Sponsored

「手話カフェを一緒にやろう」 聴覚に障がいのある私がスターバックスで知った、挑戦の意味

お互いを心から認め合い、助け合いながら働くことで、ひとりひとりのチャレンジが実を結んでいきます。連載2回目は、積み上げた自信から生まれた新たなリーダーシップについて紹介します。

「耳が悪くても、障がいがあっても、自分のやりたいことに正直でありたい」

スターバックスの嘉悦千夏さんと、佐藤まひろさん。聴覚に障がいがある2人はそれぞれ、仙台にある別の店舗で働いている。

若きリーダーたちが自ら考え、多様な人たちとアクションの輪を広げることを応援するスターバックス。

ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の取り組みを通じて、多様性の実現に向き合うユースリーダーひとりひとりの情熱と言葉、そして行動が、新たな未来を作ると考えているからだ。

未来の担い手によるリーダーシップを伝える連載の2回目は、聴覚に障がいのある2人の働き方を紹介する。

取材は、手話や口話を交えたオンライン・インタビューで実施した。

障がいのあるパートナーを支える制度

佐藤まひろさん 私の名前は、佐藤まひろです。聴覚の障がいは軽いので、ろう学校ではなく、ずっと普通学級でした。手話が苦手です。私は、主にCSやバーでドリンクを作る仕事をやっています。

CS(カスタマーサポート)とは、来店した人が心地よく過ごせるように、フロアの管理や資材の補充などを担う仕事だ。

スターバックスには、障がいのあるアルバイトやパートナー(従業員)の能力を発揮しやすい環境づくりをサポートする「チャレンジパートナー サポートプログラム」という制度がある。

佐藤 何かアルバイトをしたくていろいろ調べてみたところ、大学2年生のとき、障がいがあってもその人なりに働けるシステムがスターバックスにあることを知り、応募しました。

嘉悦千夏さん 私の名前は、嘉悦千夏といいます。私も普通学級に通っていて、手話は大学から覚えました。佐藤さんと同じCSと、バーでのドリンク作り、さらにレジ業務をしています。(店舗にある)ボードを描いたりもします。

高校生の頃からスターバックスに通い、憧れていました。大学時代に、スターバックスで働くろうの人がいると知り、私も挑戦してみようと思いました。

誰もが居場所だと感じられる店舗

スターバックスでは、全国で65人の聴覚に障がいのあるパートナーが働いている。

佐藤 ふだんは筆談ボードを持ち歩き、何かあれば書いてもらいます。もし困ったことがあれば、どんなに忙しいときでも、パートナーに声をかければ助けてもらえます。

スターバックスには、何か困ったことがあれば、周囲のパートナーがサポートする基盤がある。

背景にあるのは、スターバックスの企業理念と行動指針「Our Mission and Values」にある、「お互いに心から認め合い、誰もが自分の居場所と感じられるような文化をつくります」という言葉。入社時には、誰もがこの言葉と深く向き合う。相手が来店客でもパートナーでも変わらない。

佐藤 私のほうも、障がいを理解してもらうために、ひとりひとりのパートナーに「もう少し大きな声で、ゆっくり話してほしい」と伝えています。

大学で聴覚障がいを勉強していたので、友人が障がいに理解がある人たちだったんです。スターバックスに入って、障がいについてよく知らない人がいたら、どういうことに困るのか、どうしてほしいのか、積極的に伝えるようにしました。

手話で伝えられた「ありがとう」

嘉悦 普段レジに入るときは、「指差しシート」を使って、私がお客様に「聴こえないので、注文をお願いします」と伝えています。

私が聴こえづらいことに気づいて、手話を使って「ありがとう」と伝えてくれるお客様も多くいらっしゃいます。すごくうれしくて、私も「ありがとう」と積極的に手話を使います。

店舗のボードで簡単な手話を紹介すると、お客様から「手話っておもしろいね」と声をかけられ、会話が生まれることも多いです。

聴こえないお客様が来店したことに気づいたときには、手話で対応したり、パートナーに「ゆっくり話して」と伝えたりして、サポートすることもあります。

2019年には、別の店舗のパートナーたちと、手話によるコーヒーテイスティングイベントを開催。聴覚に障がいのある人と聴者が参加して、一緒にコーヒーを学んだという。

嘉悦 普段のコーヒーテイスティングと同じ内容ですが、例えば、コーヒー豆や、コーヒーに合う食べものについて、手話を使って説明しながらテイスティングしてもらいました。

お客様からは、コーヒーだけでなく、手話について知れてうれしいという声をいただいて、やってよかったと思いました。

手話が共通言語の「サイ二ングストア」誕生

2020年6月、聴覚に障がいのあるパートナーを中心に、主なコミュニケーション手段として手話を使用して運営するサイ二ングストア「スターバックス コーヒー nonowa国立店」が東京・国立市にオープンした。

嘉悦 サイニングストアができたことで、聴こえない人の接客についてもっと理解が広まって、働きやすい環境になるのでは思います。手話についてアピールできて、聴こえない人にとっても、手話を勉強している人にとっても、いいことだと思います。

佐藤 私は口語でコミュニケーションをとるので、聴覚に障がいがある人にもいろんなタイプの人がいることを知ってもらいたいです。嘉悦さんみたいに手話が得意な人もいますし、主に口話で話していて、手話をそれほど使わない人もいます。多様性を知ってもらえたらと思います。

障がいがあっても働けることが、多くの人に知られるのはいいことだと思います。

みんなで実現したい「手話カフェ」

2人は現在、ともに仙台で働いている。地域のつながりを生かして連携してやってみたい取り組みはあるのだろうか。

嘉悦 仙台で「手話カフェ」をやってみたいです。

1年半前に東京の店舗で、「手話カフェ」をやった経験があるんです。もっと多くのお客様に手話について知ってほしいので、仙台でも取り入れたいとずっと思っていて、いつか佐藤さんと一緒にやりたいです。

佐藤 すごくいいですね!

私みたいに手話があまり上手じゃない人もいるので、嘉悦さんと一緒に手話カフェをやれたらいいなと思います。

「手話カフェ」は、スターバックスの店舗で聴覚に障がいのあるパートナーが中心となって、お店や日常の暮らしで使える手話を紹介するコミュニティ活動。楽しみながら、ろうの文化を知ることができる。

「人と話すのが好き」

スターバックスで働く経験によって、2人には大きな心境の変化が生まれている。

佐藤 スターバックスで働く前にいろいろなアルバイトに応募したんですけど、実はどのアルバイトも、『電話対応できない人はごめんなさい』と落とされてしまったんです。

自信をなくしていたときに、スターバックスでは他のパートナーと同じように働けるんだとわかり、すごく自信になりました。

人と話すことがすごく好きなので、いまでは、お客様が何か困っていると気づくと、わからないかもしれないと怖気づくことなく、積極的に声をかけています。私が聴こえづらいことに気づいた高校生が、指文字で伝えてくれたこともあります。

いままで、耳が悪くてあきらめてきたことが結構ありました。でも、どれだけ努力しても自分の耳は良くならない。自分ではどうにもできないことが理由で、やりたいことをあきらめるのは違うんじゃないかって気づいたんです。

「自分の意見を伝えて、行動に移す」

嘉悦 自分の意見を行動に移すことができるようになったと思います。スターバックスで働く前は、自分の意見をはっきり言えなくて、控えめなところがあったんです。

何度かチャレンジして、周りのパートナーに『こうしたほうが自分にとって働きやすい』と言うことができて、助けてもらえるようになりました。やってみたら発見があって、できることが増えていきました。あきらめずに訴えて、行動に移すことは、自分の強みだと思います。

ろうのパートナーのみんなが頑張っているから自分も頑張れます。

佐藤 耳が悪くても、障がいがあっても、できるだけ自分のやりたいことに正直でありたいです。

手話ができなくても、口を見せて、ゆっくり言ってくださったらわかります。手話や指文字ができないから、聴覚障がいがある人と関わらないようにするのではなく、声をかけてもらえたら。私もひとりの人間として、お客様と向き合っていけたらいいなと思います。

嘉悦 店舗で働きながら、手話についてもっと広めていきたいですね。いつかサイニングストアでも働いてみたいという憧れもあります。聞こえなくても、障がいがあってもなくても、みんな戸惑い、つまずくことはあると思うんですけど、あきらめないでチャレンジすることを伝えたいです。

2人が伝えたいのは、障がいにかかわらず、自分の思いを大切にして「やってみる」ということだった。

ひとりひとりの言葉や情熱から、次世代のリーダーシップを応援するスターバックスの「Youth Leadership」。連載はこちらから。