高齢ドライバー問題に頭を悩ませる子どもたちのホンネ

親の運転能力、知ってる?

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高齢ドライバー問題に頭を悩ませる子どもたちのホンネ

親の運転能力、知ってる?

昨今、高齢ドライバーをめぐる社会問題がメディアで頻繁に取り上げられている。

内閣府が発表した「令和元年版 交通安全白書」によれば、運転免許保有者のうち60歳以上が占める割合は2018年で30%を超え、45年前と比べると約8倍となっている。

事故の不安は、高齢ドライバー本人だけでなく、その家族にもつきまとう。互いの思いを尊重する解決策とは。さまざまな親子のコミュニケーションから探る。

「気をつけて」と言いつつ、困る自分も……

特に板挟みになりやすいのは、地方の親と離れて暮らす子ども世代だ。

岡山県出身で、都内のメディア企業に勤める森夏子さん(42)は、不安を口にする一方で、“恩恵を受けている立ち場”としての本音を語ってくれた。

岡山空港のターミナルビルを抜けると、運転席から笑顔で手を振り、夏子さんの父親が出迎える。多忙を極める生活でも、年に一度は必ず実家に顔を出す。

実家は空港から車で1時間半。高齢になれば集中し続けるのは難しいだろうと、寝ずに話しかけながら同乗するという夏子さん。「今年までは」と思いながら数年が経つ。

「実家は山の上にあり、公道に出るまで徒歩15分かかる場所。物心ついた頃から車は2台所有です。車で出かけない日はありませんでした。歩いて5分の地域会合すら車で向かう。そういう文化の中でずっと生きているんです」(夏子さん)

親から車を取り上げるとボケてしまうのでは、という懸念もあるという。「車を奪うイコール家から出るなと言うに等しい。きっと車は死ぬまで……体が動かなくなるまで、でしょうね」と、絞り出すように語った。

衰えていく判断力と、膨らむ不安

夏子さんは職業柄、高齢ドライバーの事故にもいち早く問題意識を持ち、帰省のたびに「もう危ないよ」と注意喚起してきた。その思いが実ってか、父親は最近7人乗りのSUVからコンパクトカーに乗り換えた。

これまで無事故で、娘から見ても非常に慎重派のドライバーだという夏子さんの父親。それでも、運転する機会が多い分、事故に遭うリスクは高まる。

日本自動車連盟(JAF)が2016年に行った調査では、「方向指示器(ウインカー)を出さずに車線変更や右左折する車が多い」という設問に対し、岡山県は「とても思う」「やや思う」の回答率が合計91.0%と全国で最も高く、“ウインカーを出さない県”ワースト1という結果が出た。

「気をつけて運転していても、運転の荒い人に巻き込まれる形で加害者になったらと思うと……。人間の力ではどうにもならない状況をカバーしてくれるテクノロジーの登場に、今は期待するしかありません」(夏子さん)


「実は、事故をしちゃったんだ」3年越しの父の告白

親が高齢だからといって、もう車に乗ってほしくないと考える子どもばかりではない。

「お父さんもお母さんも、運転気をつけてね」

実家と電話していた大島里美さん(38)が、テレビの高齢ドライバーのニュースを横目に話す。「あんな事故って昔はなかったよねぇ」と、どこか他人事のようにこぼした父親(73)からそこで初めて、3年前に事故を起こしていた事実を知らされたという。

「普段からよく連絡を取るので、少なからずショックでした」(里美さん)

なぜ黙っていたのか。問い詰められた父親の言い分は「100%あっちが悪い」だった。当時、海外で働く夏子さんに心配をかけないように、との配慮もあったという。

「たしかに、連絡を受けても不安が大きくなるだけだったかもしれません。一方で、運転には自信のある父だから、すぐ打ち明けるのはプライドが許さなかったのかな、とも思います」と里美さんは言う。

2年ほど前に、実家を都内から神奈川県三浦市の郊外へ移した。父親は自営業でずっと車が欠かせない生活だったが、リタイアと引っ越しを機に、軽自動車に買い替えた。

実家周辺は見通しのきかない道が続く。道路は整備されてはいるが、近隣の住民や車が頻繁に出入りし、危険を感じる場面も少なくない。近所でまさに高齢者の単独事故があり、えぐれたブロック塀も見た。

以前よりアクセスの悪くなった実家だが、ほぼ隔月で帰省する里美さん。駅まで迎えに来てもらうのも、大島さん一家にとっては自然なことだ。「運転する父を見て育ったので、それが当たり前になっている。こういう人ほど、きっと親の運転に危機感を持ちにくいんでしょうね」と里美さんは言う。

乗らない選択肢を持ちつつ、長く運転を楽しむ道を

新たな実家の場所は、いつか運転しなくなることも見越して吟味した。最寄り駅までは歩いて30分かかるものの、バス停もコンビニも徒歩圏内。不便ではあるが、十分に生活できる。里美さんは「車のない生活へシフトしやすい環境にいてくれるのは、とてもありがたいです」と話す。

事故は経験したものの、今のところは家族の誰も免許返納を望んではいない。

「両親ともに健康で、『あの事故は相手が悪かった』という父の言葉を信じるなら、当面は問題ないのかな、と。私が運転を代わろうとしても『そっちのほうが怖い』と言われてしまいますし(笑)」

目指すゴールは、両親にこの先もできるだけ長く、安全に車に乗り続けてもらうこと。ただ、事故は自分にも起こり得るという意識を持っていてほしいとは里美さんも考えている。

「高齢ドライバーの自覚を持ちつつ、この先も運転を楽しんでもらえるよう、親をリードしていけたら」と積極的に関わっていく意欲を見せた。

子どもたちに共通していた、ある事実

高齢ドライバーとなる親の考えも、子どもたちの想いもそれぞれだが、共通していたことが1つある。それは、「親の運転能力をきちんと把握できていない」ということだ。

まずは、助⼿席に座ることから

日産自動車が展開中のキャンペーン「#助手席孝行」は、子どもが助手席に座り、親の運転能⼒を自身の目で確かめてみようと呼びかけるもの。

安全な運転かを見極めるポイントは、次の5つ。

「#助手席孝行」では、チェック項目としてミラーやギアチェンジ、車間距離といった5つの項目を紹介。継続的に観察することで、運転に関わる身体能力やテクニックの衰えに気づきやすくし、リスク管理に役立てる狙いだ。

実際に体験した日産自動車社員の親子の様子は、Twitter上のハッシュタグ「#助手席孝行」で確認できる。

久々の親子のドライブが、親の運転について話し合うきっかけとなるはずだ。