言論や文化、芸術に対する厳しい規制が敷かれる中国で、若者を中心に「ラップ」が人気を集めています。
中国で活動する一人のラッパーに密着したショートドキュメンタリー作品「許されぬ歌」が、Yahoo! JAPANの「UPDATE DOCUMENTARY PROJECT」で公開されました。
本作のクリエイターである関強(カン キョウ)さんは、中国・北京生まれ。大学卒業を機に来日し、映像制作を始めました。
今回「中国ラップ」というテーマを取り上げた理由について、関さんはこう語ります。
「私が中国にいた頃には聴いた覚えのない『ラップ』が、いま中国の若者の間で流行していると知って驚きました。しかも、そのラップの歌詞には社会への批判や不満が溢れています。勇気を持って自分たちの想いを表現している若者たちを通して、中国の大きな変化を感じ、中国のラップに関心を持ちました」
本作の主人公は、ラッパーグループ「丹镇北京(ダンジンペキン)」のリーダー、黄硕(ホン ショウ)さん。黄さんはラップを通じて、社会問題や心の不満を自由に発信できる社会に、という思いを訴えてきました。
関さんは中国の現状をこう説明します。
「中国で経済成長の次に求められているのは、言論・表現の自由です。まだ中国では個人の思いを自由に発信する時に色々難しい面がありますが、中には命をかけてその自由を追い求める若者がいます。彼らの姿から、これから中国で言論や表現の自由に関して変わる予感を感じました」
黄さんのラップは多くの若者たちから共感を集めましたが、発表した17曲が規制違反であるとして消去されてしまいます。その上、共産党を支持する父から、活動の理解を得ることもできていません。
家族のために歌うことをやめるのか? それとも自由のために戦い続けるのか? 婚約者とともに暮らす黄さんの日常から、自由とは何かを問いかけます。
翻って、日本の現状はどうか。関さんはこのように指摘します。
「日本では自由に個人の考えを伝えることができますが、その一方で批判的な意見を伝えることをためらう傾向があると感じます。学校や社会に合わせたり、他者に同調することが少なくないのではないでしょうか。でも、人がもっと幸せになるためには、時には正直な意見を伝えて、より良い方向に導くことも大事だと思います」
「中国では、若者たちが自分の意見を自由に伝えられない社会に対して、言いたいことが沢山あります。中国の現状を知ることがきっかけとなり、日本の若い人たちが日本の社会にもっと関心を持てば、日本はより良い国になるのではないかと思います」
この作品が生まれるきっかけとなった「UPDATE DOCUMENTARY PROJECT」は、ドキュメンタリーの力で社会課題を解決することを目的としてヤフーがクリエイターとともに企画したプロジェクト。
関さんをはじめとする気鋭クリエイター6人とともに、スマホ時代に相応しく、国境をも超えて時代に求められる“ドキュメンタリーの新しい形”を模索していきます。
9月19日(木)15時〜20時には、このプロジェクトで制作されたショートドキュメンタリー6作品の上映イベントを「渋谷キャストGFスペース」で開催予定。
「日本の皆さんは、中国に対して『不自由』なイメージがあるかもしれません。今回の私の作品『許されぬ歌』を観ていただき、これから中国がもっと自由な国へと変わっていくのを感じてもらいたい。中国の既存のイメージを変えられたら嬉しいです」
上映イベント詳細
多様な未来を考える12日間の都市回遊型イベント「SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA」のプログラムの一つとして、上映イベントを開催予定。
■イベント名
<UPDATE DOCUMENTARY PROJECT by Yahoo! JAPAN CREATORS Program>
■日時
9月19日(木)15時〜20時
■会場
渋谷キャストGFスペース(東京都渋谷区渋谷1-23-21)
■スケジュール
15:00-17:00
Yahoo! JAPAN CREATORS Programドキュメンタリー作品、UPDATE DOCUMENTARY PROJECT作品上映
17:00-18:00
UPDATE DOCUMENTARY PROJECT
「明日。声が溢れる」「エリザベス」「許されぬ歌」上映、監督トークセッション
18:00-19:00
UPDATE DOCUMENTARY PROJECT
「#JUST LOVE」「叫び」「Butterfly」上映、監督トークセッション
19:00-20:00
特別トークセッション