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新宿二丁目で生まれた、すべての人のためのお守り。新しい「保険」ができるまで

LGBTQの当事者が、保険を検討する際に感じていたハードルを解消した、総合保障共済「パートナー共済」が誕生しました。

もしも事故に遭ったら。病気になってしまったら。自分、そして愛する人を守れるのかーー。

誰もが抱えている将来の不安を口にさえできず悩みを抱えがちなのが、クローズドなLGBTQの当事者だ。

LGBTQの当事者が、保険を検討する際に感じていたハードルを解消した、総合保障共済「パートナー共済」が誕生した。

公表していない職場で感じていたストレス

さまざまな事情があるLGBTQ当事者に寄り添った同共済は、LGBTQフレンドリーな総合保険代理店R&C株式会社の100%子会社、株式会社ダイバースパートナーズが2020年5月に提供を開始した。

7月には、世界的なゲイタウン・新宿二丁目に「お客さま窓口」を開設したという。

「これまでは、クローズドで入れる生命保険はなかなかありませんでした」

そう語るのは、ダイバースパートナーズの取締役でパートナー共済会代表理事の小吹文紀さん。

小吹さんは、結婚歴があるシングルファーザーであり、セクシュアルマイノリティの当事者のひとりだ。大手フィットネスクラブや損害保険会社で働いてきたが、これまでの職場ではセクシュアリティを公表していなかったという。

「特に言わないですが、隠してもいない。場面場面で、聞かれたら話す感じでしたね。病気や事故と同じだと思うんです。前にがんにかかったことがある方も、初対面で『私はがん患者です』とは言わないですよね」

日々のストレスを感じるほどではなかったが、職場で噂話をされたこともあった。

「僕は子どもがいて職場結婚だったんですが、『偽装結婚じゃないの?』『でも子どもがいるならゲイじゃないよね?』という会話が聞こえてきたこともありましたね」

「新しい保険を作る」という選択肢

そんな小吹さんが、クローズドなLGBTQの当事者でも入りやすい生命保険をつくろうと思ったきっかけは、株式会社ダイバースパートナーズの親会社である総合保険代理店R&Cの足立哲真社長との出会いと、社長の「ないならつくろう」の一言だった。

「それまで僕は、"保険をつくれる"とは思っていなかったので、すでにあるものを"変えていかなければいけない"と考えていたんです」

「僕が課題をいっぱい並べて、保険に入れなくて困っている人がたくさんいる、と話したら、足立がその共通項を見ながら『ないならつくろう』と。『仕組みを作っちゃえばいい。理解を深めて、気づいてもらえればいい』と言ったんです」

こうして新たな保険の開発が急ピッチで進められ、1年後に「パートナー共済」は誕生した。

LGBTQが生命保険に感じるハードル

LGBTQ当事者は、生命保険の加入にどんなハードルを抱えているのか。

まず、クローズドの人の中には、対面での面談には抵抗がある人がいるという。

またHIV陽性の人、ホルモン療法中のトランスジェンダーの人は、既存の生命保険に加入するのは難しい。

「GID(性同一性障害)も、WHOは国際疾病分類で精神疾患の分類から外したのに、日本はまだ変えていません」

さらに、保険金の受取人に指定するパートナーは、同性の場合、書類の提出や面談が求められる。

「損害保険の東京海上日動火災は、2017年に同性であっても配偶者として認める、と約款を変えました。保険会社の仕組みも変わってきています。ただ、さまざまな理解が深まっていないために、扉が閉ざされていました」

小吹さんは「すべてのハードルは、『理解』という言葉で超えられる」と話す。

「例えば、HIV陽性って何? ホルモン療養中って何? ということへの理解。政治とか法律も同じだと思うんですけど、当事者でもわかってないこともあります」

「HIVとエイズは混同されることもありますが、HIV陽性だからといってエイズを発症しているわけではないんですよね。今は予防も治療も確立されていて、適切な治療を受けていれば、ほぼ発症しません」

パートナー共済の開発は、まさに「理解」と向き合い、当事者と生命保険の間に橋をかける作業だったという。

「私たちの取り組みは、仕組みの解決。これまでは、当事者であることを話すと差別されるかもしれないから、越えられなかった堀があった。そこに橋をかけ、ここなら入りやすいですよと呼びかけているんです」

一人ひとりの人生に寄り添う保障とは

実際の保障の内容については、セクシュアリティにかかわらず、「一人ひとりが安心して、この商品なら守ってもらえる、と思える」ことを第一に考えたという。

「お客さまをお守りするために必要なことは何なのか。がんにかかったり、いろんなつらいことがあったりしたら……その先にあるコアな部分は同じだと思うんです」

「レストランでどんなに接客が良くても、お皿がカッコ良くても、もしステーキがおいしくなければ二度と行かないと思うかもしれないですよね。LGBTQのことを外してでも、質のよい保障は何かを考えました」

「例えば、日帰り入院(※)でも、ゴールドなら一時金が10万円をもらえます。これはただお金がたくさんもらえるわけじゃないんですよね。医療技術が進歩して、入院日数が短くなりましたが、入院にかかるコストは減っても治療に関する費用は意外とかかるんですよ。日帰り入院だから、もらえるお金は少なくていいわけじゃない」(※災害入院共済金、疾病入院共済金)

一人ひとりに寄り添った保障は、いい意味で他の保険と大きくは変わらない。

それでも「PEP(ペップ)診療共済金」「PrEP(プレップ)診療給付金」など、HIV感染リスクを減らす診療の共済一時金についても明記したのは、あくまでHIVへの理解を社会に広めていくためだという。

保険と共済はどう違うのか

そもそも、なぜパートナー共済は保険ではなく共済なのか。素朴な疑問に、小吹さんは、「結果として共済になったのは、この仕組みを早くお届けしたかったから」と答えた。

「当初は、保険も検討しましたが時間がかります。変えられるものをどんどん変えて、課題を抱えている方に早くお返ししていくために共済を選びました。私たちの規模でも制度上できることを、いろんな方々や専門家に相談して、一番ベストなかたちにしました」

保険と共済には、大きく営利か非営利かの違いがあるという。

「保険はきちんと営利を求めて、株式会社として利益を出すのが保険会社です。共済は非営利で、もし余ったら何らかのかたちで還元していくものです」

「パートナー共済は、対面の面談をしなくてもいい。そこが一番大きいですね。新型コロナウイルスの影響で、医療がオンライン診療もできるようになったように、保険についても急激に緩和されてはいますが、パートナー共済はWebで手続きが完結できます」

「非通知」電話でつながったお客様の声

パートナー共済の開始から約3カ月。クローズドなLGBTQ当事者のさまざまなニーズを実感しているという。

最近では、保険会社が通常は受け付けない「非通知番号」からの電話にも対応した。

「非通知からの電話の対応は、当初は意図したものではありませんでした。単に非通知からの電話を拒否しない設定にしていたんです」

「その方は、後日匿名で来店されたにもかかわらず、ドアを開けた瞬間に、お名前を教えていただきました。『非通知でも電話に出てもらって、寄り添ってもらえる感じがして、それをクリアできた時点で、もうフルオープンです』と。親や職場には一生カミングアウトするつもりはないとお話されていましたが、申し込みをしていただきました」

「私たちも本当に試行錯誤、トライアンドエラーの連続です」と小吹さんは本音を明かす。

対面で説明を聞きたいが個人情報を伝えたくない、という要望も届いている。さまざまな声を受けて、現在はSNSやチャットアプリからの問い合わせにも対応を進めているという。

共済は、私たちを守る「お守り代わり」

40代のLGBTQ当事者のSさんは、パートナー共済に加入したひとりだ。

業界初の取り組みを知り、HIV陽性や同性パートナーに配慮されていたことから注目したそうだ。

他のがん保険や共済も加入しているが、「保障自体は他と変わらずちゃんとしていて、入院一時金など他の保険のいい部分が揃っている。掛け捨てだし、掛金も安い。返戻や配当がないことも逆に気軽にできる良さだと感じた」とコメントを寄せた。

Sさんは、パートナー共済を「お守り代わり」と表現する。

「私たちは普段から色々なことに気をつけながら敏感に生きている。そんな私たちを守ろうとしてくれる。匿名でも相談できる。訪問して面談もできる。Webのみでも申し込める。若い人たちにも私たちの世代にも、選択肢を設けてくれている。いろんな場面で配慮されているのを感じた。ぜひ他の人にも勧めたいですね」

「いつかHIVを持っている人でも入れる生命保険を」

世界に誇るゲイタウンである新宿二丁目に、パートナー共済の「お客さま窓口」はある。

「普通、住所は『新宿2-15-1』と書きますけど、私たちはあえて『新宿2丁目15-1』と表記しています。パートナー共済はWebだけで完結できる商品ですが、2丁目に事務所を持つことにこだわったと伝えたかったんです」

「20年ほど前、初代二丁目振興会会長の故・川口昭美さんが『HIVを持っている人でも入れる生命保険を作りたい』という夢を語っていたというのを聞いたんです。また偶然にも事務所を借りたのは、伝説の喫茶店『シンドバッド』が入っていたビルだった。それらを知ったとき、頭のてっぺんから足の先まで鳥肌が立ちました」

先人の夢のバトンが、時代を超えて、「パートナー共済」につながった。今後、LGBTQ当事者のための保険や共済は、どうなっていくのだろうのか。

「LGBTQ当事者だから、ということではなく、すべての人にあんしんを届けること。なかなか変わらなかったけど、昔こんな課題があって、解決するために共済を作ったらしいよって将来いわれるように、世の中を変えていきたいですね」

小吹さんは、さらに先にある未来を見つめていた。