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活力の源。月収13万円の若手アニメーターは、これを食べて生き抜く

「普通に暮らしています」と話すが、日々の食事は…

「今は、普通に暮らしていますよ」と話すのは、都内のアニメスタジオで働く東京都在住22歳の佐藤さん(仮名)。今のスタジオに勤務し始めて1年弱。暮らしは決して楽ではないが、ひたむきに働く。薄給激務とも指摘されるアニメ制作現場を、日々の食事からたどった。

アニメの滑らかな「動き」を生み出すための作画を担当する。いわゆる「動画マン」と言われる、アニメーターの下積みのようなポジションだ。

現在勤めているスタジオには個人事業主として契約している。社員証はない。

だいたい昼過ぎに出勤し、22〜24時には仕事を終える。仕事の進み方によっては朝まで残ることもあるが、作業自体はおおむね7〜8時間だ。

朝ごはんはたまご焼きや白米など、簡単に準備できるものが多い。「食べると消化に力を使ってやる気が出なくなるので」と、基本的に昼ごはんは食べない。夜ごはんは自炊したり、コンビニですませたり。疲れた日は食べないこともある。

現在の収入について聞くと、だいたい13万円ほどです、と淡々と答えた。その月の作業量によって、収入にはばらつきが出てしまうという。

「動画マンは仕送りがないと生きていけない人がほとんど」。佐藤さん自身も、入社してしばらくはアルバイトをしていた。今はルームシェアで出費を抑えている。

もともと絵を描くことが好きだった。美術的なデッサンが好きだったが、さまざまなアニメを見るうちに「こういう絵もあるんだ」と、漫画風の絵を描くようにもなった。

アニメ業界はこんなもの、薄給でブラックは普通ーー就職前に制作現場のことは聞いていたので、ショックはなかった。不安はあったが、実際に働きはじめて1年弱。今はもう慣れた。

一般的にアニメ制作現場では、描いた絵の枚数の出来高で賃金が発生する。薄給で過酷と指摘される労働環境について聞くと、「そう思ったことがない」と佐藤さんは言う。「結局は、入る会社を間違えてしまったり、(描き上げる)枚数をかせげない自分の責任だと思います」

そう話してから、「アニメ業界より飲食関係の問題になってる会社の方がよっぽど過酷だと思います……」と加えた。

質問を重ねても、労働環境や給与についての不満は出ない。「たぶん、昔ほどブラックなところはないと思います」。昔はセクハラやパワハラがひどかったらしいと、先輩などから聞いた話を引き合いに出す。

「私には、絵を描くしかないです。一般職には就けませんね」。はっきりと口にする。

佐藤さんには夢がある。まずは今の立場で絵を描き続け、いずれは原画を担当し、作画監督になる。「いつかは、キャラクターデザインもやってみたいですね」。口調は明るい。

楽な仕事ではないが、辞めたいと思ったことはない。お笑い芸人だって、最初は生活できないじゃないですか、と話す。

「売れたら報われるじゃないですか……もっと頑張ろう、そう思うだけです」

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