊洲の安全性を検証する都のチームは10月、まず建物に関して法的に安全だとの認識で一致した。ノスタルジー漂うこの風景が見られるのも、今のうちだ。