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「人とのつながりが力になった」見えない敵に立ち向かい続ける最前線の医療従事者の実録

新型コロナウイルス感染症への対応で素晴らしい貢献をした方々に「第17回ヘルシー・ソサエティ賞」が贈られました。その受賞者に、活動において大変だったことや、大切にしていたこと、今後の展望などを聞きました。

新型コロナウイルス感染症が猛威を振るうなか、医療現場では昼夜を問わず、多くの命を守るための努力が続けられています。

そんななか、公益社団法人 日本看護協会とジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループは、健全な社会と地域社会、そして国民のクオリティ・オブ・ライフの向上に貢献した方々を称える「第17回ヘルシー・ソサエティ賞」のオンライン授賞式を9月8日に開催しました。

今回は例年とは異なり、新型コロナウイルス感染症への対応で素晴らしい貢献をした方々や革新的な取組みを行っている方々を対象に受賞者が選出されました。

受賞したのはこの5名。


「数理モデル」で、データに基づく感染症対策を

ーーコロナ禍での西浦博教授の活動内容について教えて下さい。

今回自分に与えられた役割は、データ分析の専門家として、データを客観的に分析して、それに基づいて政策が進むための基盤をつくることでした。

最初は、ダイヤモンド・プリンセス号での感染の制御や流行の状況を客観的にデータ分析し、そのデータをもとに、政府のオペレーションを手助けしました。

また第二波でも第三波でも数理モデルを繰り返し使って、流行の予測に数理モデルが有用であることを専門家以外の人々にも肌で感じてもらう、ということを諦めずにやってきました。

ーー新型コロナウイルス感染症対策において数理モデルはどう役立つのでしょう?

数理モデルを使うと、私たちの人口の中で感染症が伝播する一つひとつのメカニズムを、数式を使って記述をすることができます。

新型コロナウイルス感染症が拡大を始めたときに、数理モデルで被害の規模や流行のメカニズムを把握したり、流行対策に役立てたりすることができました。

数理モデルは、一つひとつの事象を客観的に分析できる、とても魅力的なツールだと思っています。

ーー今後の展望について教えて下さい。

数理モデルを活用した分析を、感染症対策だけでなく、がんや糖尿病など他の領域でも役立てる意義を証明していきたいです。また、次の時代を担う人材にも技術や知識を伝授し、育てていくことが自分の使命だと思っています。

安心安全な国産DNAワクチンを

ーー国産ワクチンのメリットについて教えて下さい。

まず国産ワクチン開発の知見があれば、日本独自の変異株が発生したときにも迅速に対応できるという安心感が大きいです。国内で解決できる手段を持っておくことは大事だと考えています。

ーーご自身の強みはどんなところですか?

「医者であり、研究者である」という2つの立場から、新しい治療法を開発できることです。

我々にしかない視点からイノベーションを起こして多くの患者さんや、治療薬がなくて困っている人を助けたい。そのために大学発のバイオベンチャー「アンジェス社」を立ち上げ、日々研究に取り組み、新しい治療の実用化を目指しています。

ーー今後の展望について教えて下さい。

ワクチン確保に窮するアジアの国々に提供し、国際貢献することも日本の役目だと思うので、今後取り組んでいきたいです。

またワクチンに限らず、今後も「患者さんのお役に立つものを」という視点で、諦めずに医薬品開発をしていきたいと思います。医薬品は他の商品とは違って、1〜2年でできるものではなく、いろいろと困難なこともありますが、やはり必要としている人のために、地道に研究開発を続けるのが重要ではないかと思います。

公衆衛生の現場で、人と人とをつなぎ、課題を解決

ーー医療と公衆衛生の違いについて教えて下さい。

一人ひとりの患者さんと向き合って治療方針を決めていくのが医療。一方、より多くの人々のことを考えて、全体を見たうえで何が一番適切な対策かを考えるのが公衆衛生だと思います。

ーークラスター対策班での活動について教えて下さい。

クラスター対策班では、国の方々や民間の研究者など、立場の異なる専門家がタッグを組み、市民に向けてわかりやすく感染の広がりを“見える化”していく活動をしています。

時には意見が対立したり、“もっと早く”とスピードを求められたりすることもありますが、その中でも最大限の成果が出るように、各々の専門性を活かすことと、信頼関係を深めて、分野を超えて団結することを大切にしてきました。

ーー今後の展望について教えて下さい。

今後も様々な分野の専門家たちと連携することで、より良い対策を講じていきたいです。

大事なのは病気の予防。多くの方々に様々な病気から自分の身を守って、より生き生きとした日々を過ごしてもらう。それが公衆衛生を専門とする医師としての役割だと思っています。

そのために若手を育て、先輩方からも学びながら、「公衆衛生」によって日本の健康、そして世界の健康へ貢献していけたらと思っています。

人の暮らしのある場所に、質の高い看護を

ーーコロナ禍の支援活動において、大変だったことはなんですか?

マンパワーの獲得と看護師確保です。人員を確保するために、朝から晩まで電話をかけ続けたり、メールやハガキを送ったり、ホームページで呼びかけたり…。「やるしかないでしょ。だって命がかかってるので」という気持ちで、ありとあらゆることをやりましたね。

看護協会の職員は本当によく頑張ってくれたと思います。協会の理事も自分たちの地域のネットワークを使いながら進めていたただき、すごく大きな力になりました。

ーー宿泊療養施設に看護師を派遣する際に、大切にしていたことはなんですか?

まず働きに行く前に、オリエンテーションをしっかりすることです。「これは危ないよ」「ここは守りましょう」と具体的に伝えるようにしています。

またマニュアルをつくり、更新していくことも大事にしています。常に現場の問題を吸い上げ、その時々で最善かつ最新の情報を発信する。そうすることで担当者が現場の状況を把握し、今やらなければいけないことを即実行に移せるようにしています。

ーー全国の看護師へメッセージをお願いします。

私自身は、看護師を含む医療従事者が患者さんのベッドサイドからいなくならない限り、医療崩壊は起こらないと思っています。

自分の身を守りながら目の前の患者さんに何ができるかを考え、そして実践するためには仲間とつながり、正しい情報を持って行動していきましょう。

一人ひとりに寄り添い、地域に根ざした保健活動を展開

ーー「ぼたんの会」は普段、どのような活動をしていますか?

認知症予防やフレイル(虚弱)予防のために家庭訪問をするなど、一言で言えば、地域住民の「健康づくり活動」をしています。

地域住民の方々が住み慣れた場所で健康的に、生きがいをもって過ごせるように保健師としてどのような支援ができるかを日々考え、活動に取り組んでいます。

ーーコロナ禍では、どのようなことを意識して活動していますか?

地域住民一人ひとりに寄り添って、声を受け止めることです。

コロナ禍の電話相談支援では「お変わりありませんか」「なにか心配なことはありませんか」と声をかけ、一人ひとりの声に耳を傾けることを大切にしていました。「せっかく声をかけてもらったんだから相談してみようか」と住民の意識を変え、その結果多くの人を助けることができました。

ーー「ぼたんの会」の今後の展望について教えて下さい。

島根県の保健活動を、若い方々に伝承していきたいと思っています。

今の世の中ではなかなか難しくなってきている現実もあるのですが、それでもやはり地域住民一人ひとりに寄り添っていくことは、より良い暮らしのために、とても大切なことだと考えています。

そんな思いから、保健師の歴史ある資料などを大学へ寄贈したのですが、今後もそういった伝承活動を積極的に行っていく予定です。


新型コロナウイルス感染症をめぐる状況が日々刻々と変化するなか、医療従事者、研究者の方々は厳しい現実と向き合いながら立ち向かい続けています。

私たちはそのことを知り、自分、そして大切な人を守るため、行動を変えていくことが大事なのではないでしょうか。

ヘルシー・ソサエティ賞とは

・ 公益社団法人 日本看護協会とジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループによって2004年に創設された

・ より健やかな社会を築くための個人の素晴らしい努力を顕彰する

・ 国内外における、社会全体または特定のグループへの支援に対する功績を称える

・ 慈善行為や寛大な精神、助けを必要とする人たちへの配慮を奨励する

・ 他者への思いやり、人々のために奉仕するという日本の良き伝統を奨励する

・ これまで功績が広く認識されてこなかった個人、および既に高い評価を受けている個人を対象とする